ライフスタイル
2018/5/28 10:00

よく聞く正社員と派遣社員の施設利用格差は法律的にどうなの? 弁護士に聞いてみた

 

正社員と派遣社員のトラブルが大きな訴訟になったケース

――実際に水流先生が受け持った事案で、正社員と派遣社員をめぐるトラブルは近年ありましたか?

 

水流 例えば、従業員同士のトラブルで「アンタは派遣社員だから、こっちに来るな」「派遣社員のくせに」といったものがありました。私が受け持った事案では、正社員と派遣社員だけの紛争にとどまりましたが、派遣社員が、従業員である正社員に対してだけでなく、雇用主である会社に対しても損害賠償請求をすることも稀ではないと聞きます。

 

このように、会社の損害賠償責任まで問われているのは、会社の支払能力が高いからという理由だけでなく、雇用形態から生まれた「差別」を放置した会社に対して、きちんと社会的責任をとってほしいという派遣社員からのメッセージも含まれているとも思います。

 

――企業側は単に売り上げを伸ばすことだけでなく、同様に社内環境への配慮にもより力を注がないといけなくなっているということですね。

 

水流 そうですね。今日のようにさまざまな雇用形態の従業員がいる企業にとって、社内の異なる雇用形態間で生じる差別が、その企業の社会的評価を低下させることにつながりかねません。

 

特に、雇われている側の権利意識の高まりもあり、近年、会社を巻き込んだ裁判沙汰のトラブルも増えていますので、やはり現代的に見れば、労働環境への配慮というものは企業にとって必須のものになったと思います。

 

 

SNSでの告発は違法? 合法?

――ところで、SNSなどで世間に訴えをかける場合、社内の写真を勝手に撮ってアップしたり、社内の状況を書き込んだりすること自体は違法ではないのですか?

 

水流 この線引きは難しいですね。企業は「業務上知りえた情報を外部に漏らしてはいけない」という規定を定めていることが多いと思うのですが、社内でのことをSNSでアップするのは一応、その規定に反することになります。

 

しかし、根も葉もないことを書くわけではなく、実際に暴行を伴う労働環境であれば、犯罪などに該当する可能性がありますので、そういうケースであれば告発しても名誉棄損罪等に問われたり、民事上の損害賠償責任を負ったりする可能性は低いと思います。

 

――水流先生個人の見解としてはいかがですか?

 

水流 やはり、個人の権利が侵害されているだけでなく、広く社会に周知する必要性の高い場合には、SNSでの告発もやむを得ないのではないかと思います。

 

 

その会社に働きに行く前にマストでチェックすべきこと

――これまでうかがった「配慮」を企業側が怠り、問題に発展した場合の一番のダメージはどういったものになりますか?

 

水流 一番は企業イメージのダウンですね。社内の人間関係からギクシャクが生まれ、それが表に露呈し「派遣社員を差別する会社」として周知されると、その会社の商品を買う人は少なくなるかもしれません。また、良い人材も集まらなくなり、生産性にも影響すると思います。

 

――一方、正社員・派遣社員問わず「これから勤めに行こうとする人」は対象企業のどういった点をチェックするのが良いと思いますか?

 

水流 まず、一番重要なのは、業務内容、賃金、労働時間がどれくらいかです。この辺りのトラブルは増えていますので、チェックされたほうが良いですね。

 

あとは、実際にそこで働いている、あるいは、働いたことのある人の声を事前に聞けるとより良いと思います。仕事をする上での満足、そして、予測できそうなトラブルなどを加味した上でどこに勤めるかを選択できると良いと思います。

 

 

人間同士のかかわり合いのなかでは、ときにトラブルを生むこともありますが、やはりできるだけ楽しく、仲良く過ごしたいものですよね。まして1日のうち長い時間を過ごす仕事の場面ならなおのこと。働く人も企業側も、今までとは違う「働く環境」への配慮が求められているのかもしれません。

  1. 1
  2. 2