ライフスタイル
2018/5/28 10:00

よく聞く正社員と派遣社員の施設利用格差は法律的にどうなの? 弁護士に聞いてみた

ひと昔に比べれば、働く環境や形態は多様化しており、正社員だけでなく、派遣社員、契約社員、アルバイト、業務委託など様々な人が同じ会社、フロアで働くようになりました。そんななか最近インターネットで定期的に話題に上がるのが雇用形態による施設利用の格差。「うちの会社は派遣社員が社員食堂やウォーターサーバーを使ってはいけない」といったものや、さらに極端なものでは「派遣社員はエレベーターを使ってはいけない」といった類いの告発。これ、果たして法律的にはどうなのでしょうか。今回は民事訴訟を専門とする弁護士の水流恭平先生に話を聞きました。

 

↑弁護士法人・東京スカイ法律事務所の水流恭平先生。当初は塾講師を志したそうですが、一念発起し、弁護士に。現在は、不動産のトラブル、離婚問題、債務整理などを中心に活躍中

 

 

――近年、正社員と主に派遣社員との間での待遇の違いによるトラブルが増えているように思いますが、実際はどうなのでしょうか?

 

水流恭平先生(以下:水流) 増えていると思います。この理由は後述しますが、前提として、なぜ正社員と派遣社員の待遇に違いが生じるのかを両者の法律上の立場から説明します。

 

そもそも、正社員と派遣社員は、雇い主が異なるという点で大きな違いがあります。正社員は、指揮命令を下している企業……仮にA社としますが、このA社と労働契約を結んで働いています。

 

一方、派遣社員は、指揮命令を下しているA社と労働契約を結んでいるわけではなく、A社と労働者派遣契約を結んでいる企業……仮にB社としますが、このB社と労働契約を結んでA社に「派遣」されて働いているわけです。つまり、派遣社員の雇い主はB社ということになります。

 

このように、正社員も派遣社員も同じ企業から指揮命令を受けて働くわけですが、雇い主が違う点で大きく違いがあります。

 

そして、従業員の福利厚生を提供するのは雇い主である以上、雇用主が異なれば、提供される福利厚生の内容も異なるのは当然のことなのです。

 

例えば、A社の正社員には雇い主であるA社から食事の手当が出ても、A社の派遣社員については、雇い主であるB社の判断次第では食事の手当が出ないこともあり得るのです。

 

しかし、近年、SNSなどに、正社員と派遣社員の待遇の差だけを強調した職場の写真などがアップされるようになると、例えば「正社員はウォーターサーバーを使えるのに、派遣社員が使えないのは差別じゃないか」というような声が目立ち、派遣社員は職場で不当に差別されていると感じる人も増えたのではないかと思います。

 

ただ、こういった場合に忘れてはいけないのは、正社員と派遣社員は、そもそも雇い主が異なる以上、待遇が異なる事態も当然生じ得るので、そういった声がすべて道理に沿っているとは限らないということです。

 

 

「配慮義務」で、企業は正社員と派遣社員の格差をなくさなければいけない

――実際に会社で働いていた場合、「雇用主が違うんだから」と割り切れないようにも思います。やはり人間と人間の関わりのなかで仕事を進めていくものだと思いますので。

 

水流 おっしゃる通りです。確かに、法的には「正社員と派遣社員は待遇が違って当然」なのですが、待遇の違いが差別を生じさせているのならば、是正する必要があります。また、派遣社員が増えている昨今では、同じ仕事をしているにもかかわらず、派遣社員と正社員の待遇が大きく違えば、派遣社員の働く意欲も削がれ、その結果、社会全体にとって好ましくない状況になると思います。そしてこのような問題意識も一つの契機となってか、平成27年に、派遣法は改正されました。

 

――どんな内容になったのですか?

 

水流 例えば、派遣先企業には、派遣社員に対して福利厚生施設の利用の機会を与える配慮義務を負うことが、法律で明文化されました。ただし、これはあくまで「配慮義務」なので、企業側が配慮義務に違反した場合でも罰則はありません。

 

――つまり、努力目標のようなものですか?

 

水流 努力義務より若干厳しいです。努力義務は、どの程度義務を遵守するかは当事者次第ですが、配慮義務の場合、義務の実施が可能か、難しければどうしたら実施できるか、代替案はあるかなど、具体的に検討することが求められると考えられます。そのほか、配慮義務に違反した場合、今後は行政指導を受ける会社まで現れる可能性もあるのではないかとも思います。

 

――行政指導を受けるとなると、企業にとっては相当なダメージですね。

 

水流 そうですね。派遣法改正後、実際にどの程度運用されたかどうかはわかりませんが、もしも行政指導が入り、個別に訴訟などが起きて「この企業は配慮していない」ということを裁判所が認めた場合は、違法行為となり得ます。

 

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