ライフスタイル
2017/5/16 17:00

衣替えシーズンに必読! 現役スタイリストが教える着ない洋服を上手に断捨離する方法

春~夏の衣替えシーズン到来です。このタイミングで、「洋服を減らしたいけれど、どう手をつけていいかわからない」という人も多いのではないでしょうか。そこで今回は、現役スタイリスト河井真奈さんに服の整理術についてお伺いしました。

 

河井さん曰く、「クローゼットは自分を映し出す鏡のようなもの」とのこと。スタイリストとしていつも服と向き合っている河井さんだからこその言葉ですが、クローゼットを美しくキープできないという方には耳の痛い話かも。ここは襟を正して「服の整理術」、さらに、使いやすくきれいに収めることができる「収納術」、無駄に洋服を買ってしまわないための「購入術」をしっかりと教えていただきましょう!

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【すてる】

手持ちの洋服はトップス+ボトム+ワンピで30点までで十分です

まずは河合さんに、必要な洋服の点数について聞きました。その答えは「1シーズンで必要な洋服はトップス+ボトム+ワンピで30点までで十分」というもの。でも……決して着回し上手ではない私たちがそんなに潔く自分の洋服を整理してしまって大丈夫かなと、ちょっと心配になってしまいます。30点で本当に間に合うものでしょうか。

 

「どれくらいの洋服が必要かは人それぞれで、30点はあくまで目安です。でも実際は、皆さんもそうだと思いますが、“1シーズンでお気に入りの服を何度も着る”ということが多いと思います。それだけ着たい服は限られているもの。だから、最低限30点あれば十分だと私は思います。むしろ少ない方が小物でどうアレンジするかなど、コーディネートに知恵が出てくる方もいると思います。そんなことを私が書籍に書いたところ、ある雑誌の女性編集者の方が実践してくださっていて『すごく気分がいい』と言ってくださいました」(河井さん)

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↑朝のしたくを手早くするために、取り出しやすさを重視したクローゼット

 

「たとえば、1週間7日分のトップスが7枚あるとして、月に平均4回登場、ワンシーズンを3か月として。シーズンで着るのは12回。同様の数のボトムスを持っていれば、組み合わせで十分変化が作れます。そこにワンピースを加えれば、毎日楽しく着回しが考えられるはずです」(河井さん)

 

また河合さんは“クローゼットにも家賃がかかっていると思いましょう”という表現をされていますね。すごい面白い言葉だと思いますが、その真意はどこにあるのでしょう。

 

「服に限らず何でもそうですが、買ったものには維持費と場所代がかかります。クローゼットが着ない服であふれていても、あまりコストとして捉える実感がわきにくいですよね。もしそうでしたら、乗っていないクルマのために毎月駐車場代を払い続けているのと同じといえばわかりやすのではないでしょうか」

 

そうは言ってもなかなかクローゼットを整理できない人も多いもの。河井さんのお仕事上の経験の中からわかりやすいエピソードを伺ったところ――

 

「ある雑誌の企画でタワーマンションの高層階にご家族と暮らしている方のクローゼットを整理するお手伝いをしたことがありました。すごく立派なウォークインクローゼットでしたが、そちらに収まりきらずに旦那様のクローゼットにも侵入されていました(笑)。実は、整理の前にどのような洋服がお好みか、というお話をお伺いしました。そのとき『スカートは履かない、黒もほとんど着ない』とのことでしたが、整理を終えたら黒のスカートだけで10枚以上出てきたんです。まだ商品タグがついたままの洋服もたくさん。その方に限らず、皆さんのクローゼットにも必要かどうかを問いかけていない洋服がたくさんあるのではないでしょうか」

 

いつか着るはずの「いつか」はめったには来ないものです

「あまり着ないけど、気が変わるかもしれないから取っておこう」と保留にして、結局何年も着ていない洋服がクローゼットにたくさんあるというお悩みもよく聞きます。そのお悩みにも河井さんのアドバイスはキッパリ!

 

「いつか着るかもしれない。捨てるのはもったいない。その気持ちはよくわかります。でもその『いつか』はなかなかやってこないものです。やっぱり着ないものは処分するのが正解で、着たいものだけがクローゼットに入っているほうがスッキリします。それだけでどれだけ気分がよくなるか、知っていただきたいです」

 

「これ惜しいな」と考えたものは写真を撮っておきましょう

処分するにしても、人に差し上げるにしても、なかなか踏ん切りがつなかないもの。その際、思い切って実行するためのアドバイスをいただきました。

 

「お嫁に出す前に一度その服を写真に撮っておくというのはいかがでしょうか? 高かったので最後まで惜しいと思ったジャケットなど、処分する際は写真を撮るのです。体型が変わって数回しか着なかったワンピースも、写真に撮っておけば処分はしても思い出は残るし、その上「私、昔はこんなに細身の服が着られたのね。この洋服は処分したけれど、またこんな細身のワンピースが着られるようにダイエット頑張ろう!」と励みになるかもしれません。そうすれば物理的に服はなくなっても、思い出はちゃんと残るはずです」

 

【しまう】

クローゼットの中はグループ分けを

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↑ボトムスはハンガーラックに吊るして色別に整理

 

今度は服をしまうときの注意点をお伺いしました。河井さんはどのように整理整頓されたクローゼットをキープされているのか興味は尽きません。

 

「クローゼットの中の収納が上手な人は探し物をしません。なぜかというと服をしまう場所がちゃんと決まっているからです。服の出し入れがどんなに多くても、必ず元あった場所に戻せば整理整頓された状態がキープされます」

 

具体的にはどのように整理をすればよいのでしょうか。

 

「まずはクローゼットの洋服をブラウス、Tシャツ、スカート、パンツとグループ分けして、場所を割り当てましょう。グループの中を色別で分けたり、長さで分けたり、頻度で分けたりするのは、さらにその先の工夫です。服も小物もクローゼットの中で場所をきちんと決めて、取り出したら同じ場所に戻すようにするだけで、探し物のストレスから解放されるはずです」

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↑セーターなどの畳みにくいものは、A4サイズの紙を畳む際に挟み込んで、そのサイズに揃えておくと収納もしやすいし、なおかつ湿気取りの役割もしてくれるのでオススメ。紙はどこでも手に入るA4の薄い上質紙とのこと。女性の服はA4がぴったり。「サイズを揃えて服をたたむ」ことは美しい収納の鉄則

 

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↑ダウンジャケットなどは、通気性のよいラッピングバッグの中に収納。「くるくると入れるとすごい小さくなります」(河井さん)

 

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↑ クローゼットの中にフリースペースを設けることも大切。帰宅してすぐ片付けられない服、畳んでいない洗濯物などをとりあえず置くスペースとして活用。寝る前に片づけるそう

 

クローゼットで使うハンガーは本数制限しましょう

河井さんのクローゼットを拝見して印象的だったのが、服がスッキリとハンガーにかけて収納されているのに、スライドして寄せられるくらいの余裕があることでした。じつはクローゼットの中のアイテムにも秘策があるようです。

 

「揃いのハンガーにすることで服を均一に並べられます。薄型のため普通のハンガーに比べて、ハンガーの数は2倍に増やせます。ただ、私は毎朝、『今日は何を着ようか』とハンガーをスライドさせて服を選んでいます。ですから、このスライドさせるスペースを確保するために、ハンガーの数はあらかじめ決めて、それ以上増やさないように心がけています」

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↑河井さん愛用の薄型のハンガー。ブラウスは38cm、コートは42cmのもの、スカートはノンスリップスカートクリップと用途に合わせて選択

 

「スカートは25本、トップスをかけるハンガーは45本、ワンピースをかけるハンガーは15本、コートをかけるハンガーを5本と決めています。できれば皆さんもクローゼットの中で使うハンガーの数を決めて、それ以上増やさないようにするというのも整理整頓されたクローゼットをキープするコツです」

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↑薄型ハンガーを使用しているため、収納力をキープしながらスライドさせるとかなり余裕がある

 

バッグの上手な収納は「立てる」「吊るす」

服の次はバッグの収納術をお願いしました。バッグはいくつ持っていてもまた欲しくなりますよね。でもカタチやサイズがばらばらで型崩れしやすく、収納に悩む人が多いかと思います。ここにもスタイリストならではの工夫がありました。

 

「女性用のバッグはサイズも様々で、クラッチバッグなどはなかなか自立してくれませんが、ブックエンドに挟んでおけば整理しやすくなります。ビジュー(編集部注:フランス語で、宝石の意味。ファッションの場合、人造石(模造宝石)によって加えられた装飾部分などを示す)などが付いたバッグは他のバッグを傷つける可能性があるので、そのときも『ブックエンド』で仕切れば安心ですから。また、ストラップのついた肩掛けバッグなどは、ポールにS字フックを取り付けて吊るしたりして収納するのが便利だと思います」

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↑自立しないバッグはL字型のブックエンドを使って収納

 

両面に写真を貼って春夏と秋冬を1つの靴箱を兼用

収納場所を増やせない代表格といえば玄関にあるシューズクローゼットですが、こちらにもプロの工夫が隠されていました。

 

「靴の収納はシーズンがあります。箱のままシューズクローゼットに収納しておきたいけれど全部の箱をとっておくのは結構かさばりますよね。そこで私は夏のサンダルと冬のパンプスを1つの箱で共用にしています。箱には両面に写真を貼っています」

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↑シューズクローゼットの最上段にシーズンオフの靴のみを箱に入れて収納。中身が見えるように写真を貼っている。じつは箱は春夏ものと秋冬ものを1つの箱で兼用している

 

【かう】

買い物前にクローゼットの総点検を

「処分」と「整理整頓」で河井さんならではの服を整理するワザをたくさんお伺いしたので、もうクローゼットに余裕が出てきたような気分。これで思う存分「ショッピング」を楽しめそう。でもその前に――。

 

「買い物にもコツがあって、何か新しい洋服を買う前には、クローゼットの総点検をオススメします。ひとは好みが偏ってしまうものなので、他人から見たら同じようなものばかり買ってしまうという方は多いはず。自分でも忘れていて、買い物から帰って来てクローゼットを開けたら『これって……』と同じようなものを持っていたというケースはよくあること。そのような後悔をしないように、買い物に行く前にクローゼットの中身を総点検して、自分の服とどんなコーディネートができるかが頭にないと、せっかくの買い物が無駄になってしまいます。また総点検のといは、クローゼットのキャパシティも確認しましょう。服がいっぱいにあふれていたら、新しい服を買うときに罪悪感をもってしまうかもしれません。新しい服を買うための余裕として、普段からクローゼットの中を整理して、少し余白を開けておくことをおすすめします」

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↑気がつくとアイテムが増えてしまいがちな人気のストールは、ピクチャーレールにリングをかけそこにたくさん吊るして見せる収納に

 

なるほど、気持ちよく新しい洋服を買い足すために、クローゼットの整理が必要というアドバイスは目から鱗でした。

 

「自分のクローゼットの中がいま着たいものが並んでいたら気分がいいはず。スッキリしたクローゼットをキープにしておけば身支度もスピーディにできて精神的にハッピー。だから私は『心の中とクローゼットの中は同じ』と思ってします。私はスタイリストの仕事を通じて、いつも服と向き合っています。自分を美しく表現するには、整ったクローゼットが必要だと考えています。何を残して何を処分するかにきちんと向き合う。収納上手な人は心の整理整頓もできる人です。毎日をストレスなく暮らしたいなら今日からクローゼットの整理整頓を心がけてください」

 

収納上手な人は心の整理整頓もできる人。服の断捨離という悩ましいテーマを、河井さんは素敵な言葉まとめてくださいました。

 

構成・文=プロデュース・オン・デマンド 撮影=工藤ケイイチ(ブリッジ)、根田拓也

 

【参考文献】

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『服を整理すれば、部屋の8割は片付く スタイリストが教える、美しいクローゼットの作り方』

(著者:河井真奈/発行:立東舎)

 

【プロフィール】

河井真奈

スタイリスト。青山学院女子短期大学卒業後、映画会社でOLを経験する。学生時代に専攻したファッションへの思いが強く雑誌の世界へ。数多くの女性誌においてファッション、ジュエリー、連載などで活躍するほか、女優にも信頼が厚く、CM、ドラマにも携わる。結婚、出産、子育てなど女性としての経験を活かしたライフスタイル提案で、トークショーや商品開発、アドバイザーとしても活躍中。著書に『絶対 美人アイテム100』(文藝春秋刊)。また、ふと、思う人へ。ギフトの贈り方が見つかるwebサイトfutoをプロデュースし運営中。代官山春花祭2017ではポップアップショップを出展。さらに1年に2回、ファッション業界の仲間と震災復興支援を目的としたフリーマーケットを主催し社会貢献活動にも取り組んでいる。

http://futo.jp/

 

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