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2019/4/6 21:00

クルマ業界のような大転換!? ベビーカーにも「ディスラプション」が来る予感

3月20日、大手ベビー用品メーカーのピジョンは、未来のベビーカーについて考える学生コンテスト「ベビーカソン」(ベビーカーとハッカソンをかけ合わせた造語)を東京・神田で開催しました。IoTを導入することで育児環境をよりよくしたいと考えるピジョンが、「赤ちゃんやパパ・ママの毎日をもっと快適に楽しくするIoTを活用したベビーカー」をテーマに学生たちからアイデアを募集。イベントに参加した5大学の学生たちが「工学」という視点から斬新な考えを披露しました。これからベビーカーはどう変わっていくのか? その可能性が垣間見えました。

↑参加校はお茶の水女子大学、湘南工科大学、千葉工業大学、東京工業大学、日本大学。タレントの藤本美貴さんとIoT NEWS代表・小泉耕二さんがゲスト審査員を務めました

 

最先端テクノロジーを使ってベビーカーにディスラプションを起こすとしたら、どうすればいいでしょうか? ベビーカーの前提条件から考える必要があります。このコンテストに参加した日本大学のチームは「ベビーのカー、でいいの?」という問いを設定。3つの重要な点を指摘しています。

 

  • 「みんな買う、でいいの?ベビーカーの使用期間は一般的に2〜3年程度ですが、パパママのなかにはベビーカーを家族や友人から使わなくなったものをいただき、使う人もいます。ベビーカーは一家に一台、所有する必要が本当にあるのでしょうか?

 

  • 「赤ちゃんだけ、でいいの?公共の交通機関で邪魔者扱いされてしまいがちなベビーカー。その原因は赤ちゃんしか使わないことにあると日大チームは指摘。いろんなユーザーにとってメリットがある道具にならないのでしょうか?

 

  • 「移動だけ、でいいの?ベビーカーは赤ちゃんを運ぶためだけの道具でいいのか、と疑問を呈する日大チーム。移動以外の機能を持たせられないのでしょうか?

 

これらをもとに日大は「公共交通インフラとしてのモビリティ」「誰もが使えるモビリティ」「メディアとしてのモビリティ」という3つのコンセプトを作り、交通機関や医療機関、商業・公共施設など、様々な場所に応じたベビーカーの新しい在り方を社会的な影響も含めて説明しました。

↑プレゼンを行う日本大学のメンバー

 

例えば、医療機関。赤ちゃんがシートに座りながら検診などを受けることができるベビーカーがあれば、不用意な感染症の予防や子どもや親の不安やストレスの軽減に繋がるだろうと日大チームは言います。病院が「待合室のないクリニック」になるんですね。

 

また、公園ではベビーカーは運動の補助器具になります。走行距離に応じたマイルが貯まることでモチベーションの維持向上に貢献するという設計。ユーザーにとってお得なこのアイデアは実用的ですよね。

 

このような革新的なアイデアのなかでは「共有」がポイントとなります。近年、クルマ業界でカーシェアやライドシェアといった「サービスとしてのクルマ」が発展してきているように、ベビーカーにも同じことが起こせると、ベビーカソンに挑んだ若きエンジニアたちの一部は考えていました。

 

このコンテストで最優秀賞に輝いた東京工業大学のチームも、好きなときに好きな場所で好きな車種を借りる(または返す)ことができる「ベビーカーシェアリングサービス」を提案しました。東工大はその先行事例としてベルギーで2014年に誕生した「Buggy Booker」を紹介。最近では渋谷区でもベビーカーのシェアリングサービスの実証実験が行われていましたが、ベビーカーでもクルマ業界と同じ現象が見られるんです。

しかし、未来のベビーカーを考えるうえで大切なのは、モノの進化だけではありません。IoTやAIは便利な反面、それらに頼りすぎると危険です。この点をきちんと指摘したのが千葉工業大学のチーム。IoTの導入によって感情が希薄化する恐れがあると言います。

 

例えば、ベビーカーを使って散歩に出かけるとき、AIの分析だけでルートや予定を立てると、その分達成感が薄くなることが考えられます。その理由は、親が子どもの好きなものや興味をきちんと考えないで、機械任せに散歩コースを決めたから。このような考えから、千葉工業大は「親が子どもとの一体感を感じられる形」を提案しました。そのなかでは親が子どもの視点に立って考えることがポイントになっています。

 

千葉工業大の指摘は、今回のコンテストで「自動運転」が出てこなかった理由のひとつかもしれません。クルマ業界の大きなトレンドのひとつである自動運転。劇的な変化を起こすなら、そんな機能を搭載するベビーカーのことを想像してみたっていいかもしれません。大切な子どもを乗せたベビーカーから手を離すなんて危険だと誰もが思いますが、クルマは明らかにその方向に向かっています。では、ベビーカーは?

テクノロジーの進化は、いつも新しいものに対する不安や拒否感を伴います。例えば、クルマのシートベルトが1950年代後半に義務化されたとき、当時の人々はそれに反対しました。しかし、今日ではシートベルトを着けることに誰も反対しません。シートベルトの安全性が社会で広く理解されたからです。クルマとの比較は少し強引かもしれませんが、このような歴史はベビーカーの技術革新にとっても示唆的でしょう。

 

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会場にいた人たちにいろいろな気付きを与えた今回のコンテスト。ピジョン開発本部の主任研究員である加藤義之さんは、ベビーカソンで「忘れていたものに気がついた」と述べていました。最先端テクノロジーを搭載した革新的なベビーカーが誕生するのは、まだ先のことかもしれません。しかし、ベビーカーにも地殻変動が起きる予感がします。