ライフスタイル
2017/6/20 19:00

夏フェス前に抑えておきたい邦楽バンド3選! 「Suchmos」好きはコレを聴くべし

「いま日本で勢いある若手バンドは?」と聞かれたら、「Suchmos」という答えに異論を唱える人は少ないだろう。HONDAヴェゼルのCMでジワジワお茶の間に浸透し、発売から1年かけiTunesのトップチャートに入った「STAY TUNE」が有名で、ライブのチケットは常に即完。フェスに出演すれば、まるでワンマンかのようにフロアを盛り上げる。

 

ちなみに、「STAY TUNE」がチャートに入ったときの他のラインナップは、星野源の「恋」やRADWIMPSの「前前前世」など、この並びからもSuchmosの勢いを感じる。

 

和製ジャミロクワイなどと囁かれ、ブラックミュージック、アシッドジャズをルーツにした楽曲自体のパワー、メンバー6人の魅力はもちろん、Suchmosの成功はファッションやカルチャーを巻き込んでいったマーケティングも大きな一因だと思う。音楽の新しい広がり方が成功したようで、元気なニュースが少ない音楽業界に爽やかな風が吹いた。

 

OK、Suchmosはチェックしてる! じゃあ次は?

ついには新レーベルを立ち上げることも発表され、Suchmosがメジャーな存在に。じゃあ次に来そうなバンドは? そこでSuchmosファン・音楽ファンにおすすめの注目の3バンドをご紹介したい。ブラックミュージックのグルーヴを日本人的に昇華している点がポイントだ。

 

その1)“自由”を愛するモードにぴったり「nulbarich(ナルバリッチ)」

Suchmosが和製ジャミロクワイといわれる一方、こちらは和製マルーン5と評されることも。ソウル・アシッドジャズを踏襲した、ポップで軽快な聴きやすさに惹かれる。時として現代におけるブラックミュージックの天才・ディアンジェロを思わせるサウンドも。

 

nulbarichはシンガー・ソングライターのJQを中心としたバンドで、2016年の初頭に結成した。メンバーは時代、四季、背景など状況に応じ、 ベストなサウンドを創り出すため流動的。ゆえに、“ナルバリ君”と呼ばれるキャラクターのイラストをアーティスト写真として使用している。

 

「GREENROOM FESTIVAL ’17」では、あまりに演奏が巧みで驚いたが、ステージを観るとこの日のメンバーにはスタジオミュージシャンが! なるほど、豊かな音作りをしているはずだ。

 

Nulbarich(ナルバリッチ)という名前には、
Null(ゼロ、形なく限りなく無の状態)
but(しかし)
Rich(裕福、満たされている)
「何も無いけど満たされている」
形あるものが全てではなく、形の無いもの(SOUL、思いやりや優しさ含めた全ての愛、思想、行動、感情)で満たされているという意味が込められている。
※公式HP(http://nulbarich.com/index.php/biography/)より引用

 

ああ、メンバー編成とバンド名の由来を知り、どうりで彼らの音楽を聴いていると呼吸がしやすいと納得した。多くを抱えて身動きが取れなくなるような息苦しさは、こんなにいろんなことが進歩した現代において、ソフト面でもハード面でも、回避することはできる。

 

たとえば、SNSをキッカケにした繋がりを“希薄”だと嘆くのではなく、そこでの出会いを愛して未来を紡いでいくのもアリ。そうやって“身一つでどこへでも行ける生き方”を心地いいと感じたり憧れたりする私やあなたのモードに、Nulbarichの軽やかさは、ぴったりなのだ。

 

5月24日にリリースしたばかりの1st EP「Who We Are」が話題を呼んでいるので、ぜひチェックして欲しい。雑踏で聴くと、自分が自由なことを思い出して日常にきらめきが……。

 

その2)新世代のクールな思考、クールなグルーヴ「WONK(ウォンク)」

一聴し、音楽業界で場数を踏んできたミュージシャンが集ったバンドなんだろうと推測した。音が見事に円熟しているからだ。ジャズやソウル、ヒップホップの要素をクロスオーバーに取り入れ、「エクスペリメンタル(実験的な)・ソウル」を自称するWONKサウンドとして、昇華されたグルーヴが心地よい。

 

メンバーは男性4人。ヴォーカルのKento NAGATSUKAは、ジャズをベースとしたバンドでは珍しくハンドマイクを使う。気になってメンバーを調べてみたら、全員20代だというので驚いた! 予想より若い……けどたしかに、物心ついたころからYoutubeが身近だった「Youtube世代」ということも、この音楽センスを築き上げた要因だろうと納得。

 

インタビューを読むと、発言の随所に新世代のクールさを垣間見ドキッとさせられる。先述したよう抜きん出たセンスやテクニックを持ちながら、「そもそも、誰も音楽だけで食っていこうとは思っていないしね」(ARATA)と。たしかに彼らは、料理人やゲームサウンドクリエイターなど、それぞれ仕事を持っているらしい。

 

あまりの涼しさにびっくりするような発言だが、真意は熱い。彼らが音楽に冷めているからではなく、あくまで冷静に俯瞰して音楽シーンを見渡しているからだ。

 

「まず僕らの音楽を聴いていただいて。それをきっかけに、アパレルに進出するなど他のチャネルを増やせればって感じですね」(INOUE)

「最終的には音に限らず、ある価値観を提示するグループにならなきゃいけないなっていうのはありますね」(EZAKI)

※インタビューの発言はhttp://www.tunecore.co.jp/spotlight/85より引用

 

冒頭のSuchmosでも書いたように、音楽の広がりを業界内にとどまらずもっと大きな視点から見ているのだ。世界でも通じるように歌詞は英語(実際に欧州ツアーを敢行、成功を収めた)。冷めているのではなく、ホットにクレバーなのだ。

 

活動はメンバーの仕事が終わった夜。酔眼に街がキラキラ映るような、アーバンなサウンドが心地いい。「CDショップ大賞2017」ではジャズ賞を受賞し、業界関係者や音楽ファンのあいだで着実にスケールを増している。まだ始まったばかりのWONKストーリーを、追わずにはいられない。

 

その3)王道J-POP✕ブラックミュージック「LUCKY TAPES(ラッキーテープス)」

結成したきっかけは、マイケル・ジャクソンの「Love Never Felt So Good」。キング オブ ポップの称号どおり、踊れて、歌に芯があって、老若男女誰もが心ときめかせる曲だ。ブラックミュージックを幼少期から聴いてきたメンバーが「ああいう音楽をやりたい!」と口に出し合ううちに、LUCKY TAPESは始まった。なんだか漫画みたいに素敵なエピソードでわくわくしません?

 

鎌倉出身の男性3名を中心に、ホーンセクションや女性コーラス、パーカッションをリッチに交えるライヴは総勢10名以上がステージに上る。会場が手狭に感じるのもまた愉し、どこを観てもワクワクするテーマパークのパレードのような演奏は「ライヴ」というより「ショウ」をしている感覚だと本人たちがいうのも納得。

 

しかし、これは最初から狙っていたベクトルではない。前身バンドSlow Beachのころは、チルウェイブやシンセポップなど海外インディーから影響を受けたこともあり「王道キャッチーはダサい」感覚だったそう。それがマイケルをきっかけに、多感な時期に通ったJ-POPの奥深さにハッとし「王道の中に深みを出そう」とシフトチェンジしていく……。このストーリーを聞き、マルーン5の武道館公演が浮かんだ。

 

2011年、武道館で女性ファンの黄色い嬌声に圧倒された私は、かつて冴えない冴えない恋愛ソングを歌い、どうにも売れなかった時代のマルーン5を思った。武道館でも「Misery」なんて相変わらず女々しいラブソングを歌っていたけど、そんな曲もシンガロングさせるパワーを身に着け輝きまくっていたからだ。

 

彼らは一人でも多くの人に届けたいと音楽との向き合い方や制作意識を変え、ポップのなかにあるキラメキを見つけたのだと思った。ポップミュージックはこんなにも普遍的でパワーに満ちているということを証明されたようだった。

 

黄色い嬌声にまみれる……かはわからないが、きっとLUCKY TAPESにもそんな風に武道館で大勢のカラダを揺らす日も来るのではなかろうか。ポップスの深みを知っているミュージシャンは、強く広がる曲を鳴らせるのだから。多幸感あふれるライヴも必見だ!