ライフスタイル
2018/8/17 20:30

自衛隊の訓練中は脳内で「ガメラ2」を再生? ――激レアさんの自衛隊での日常がレアすぎる。

フランス外人部隊への留学(?)と意外過ぎる帰国のきっかけ

 

そして、大仏見さんはここからさらなる驚異の選択をする。自衛隊を辞め、フランスの外人部隊への入隊を決心したのだ。

 

「自衛隊は、軍隊の色が薄いんです。本分は災害派遣で、周りの地域の人たちを助けることに重きを置いています。『本当の軍隊とは?』ってちょっと興味を持ち始めて、自衛隊とはやっぱり違うなと思いました。じゃあ自分が行ける軍隊ってなんだろうって考えていた時、同僚がフランスの外人部隊に行きたいと言っていて、フランス大使館から資料を取り寄せていたんです。それを見て、フランス語も学べるし行ってみようかなという気になりました」

 

そして、親には“留学”と言ってフランスに渡ってしまった。入隊した最初の4か月の訓練は自衛隊とは種類の違った辛さがあったという。

 

「体力というよりもメンタル面ですね。精神的にかなり追いつめられます。上官に罵倒されたり、ちょっと何かできないと仲間に笑われたりとか。お互いが協力し合うというスタイルではありません。自分がいかに強くなるかが大切な世界でした。自衛隊では、いわゆる共存共栄で仲間を大事にするという世界で生きてきたので、ギャップのすごさに悩まされましたね」

 

同僚は旧フランス領のアフリカ諸国の人たちが多かった。日本人も中国人もいたが、それぞれ目的は違ったようだ。

 

「割合としては、8割がアフリカから来た人たちです。アフリカ諸国とフランスの物価にものすごい差があるんです。軍は、正式には5年間いなければなりません。彼らは5年働くと、国に帰ったら家が2軒建つそうです。

 

外人部隊は5年間続けて辞めることができて、その時に永住権を手に入れられるんです。この永住権が目当ての人も多いですね。永住権を手に入れたら家族を呼び寄せて、フランスで商売を始めるんです。だから、そういう人は最初の4か月を終わると、なるべく体力を使わない部署である糧食班(食事を作る係)への配属を希望するんです

 

そして、外人部隊でも違和感が生まれる瞬間が訪れた。

 

「私が配属された駐屯地は、コートジボワールの大統領選挙に関連する平和維持活動のために多くの兵士が派遣された後でした。基地はほとんどガラガラで、やることと言ったら本当に雑用ばかりで、門番とか、偉い人が食事をするレストランのボーイもさせられました」

 

やがて疑問が生まれ、大きく膨れ上がっていく。

 

「基本的にはバイトみたいなことをさせられたので、これは何か違うな、と思ったんです。もちろん戦争したかったわけじゃありませんが…。で、そのゆるさもあって、こんな生活だったら日本に帰ったほうがいいんじゃないかなと思ったんです」

 

次のような情景、ちょっと想像してみていただきたい。もちろん舞台はフランスだ。

 

「ある週末、駐屯地の中を歩いていたら、どこかから『千と千尋の神隠し』のテーマが聞こえてきたんです。「呼んでいる~」って聞こえてきて、「フワァァー!! 誰が聞いてんのこれ?!」ってなりました。これは日本に帰れということに違いないと思ったんです。日本に帰って勉強し直して、やりたかったことをやらなきゃだめだ。そう言われているような気がしました」

 

大仏見さんは日本への帰国を決意して外人部隊を脱走する。その後、自衛隊とフランス外人部隊で貯めたお金でアメリカへ短期留学~日本に戻って専門学校へ入学と、振れ幅がありすぎる人生を送っていまに至っている。

 

 

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