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2018/3/5 20:00

北海道上川郡当麻町。「何もない田舎が⇒全部ある町」に変貌した

地方創生が叫ばれて久しいですが、各自治体は様々な施策で町を盛り上げています。そのなかから、今回は個性的なプロダクトを生んだケースをご紹介。その舞台は、北海道の中央部に位置する「当麻町」(とうまちょう)。その道のマニア垂涎のアイテムが誕生した背景には何があったのか。PRイベントの様子とともに紹介していきます!

 

 

特産品がふるさと納税で希少なお宝に化けた

北海道といえば観光地として人気なうえ、海の幸も山の幸も豊富な地域。ただその一方で夕張市が経営破綻したように、必ずしも自治体が運営しやすい立地条件ではないようです。当麻町も例にもれず、一時は危機を抱えていました。

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↑当麻町は北海道の中央部にあり、旭川市に隣接した立地です

 

住民も「この町には何もない」と嘆いていたとか。でも、それは内側にいたため魅力に気付いていなかっただけ。ここには日本一の高級スイカと称される「でんすけすいか」や、北海道で唯一最高ランクを12年連続で獲得したお米などの特産品があったのです。

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↑イベントでは食べ比べも実施。左が一般的な「あきたこまち」で、右が当麻町産の「ゆめぴりか」。後者のほうが、甘みとふっくら感が豊かな印象でした

 

素晴らしい特産品を作り続けてきたことが、やがて実を結ぶことに。そう、すっかりおなじみの「ふるさと納税」のブームです。基本的な財政のやりくりや、この税収などによって行政的な収益が改善され、やがて住む人にうれしい制度が次々に誕生。町民はこれまで気付かなかった魅力に誇りを持ち、いまでは“全部ある”を合言葉に掲げてPR活動にも励んでいます。

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↑小中学校の修学旅行が無料など、うれしい制度のひとつが教育。また林業が盛んなため、家を建てる際の木材は250万円まで補助。町内で起業した事業者には300万円まで援助なども

 

不便な立地や厳しい寒さは商品の魅力を伝えるストーリーに

そんな当麻町ですから、移住者や起業する若い人も増加中。なかには、ここならではの画期的な商品も生まれています。ということで、2つの事例を紹介したいと思います。ひとつ目は、世にも珍しい日本酒。なんと、鍾乳洞で熟成させているのです。

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↑当麻鐘乳洞熟成酒「龍乃泉」2778円。地元の販売店か、ふるさと納税の返礼品でしか一般購入ルートはありません

 

町の観光資源のひとつが、天然記念物となっている「当麻鍾乳洞」です。この、温度が9℃で湿度が90%という環境が安定的に保たれる空間は光も届かないので、熟成に最適。ここで45日間寝かせることにより、よりおいしさに磨きがかかるというわけなのです。

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↑販売元の髙砂酒造株式会社 企画部 部長の廣野 徹さん。2018年は4月28日からの発売となり2017年分は完売状態だったのですが、残っていた1本をふるまってくれました

 

酒米は、北海道生まれの銘柄から「彗星」を使用し、精米歩合は45%の純米大吟醸酒。日本酒度は+3で酸度は1.3という、冷やがオススメの中辛口タイプといえるでしょう。

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↑左が熟成していない生酒で、右が熟成後。色味にもうっすらと深みが出ており、味はすっきりとしていながらまろやかな口当たりもあり、ほんのりフルーティな吟醸香も

 

そしてもうひとつの商品は、ファッションの分野から。北海道生まれの“最強ダウンジャケット”として高い人気を誇る、「NANGA WHITE LABEL」(ナンガホワイトレーベル)の直営店「MOONLOID」は、実は当麻町にあるのです。

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↑「ダウンジャケット」4万5360円。カラーは写真の「LEAF」のほか「RESCUE RED」など全6色で、サイズはXS~XXLの全6種あります

 

なぜ“最強”なのか。これは、極限的な寒さに対する強さというよりも、日常使いで大活躍してくれるタウンユースとしての圧倒的な着やすさにあります。不必要といえるほどのスペックが付いた山登り用ではなく、街着としてのデザイン、価格、品質、機能のすべてに満足できるダウンジャケット。それが「NANGA WHITE LABEL」なのです。

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↑「MOONLOID」の代表・甲斐綾乃さん。極寒であっても室内は暖かいので、現地住民の普段着はこのように薄着なのだそうです

 

実は日本で一番寒い場所は、最低気温-41℃を記録した旭川。その環境がブランドのモノづくりに生きていると語るのは、代表の甲斐さん。でも2017年に旭川から隣の当麻町に店舗を移転しました。直営店であれば、アクセスの至便な旭川市のほうが効率がよいと思うのですがその真意はいかに?

 

「オリジナルブランドで意識しているのは“北海道らしさ”なんです。その価値を一番伝えられるのが当麻町だと直感しました。人口が旭川より少ないぶん、人の手が加えられていない自然があふれていて、世界中の人に“北海道らしさ”を一層伝えられると思います。アクセスは不便ですが、来店される道程で体験する自然の息吹も商品ストーリーのひとつだと思っていただけたら。あとはやっぱり、果敢にチャレンジしようとする町全体のエネルギーに惹かれました」(甲斐さん)

 

技術の進歩でハイテクなものが増えれば増えるほど、当麻町のような自治体の価値は見直されるはず。ふるさと納税の返礼品で名産を気軽に体験するのもいいですが、観光スポットも豊富なので、旅行で訪れてみるのもオススメですよ!