少子高齢化…。ヤバいと思っていても、自分の生活で今のところ何も困ったことがないから、実感がない! しかし、平成52年(今から22年後)には、15歳未満の人口は全体の10%、65歳以上の人口が36%になると言われています(公益社団法人 保険生命文化センターの調査データ)。これを言われてもまだピンと来ませんが、最新の統計データは、
・15歳以下は1571万人で、12.4%
・65歳以上は3461万人で、27.3%
なので、今以上に若い世代の人口が減少し、高齢者年齢が10%も増加する予測になっているのです。
暗い将来ばかりを考えてしまいそうですが、この状況をうまく活用できる方法はないのかなー? と、そんなことを考えている時に見つけた『子どもと高齢者ふれあいのコツ ~介護施設や園ですぐできる~』(本田恵子、岩谷由起、学研ココファングループ多世代交流委員会・著/学研プラス・刊)には、高齢者と子どもが交流することで豊かな保育・教育に役立つという研究結果が書かれてありました。そこで今回は、こちらの研究で紹介されていた「多世代交流」についてご紹介させていただきます。
多世代交流ってなに?
「多世代交流」とは、まちづくりや地域コミュニティが連携しながら、同世代の人だけの交流ではなく、様々な世代と交流をしていくことで、孤独な生活がなくなり、教育面でも役立つと期待されているものです。最近では、核家族が増えて来たことによって、妊婦さんや新米ママさんの孤独も問題になっていることもあるようです。
今回ご紹介するのは、3〜5歳の幼児と高齢者との交流をする「多世代交流」では、実際にどのような効果が期待されているのでしょうか?
1)感情の分化が促されるのではないか
2)思いやりの気持ちや見通しをつける力が育つのではないか
3)コミュニケーションの力が育つのではないか
(『子どもと高齢者ふれあいのコツ ~介護施設や園ですぐできる~』より引用)
では、どのような方法が検証されたのかご紹介していきましょう!
3歳は、「同化・調節」を学ぶ時期
3歳は「なぜなぜ期」とも言われており、世の中の様々なことに疑問を感じる時期なんだそうです。そんな時にどんなスキルを身につけておくと良いのでしょうか? 大人は当たり前に「同化・調節」というコミュニケーションスキルを持っていますが、3歳の頃から学んでいくのですね。例えば、汗をかいている人に「暑いですよね、しっかり水分取ってくださいね」とお話ししたり、声が聞こえにくそうな人には大きな声でゆっくり話をするなど「空気を読む」部分は、3歳から身につけていくんですね!
3歳児は、この「同化・調節」を学んでいく時期で、脳の前頭葉が発達し、思考力が育ち始める時期と言えます。しかし、家でのコミュニケーションでは、この「同化・調節」を使う必要がほとんどありません。
(『子どもと高齢者ふれあいのコツ ~介護施設や園ですぐできる~』より引用)
自宅だと、お母さんが「はい、これね」と空気を読んで子どもの考えていることを汲み取ってくれますが、初めてお話しする人とはそうはいきません。そこでおすすめなのが「糸電話」を使った高齢者とのコミュニケーションなんだとか。
糸電話で、コミュニケーションスキルがアップ!
3歳児と高齢者が糸電話で会話をすることで、子どもたちのコミュニケーションスキルがアップしたというのです。やり方としては、二人ひと組となって、糸電話で会話をするだけ。最初のうちは、あらかじめ決めていた質問を子どもが高齢者に投げかけ答える。その後、高齢者に質問をしてもらって子どもが答えるというものだったそうです。
何も知らない子どもに「糸電話」を渡しても「なにこれ?」となってしまうので、このコミュニケーションをやる前に、以下の3つを決めておくのがポイントです。
1.子どもが遊びこんだモノで交流する
2.手作りの玩具の場合、愛着を持たせる工夫をする
3.会話はある程度、パターンを決めておく
(『子どもと高齢者ふれあいのコツ ~介護施設や園ですぐできる~』より引用)
これは、ご家庭でもできることだと思います。例えば、これからお盆ですので、事前に家庭で「糸電話」を作っておいてお母さんと遊ぶようにしておくと、あまり普段あうことがない親戚の方とのコミュニケーションツールとして役立ってくれると思いますよ!
4歳は、自尊心が高まる時期
4歳は、手指も器用になってくる時期。そんな時に、高齢者と子どもが交流するツールは「折り紙」などの昔遊びが良いそうです。簡単にできる折り紙に、目をつけたり色を塗ったりを、高齢者と一緒に進められるとより楽しくできるそうです。
4歳児になると、自尊心が高まってきますので、自己表現の中で、「これできたよ」と相手に見せて、ほめてもらいたくなります。それと同時に競争心も出てきます。自分のほうがうまくできたと示したくなってきて、勝ち負けにこだわる気持ちも出てきます。そういう時期に、よりよい形で競い合いになるようなプログラムにしておくと、交流は盛り上がるでしょう。
(『子どもと高齢者ふれあいのコツ ~介護施設や園ですぐできる~』より引用)
これは家庭の中でもできるかもしれませんね!
4歳よりも上の兄弟がいらっしゃる家庭だったら、「一緒に折り紙をつくってね」とやらせてみるのもいいかも。ただ、自尊心が高まってるため喧嘩になることもあるかもしれませんので、ある程度のルールは設けたいですね。
5歳は、「あの人は元気かなー」と思い出せる時期
5歳になると、記憶をしっかり保存できる時期になるため、「●●ちゃん元気かな?」と自宅に戻っても、そこに本人がいなくても記憶の中にいる●●ちゃんを思い出して話をすることができるようになるそうです。
定期的に多世代交流の機会を増やすことで、「あのおばあちゃんのために▲▲を作ってあげよう」などができるようになるとのこと。
多世代交流活動の相手である高齢者が、自分達が行くといつも待っていてくれる。その人達が、自分達の発想を「いいね」「おもしろいね」といって受け止めてくれる。そういう体験も、自発的にアイデアや意見を出すことにプラスに働いたのだと思います。
(『子どもと高齢者ふれあいのコツ ~介護施設や園ですぐできる~』より引用)
これまで、多世代交流の「子ども」について主に触れてきましたが、もちろん高齢者にもよい効果があります。脳機能の低下を防ぐことができたり、孤独に寂しい時間が減らすことができるので、イキイキとした老後生活を過ごせることが期待されています。こじんまりとした生活環境が増えてきた昨今ですので、今からできる「多世代交流」に積極的に参画し、明るい少子高齢化を迎えられるようになりたいですね!
【書籍紹介】
子どもと高齢者ふれあいのコツ ~介護施設や園ですぐできる~
著者:本田恵子、岩谷由起、学研ココファングループ多世代交流委員会
発行:学研プラス
早稲田大学教育学部・本田恵子教授らとの共同研究で、「幼児の社会性を伸ばす」高齢者との交流プログラムが明らかに! 効果があったプログラムを紹介し、介護施設や園に有益なノウハウを提供する。