夢のマイホームを建てる際、お子さまがいる家庭であれば“子育てのしやすさ”は当然外せないポイントです。そこで今回は、子どもがのびのびと育つ家「へーベルハウス +NEST」を提唱する旭化成ホームズ・くらしノベーション研究所主幹研究員であり共働き家族研究所長の木戸將人さんと、整理収納アドバイザーの梶ヶ谷陽子さんをお招きして、「子育て家族の理想のマイホーム」をテーマに対談していただきました。
整理収納アドバイザー 梶ヶ谷陽子
2013年より整理収納アドバイザーとしての活動を本格的に開始する。間取りプランナー、防災士など暮らしにかかわる資格を多く保有し、企業の研修講師から商品プロデュース、テレビ出演・書籍執筆などマルチに活躍中。2017年10月には自身初のプロデュース商品「Carry Storage」シリーズもリリース。著作は『やせる収納』(主婦の友社)ほか多数。「Bloom Your Smile」代表。二児の母でもある。
共働き家族研究所長 木戸將人(旭化成ホームズ)
くらしノベーション研究所主幹研究員。共働き家族研究所長。1995年、旭化成工業(株)住宅事業部入社。東京エリアで約400棟以上の設計を担当する。2014年からくらしノベーション研究所にて共働き・子育て家族を主な対象とした調査研究・商品開発を手がける。『インテリアの百科事典』(丸善出版)共著。
進化するいまどきのオープンキッチン――子どもの手伝いが3割もアップ!?
木戸 家づくりのタイミングって、皆さんお子さまが大きなキッカケで、だいたい小学校に入る前あたりが多いですね。
梶ヶ谷 感覚として、わかります。実は私たち夫婦も家を2度建てていまして、最初が結婚して夫と暮らしはじめるとき。2度目は、長女が幼稚園に入るころでした。
木戸 2度も建てていらっしゃる? それはうらやましいです。
梶ヶ谷 いえいえ、マンションなども視野には入れて条件が合うところを探したのですが、いろいろ検討に検討を重ねた結果、戸建てのほうがいいかなとなりまして…がんばりました(笑)
木戸 すばらしいですね。最近は家づくりのタイミングが少し早まっていまして、保育園に入る前くらい。つまり家づくりを検討されるご夫婦が、より若い世代になってきているようです。
梶ヶ谷 そうなんですね。たしかにそうかもしれませんね。
木戸 梶ヶ谷さんは今、お子さんお二人ですか?
梶ヶ谷 はい。現在、10歳の娘と4歳の息子がいます。
木戸 となると、お仕事をされていて、かつ子育て真っ最中でいらっしゃる。
梶ヶ谷 はい。まさに御社へーベルハウスのパンフレットなどに載っている“ゼンリョクママ”です(笑)
木戸 いまの共働き家族は、家事や子育てをするけれど空回り気味の“チョイカジパパ”と、仕事も家事も子育ても忙しいなりにがんばる“ゼンリョクママ”が主流なんです。
梶ヶ谷 木戸さんは「子どもがのびのびと育つ家」についても研究されているとか。
木戸 ええ。親子のコミュニケーションをいかに育むかという観点で家づくりを考えますと、やはりLDK(リビング・ダイニング・キッチン)がテーマの中心になります。共働き夫婦が7割近くになり、専業主婦の方の比率が下がりつつある今、よりいっそう家族みんなで会う時間は限られてきている。朝は慌ただしいですよね?
梶ヶ谷 たしかに。うちも主人は朝早く家を出ますし、家族4人が輪になってゆっくり朝食をとることは難しいのが現状です。
木戸 そうでしょう。とはいいつつ、朝食は夕食に比べて準備がそれほど手間のかかるものではなく、たとえばご主人がトーストなどの用意をされたりもする。その意味ではやはり「朝の団らん」は大切なコミュニケーションの場になるわけです。
梶ヶ谷 おっしゃるとおりだと思います。
木戸 弊社では現在、約9割のお客様が対面式のキッチンを採り入れていらっしゃいます。
梶ヶ谷 たしかに、私の実家はダイニングとキッチンが明確に分かれていますけれど、今でも母などはオープンキッチンにしたいと言っていますね。
木戸 実は手元の見えるオープンキッチンのほうが、お子さんのお手伝いが3割も増えるというデータがあるんです。
梶ヶ谷 3割も! それは大きいですね。
木戸 ええ。なぜかというと、ポイントはキッチンの作業台の高さで、だいたい小学校低学年のころのお子さんの目線の高さに近いのです。つまり、お母さんなりお父さんが食事の準備をしている手元がはっきり見える。すると興味をもって自ずと手伝いたくなる。好奇心を刺激するんでしょうね。
梶ヶ谷 なるほど。私のいまの家もオープンキッチンですけど、正直ハードルは高いんです。なぜなら、来客の際に私の手元やキッチンのようすが見えてしまうので。でも、ふだんから整理収納を心がけるようになるメリットもあります(笑)
木戸 キッチンに関してはご主人――パパをもっとキッチンに入れようとの意図で、両側から出入りできるアイランド式キッチンもご提案しています。
梶ヶ谷 両サイドから出入りできると、子どもやパパのお手伝いもやりやすいですね。
木戸 ええ。最近は、コンロを壁側に配置してシンクや作業台と別にした分離式のタイプ(マルチアイランドキッチン)もあります。男性がよく炒め物を調理されるので、油がはねたりすることなども考えて。
+NEST――いい間取りは家族間コミュニケーションが増える!
木戸 夕方にお子さんが帰宅して、どこで宿題をするかというと、ご承知かと思いますが、リビングが多いのです。お母さんとしては、そのこと自体は歓迎とはいえ、いかんせん夕食の準備と重なる。いざダイニングテーブルに料理を並べようとすると、消しゴムのカスが残っていたりしますし、教科書やノートなども散らかっている(笑)
梶ヶ谷 わかりますー(笑)
木戸 それを単に解決するだけでなく、プラスの効果もご提案できないかと商品化したのが「+NEST」(プラスネスト)というスペースです。LD(リビング・ダイニング)の一角に、お子さんが宿題やお絵描きできる場所をご提案させていただきました。2008年のことです。
梶ヶ谷 すてきな発想ですね。安心できますし、コミュニケーションもとりやすい。子どもが大きくなったら、やがては自分たち夫婦の趣味のスペースとしても使えますものね。
木戸 まさにそのとおりです。家はライフステージによって、しなやかに対応できる柔軟性を持たなければならないと考えています。+NESTのデビューから今年で10年目。おかげさまで評判も良く、いくつかのご家族を追跡調査させていただいた結果、ほぼすべてのご家族がお子さんの勉強や遊びの空間としてお使いいただいています。
梶ヶ谷 すてきですねー。
木戸 実は+NESTには、「お子さんが礼儀正しくなる」という効果もあるようです。LDの一角に自分のスペースがあると来客時、例えばママ友が遊びに来たときもその場所にいて、親たちの様子を眺めたり会話を聞いたりしている。社会性を学ぶのでしょうね。
梶ヶ谷 なるほどー。それは片づけにも通じますね。狭くても自分のスペースがあると、そこで身支度したり、学校から持ち帰ってきたモノをしまったりする。最初からそうしたスペースが考慮されているなんて、ホントすばらしいです。うちはリビングに後から子ども用の収納を作って、そこにランドセルなどをしまえるようにしています。
子ども部屋と収納――“適材適所の収納”が子どもの成長に効果的
梶ヶ谷 そうそう、子ども部屋といえば、へーベルハウスには子どもが壁の一面を自由にできる仕様もあるみたいですね?
木戸 ええ。子どもキッカケの家づくりと申しましても、具体的に間取りやら外装・内装、設備などを考えるのはパパ・ママやおじいちゃん、おばあちゃんです。子どもの視点から工夫がこらせる、たとえば壁の一部をマグネットクロスにして、自分が描いた絵や好きな写真などを貼れるようにするとか、場合によってはそのまま絵を描けるなどしたらどうか、というアイデアです。
梶ヶ谷 おもしろいですね。
木戸 創造性を育むうえで効果的ではないかとの意図です。さすがにリビングでやられたら問題ですけれど、子ども部屋の一部なら許容範囲(笑)。親御さんとしては、新築の家は壁に釘1本刺したくないですからね。いざとなれば、あとでクロスを張り替えればいい。
梶ヶ谷 私もそうでした。釘どころか画びょうも刺したくなかった(笑)
木戸 2度も家を建てられたのは本当にすごいですね。1度目のご経験が生きている?
梶ヶ谷 そうですね。失敗もしています(笑)。2度目の家を建てる前に整理収納アドバイザーの資格を取得して、いかにふだんの生活で収納が重要なのかを改めて認識したのですが、私は基本、さまざまな収納家具を後で買ってきて、使いやすいように置くスタイル。収納を味方につけると、ホント日々の暮らしが助かりますから。ここでお聞きしたいのですが、家づくりの初期の段階から子どものスペースを考えたり、ビルトインの収納設備などを設計するコツはいったいどこにあるのでしょう?
木戸 まずは、住む方の生活を知らなければなりません。ですから、朝起きてから夜お休みになられるまで、どんなスケジュールなのかをヒアリングさせていただきますね。
梶ヶ谷 ああ、一緒です。私も収納のご相談を受けたとき、その方がどんな生活パターンなのか、いつどこでどんな作業をされるのかなど、起床から就寝までの流れを聞かせていただきます。
木戸 なるほど。私どもはよく「3つのぱなし」というお話をさせていただきます。①出しっぱなし、②かけっぱなし、③置きっぱなし、ですね(笑)
梶ヶ谷 わかるー、わかります(笑)
木戸 これらの解決策としてご提案させていただいているのが、大きく「集中収納」と「壁面収納」。多くの場合はリビング、もしくは玄関からLDの間あたりに、ある程度まとまった収納が可能なスペースを考える。その際、床面積ではなく、壁面積として収納スペースをとらえるということです。
梶ヶ谷 壁面収納は有効ですよね。
木戸 おっしゃるとおりです。そのとき、4人家族の場合でLD収納の目安として約7㎡の壁面積を考えてください、と。これはいろいろデータをとらせていただき計算した平均値です。近年、再調査したところ、必要な壁面積はほとんど変わらないのですが、1つ当たりのモノのサイズが小さくなり、モノの数自体は増えているんです。
梶ヶ谷 たしかに昔はなかったような便利な生活用品が増えたりしています。
木戸 そうなんです。で、「リビングクローク」と呼んでいますが、たとえば「テレビを置く側の壁の裏側に1畳くらいの収納スペースを設けませんか?」と、ご相談させていただいています。近年、こうした設計にできるのはテレビが薄型になり、視聴距離が昔のブラウン管時代より短くて済むようになった背景もあるかもしれません。
梶ヶ谷 実際にこうした収納を採り入れる方は多いですか?
木戸 はい、おかげさまで。仮に18畳のLDでしたら17畳ではいかがでしょう、と申し上げると納得いただけたりします。
梶ヶ谷 1畳くらいなら許せますね(笑)。すばらしいなぁ、3面の壁面収納は目隠しにもなるし、地震などのとき、人がいるほうにモノが飛び出したりしてこないメリットもありますよね。
木戸 ええ。へーベルハウスは壁に耐力を負担させない構造なので、壁を凹ませて収納スペースを作ったり、壁と収納を兼用させる間仕切りファニチャーの採用など設計の自由度が非常に高いのです。梶ヶ谷さんはより実践的というか、ケースバイケースでどこに何を収納するかなどキメ細かな観点でお考えだと思いますが、私どもは大きな枠でとらえて、「そこに入れば良し!」という考え方です。
梶ヶ谷 なるほどー。
木戸 収納の専門家としての立場から、改めて子どもがのびのび育つための収納のポイントを教えていただけますか?
梶ヶ谷 単に収納スペースをとるのではなく、“適材適所の収納”を考えることじゃないかと思っています。よく子どもに話すのが、「片づけって、モノをもとの場所に戻せばいいんだよ」と。「だから、戻す場所をいっしょに決めようね」「どこなら戻しやすい?」と、子ども目線で収納場所を決めてあげる。「子どものせいでウチが片づかない」と不満をこぼす方がいらっしゃいますけど、そうじゃないと私は言いたいです。
木戸 あー、腑に落ちました! ある保育園の先生にヒアリングしたとき、「2歳でもお片付けはできますよ」と言われまして。次の商品のヒントになるなぁ(笑)。6月30日のセミナーも楽しみにしています。
梶ヶ谷 いえいえ、私のほうこそ、木戸さんのお話が楽しみ。もっと聞きたいです。住まいのカタログや収納ハウツー本どおりの暮らしはなかなかできませんけど(笑)、理想に近づけることはできますからね。今日はおかげさまで目からウロコが3枚4枚も落ちちゃいました(笑)
木戸 とんでもないです。本日はありがとうございました!
【お知らせ】
カリスマ整理収納アドバイザー&教育評論家による
「子どもが伸びる! くらしやすく・学びやすい家づくり」セミナーを開催します!
日時:2018年6月30日(土)13:00開始
会場:学研ビル13階カフェフロア(JR五反田駅5分)
会費:無料
主催:株式会社学研プラス 協賛:旭化成ホームズ株式会社
「子どもの勉強スペースはどうすれば?」「子どもがいても片付く家にするには?」など、家を建てるうえで、育児や教育はもっとも重要なポイントのひとつです。そこで今回、教育評論家・親野智可等先生と、整理収納アドバイザー・梶ヶ谷陽子さんを迎え、子育て世代の皆様にとって「くらしやすく・学びやすい」家づくりについて考えるセミナーを開催いたします。
ぜひこの機会に、お子様・ご家族にとっての“理想の家づくり”を発見してみましょう!
<プログラム>
第1部
★「子どもが自然に伸びる家~学びやすい家づくりとは?」
教育評論家:親野智可等先生
第2部
★「親子コミュニケーションを育む家とは~建築事例のご紹介から
旭化成ホームズ株式会社
「くらしノベーション研究所主幹研究員・共働き家族研究所長」:木戸將人さん
★「『未来の家づくりシート』で見つける本当に建てたい理想の家講座」
整理収納アドバイザー:梶ヶ谷陽子さん
撮影:我妻慶一
撮影協力
旭化成ホームズ(株)ヘーベルハウスFREX 3F石神井モデル
東京都練馬区下石神井1-8-4 石神井住宅公園内