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2018/7/21 10:00

どうしてここまで多い!? 「台湾フェス」の知られざる理由

 

台湾が日本人が行きたい国の筆頭に上がるようになって数年。いまなお人気は衰えることがなく、各地では台湾にまつわるフェスティバル、お祭りも開催されるようになりました。しかし、5月に東京スカイツリーで、6月に上野で、7月に代々木公園と札幌で、9月に再び上野で、さらに群馬や栃木でも同様のイベントが開催予定と、とにかく多い台湾フェス。この理由はいったい何なのかを、多くの台湾フェスの後援を行う臺灣新聞社の錢 妙玲さんに話を聞きました。

 

臺灣新聞社の代表であり、台日文化交流基金の代表理事でもある錢 妙玲さん。台湾・台中に生まれ育ち、日本人と結婚し、現在は台湾と日本を行き来しています。台湾と日本の相互理解、文化交流に対して熱く語ってくださいました

 

 

一口に「台湾フェス」と言っても主催グループがいくつもあるから数が増える!

――他の外国フェスでは考えられないほど多い台湾フェスですが、そのほとんどに台湾新聞社さんが後援として参加されています。そもそも、なぜここまで台湾フェスが多いのですか?

 

錢 妙玲さん(以下:錢) 開催する人や団体が違うんですよ。

 

まず、一つはもともと古くから日本で暮らす台湾人を中心とした華僑団体。さらに、台湾人の親や親戚を持つ日本生まれの新しい華僑団体。さらに、私のように台湾で育ちながら、日本に移住をするようになった台湾人団体など……。

 

皆それぞれが台湾の素晴らしさを日本に広めたい、知って欲しいという思いで各イベントを始めていますから、同じ思いを持つ弊社もできる限り協力させていただきたいと思い、ほとんどのイベントに後援で参加させていただいています。

 

――とは言っても、来る人がいなかったらイベントをやっても意味がないので、各フェスでもかなりの集客があるわけですよね。

 

 はい。ただ、このことで商売になるかと言うと、別問題ですね。儲かるかどうかということで言えば、儲かりません(笑)。弊社もボランティア的な一員として参加させていただき、儲けはほとんどありません。

 

おそらく、他のグループがやられているイベントも同じでしょう。皆さん、キツいなかでイベントをやっています。

 

↑「台湾観光フェア@東京スカイツリー」(5月17日~20日)の様子

 

↑上野で開催された「台湾フェスティバル™TOKYO」(6月21日~24日)の様子。こちらは新しく来た台湾人団体、一般社団法人台湾を愛する会(愛臺灣會)主催のイベントです

 

↑7月28日~29日に代々木公園で開催予定の「台湾フェスタ2018」。写真は昨年の様子ですが、古くから日本で暮らす日本華商総会が中心になって開催されるものだそうです

 

↑7月28日~29日に札幌で開催予定の「日本台湾祭りin北海道」。錢さんが代表を務める台日文化交流基金主催によるもの

 

↑9月22日~23日に上野で開催予定の「日本台湾祭りin上野」。写真は昨年のものですが、錢さんが代表を務める台日文化交流基金主催によるもの

 

 

台湾の食、グルメだけでない真の文化交流を

――しかし、それだけ採算が合わないなかで、どうしてこれだけ多くのイベントが開催されるのでしょうか?

 

 まず「自分たちの文化を日本人に知って欲しい」というのが一番ですね。特に華僑はボランティアをしてでも、こういった活動をすることは当たり前の慣習ですので、利益を前提としては考えてる人はいないと思いますし、そうでなければやっていないと思います。

 

――近年の台湾ブームで、日本人旅行者も増えて、より台湾の文化は親しまれるようになったと思いますが、まだまだ道半ばですか?

 

 いまの台湾ブームの大半は「食べ物がおいしい」というところでの支持だと思います。

 

でも、他の外国のブームもそうでしたが、食べ物から入ったブームは、いつか必ず飽きられます。どれだけおいしい食べ物だったとしても毎日食べていたら「別のものを食べよう」となりますからね。つまり、食べ物を食べる口というものはすぐに裏切るんです。

 

そうではなく、台湾には食事だけでなくさまざまな文化、魅力があります。文化を好きになったら、必ず心のなかに残りますから、そうは簡単に離れない。ですから食べ物だけではなくて、台湾の文化をもっと体験して欲しいです。もちろん、食べ物の出店も多く出店しますが、それだけじゃなくて文化を体験できるコーナーも数多く用意するのが私たちのイベントですね。詳しいことはまだ言えませんが、特に9月の「日本台湾祭りin上野」は文化体験ブースに力を注ぎたいと思っています。

 

 

相互交流をするため、台北でも同時開催するフェス

――一方、6月には台北でも「日本台湾祭り2018in台北」という連動したイベントがあったようですね。

 

 これも私たちが主催しているものです。要は日本国内で台湾のイベントをやっているだけでは真の文化交流にはならない。ほぼ同時期に、今度は台湾でも日本の文化をアピールすることで、本当の意味で文化の行き来ができるんじゃないかと思うんです。つまり、「台湾も大事だけど、日本も大事。どちらも同じように魅力があり、それぞれの良い文化を知りましょう」というものです。

 

ですから単に「台湾祭り」ではなく、「日本台湾祭り」と銘打っているのが、私たちのイベントですね。

 

↑6月22日~23日に台北の観光スポットの一つ、迪化街の永楽市場前で開催された「日本台湾祭り2018 in 台北」。おおいに盛り上がったそうです

 

 

今年のイベントの成果こそが、台湾ブームの分かれ道!?

――現在の日本における台湾ブームに対し、知人の台湾人に「どう思うか?」と尋ねたところ「どうせすぐ終わる」と意外とクールな意見がありました。

 

 確かにそういう意見もあるかもしれないですね。やはり、ブームと言っても、先ほど言ったような食事とかグルメのことだけではすぐにブームは終わるでしょう。そういう意味では、今年のこれらのイベントの成果によって、ブームが続くかどうかは分かれ道のような気がしますね。本物の支持となるか、ただのブームで終わるのか……。

 

――それでも、10年ほど前では考えられないくらい台湾支持をする人が増えたことは事実です。この最たる理由は何だったと考えますか?

 

 やっぱり東日本大震災のときの、台湾人からの義援金ですね。約280億円という「どこから捻出したんだろう」という大金が台湾人たちから被災地に送られました。これは計算された金額の総計ですから、もしかしたらもう少しあるかもしれません。台湾人の私から見ても、これだけの額が集まったのは異常というか、信じがたい数字でした。でも、それだけ台湾人は日本人のことを強く思っているわけです。

 

一方、日本人の素晴らしいところは、こういったことを忘れることなく、いつまでも義理堅く思っていてくれるところです。私が台湾人だと知ると、いまだにお礼を言ってくれる日本人の方がいます。「大震災のときは本当にありがとうございました」と。これは本当に素晴らしいところです。他の外国ではそこまで思ってもらえることはないと思います。

 

結果的に、こういったやり取りがあり、日本人の多くが台湾に向いてくれるようになり、今の台湾ブームにも繋がったんじゃないかと思います。でも、こんなに素晴らしい交流があるのに、単にブームだけで終わらせるのはもったいない。せっかく台湾と日本が近くなれた良い機会ですから、さらに「お互いの文化交流もしていきたい」というのが、これらイベントが増えている理由だと思います。

 

台湾に行ったことがある方もない方も、ぜひ多くの方にお越しいただければうれしいですね。

 

 

台湾、日本の真の文化交流は果たしてどうなるでしょうか? その答えは各イベントにあるかもしれません。台湾に旅行に行ったことがある方はもちろん、まだ台湾のことをよく知らない方もぜひこれらのイベントに足を運んでみてください!