ライフスタイル
2018/9/29 16:00

「終活」はいくらかかる? いま知らないと将来困る「老後」のお金事情(前編)

3: 意外とかからない!? 「相続税」の仕組み

――相続には税金もかかってくるわけですよね?

 

木下 家も金銭もすべて財産価値がありますので、相続した場合、こういったものにはすべて税金がかかってきます。

 

相続税をわかりやすく説明させていただくと、親が亡くなり、その財産が残された家族に移ると必ず税収の対象になります。相続税率は、課税遺産総額に応じて適用される仕組み(最高税率は55%)。

 

例えば、親が3000万円を残して亡くなったとします。相続税は、まず財産を取得した人ごとに課税価格を計算します。次に各人の課税価格を足して、課税価格の合計額を算出。しかし、相続税には基礎控除額というものがあります。この金額を出す式は「3000万円+600万円×法定相続人の数」。課税価格の合計額からこの基礎控除額を引いた額が課税遺産総額となります。

 

もし、法定相続人が3人いれば、基礎控除額は4800万円となりますが、課税価格の合計額が4800万円を超えなければ、課税遺産総額はゼロとなるので、相続税の申告と納税は不要となります(下の図を参照)。

 

相続税試算:3000万円(一次相続)

合計配偶者長男次男
課税価格30,000,00015,000,0007,500,0007,500,000
基礎控除48,000,000
課税遺産総額0000
相続税総額0
各人の相続税額
配偶者の税額軽減0
相続税額0000
各人の実効税率0%0%0%

(単位:円)

(前提)

1. 父(一次相続)で保有財産3000万円

2. 法定相続分で相続する

 

相続税試算:6000万円(一次相続)

合計配偶者長男次男
課税価格60,000,00030,000,00015,000,00015,000,000
基礎控除48,000,000
課税遺産総額12,000,0006,000,0003,000,0003,000,000
相続税総額1,200,000600,000300,000300,000
各人の相続税額600,000300,000300,000
配偶者の税額軽減-600,000
相続税額600,0000300,000300,000
各人の実効税率0%2%2%

(単位:円)

(前提)

1. 父(一次相続)で保有財産6000万円

2. 法定相続分で相続する

※2つの図のなかの試算は木下勇人さんが行った。

 

ただ、3000万円もの現金を残して亡くなるというケースは一般的に少ないほうですから、ここで税金のことが問題となってくる家族はさほどいないでしょう。しかし、これより多い現金があった場合、つまり、老後資金では使い切らずに相続が発生すると想定される場合には「生前贈与」をしておいた方が節税の観点からは良い場合もあります(上の図を参照)。いわゆる「相続税対策」と呼ばれるものですね。

 

4: 大金持ちでないとリスクが多い「生前贈与」

――つまり、誰でも生前贈与をすれば良いということではないんですか?

 

木下 そうです。ここは多くの方たちが誤解されるところですが、生前贈与には一長一短があります

↑国税庁 平成29年分の贈与税の確定申告状況

 

生前贈与に対する税金は贈与税と呼ばれ、個人から財産を無償(タダ)でもらったときにかかります。日本では4年前まで贈与税の申告納税額が増加していましたが、この数年間は減少傾向。わざわざ納税をしてまで贈与する人は減っています(上の図を参照)。ただし、贈与税の基礎控除が110万円ですので、もらう側1人あたり年間110万円までは納税なしの非課税でお金を受け取れます。

 

しかし、実際には贈与をもらうほうはお金を使ってしまうことが多いんですよね。自ら働いて稼いだお金ではないからでしょう。また、贈与する側にとっても、毎年110万円をあげ続けると結構な金額になりますから、長生きして老後破綻に陥るケースもあります。

 

生前贈与をしても、まだまだ現金が残っている方を除けば、無闇に使うであろう家族にお金を渡すことは大きなリスクをはらんでいるんですね

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