インターネット環境とパソコンさえあれば、どこでも仕事ができる時代。“働き方改革”の推進で雇用の多様化が進み、テレワークに代表されるような、毎日オフィスへ出社する以外の働き方が広まりつつあります。その影響もあって、カフェなどフリーWi-Fiが使える公共の場で、パソコンを広げて仕事をしている人を見かける機会が増えました。
このように自宅やカフェで仕事ができることで、“痛勤”のわずらわしさから解放されたり、時間を効率よく使うことができるようになったりとさまざまなメリットがある一方で、自宅では家事や育児、また趣味の誘惑に気を取られて仕事に集中できなかったり、カフェでは自由に電話ができなかったり、周りのおしゃべりで気が散ったり……といったデメリットも。そんな悩みを解決してくれる場所が、「コワーキングスペース」です。
今回、このコワーキングスペースの魅力や活用術について、全国20カ所でコワーキングスペースを運営しているfabbitの代表取締役社長・田中保成さんに教えていただきました。
「コワーキング」とは?
コワーキング(CO-WORKING)とは、「CO=共同」で「WORKING=働く」こと。個人事業主や起業家、在宅勤務が許可されている会社員、ノマドワーカーなど、場所の縛りがない環境で働いている人のワークスタイルを言います。
2005年頃のサンフランシスコを中心に生まれ、日本では2010年頃から、徐々に知られるようになってきました。コワーキングを支えるコワーキングスペースは、月に数万円で確保できます。月額料金での利用以外にも、「ドロップイン」という1時間あたり数百円から利用できる方法もあるので、好きな場所や時間帯で効率よく仕事を進めることができます。
「シェアオフィス」と何が違う?
大手不動産企業が続々と参入し、近年、注目を集めている「シェアオフィス」とは、どう違うのでしょうか?
「シェアオフィスというのは、複数の企業がそれぞれの個室を持ちながらオフィスを共有するのに対し、コワーキングスペースは仕切りのないスペースの中で、自分のパソコンをセキュリティの高いWi-Fiに接続しながら仕事を進められる場所。個人向けのワークスペースでありながら、コピーやファクスなどの複合機が設置されているので、オフィスで働いているような感覚で、それらの機器が使えます。
施設のサービス内容によりますが、一般的にはコーヒーなどの飲料は、飲みたいときに何杯でもおかわり自由。予約を取れば個室の会議室が使えるので、来客対応時も安心。法人登記や郵便物の受け取りサービスを使えば、自宅とワークスペースを完全に切り離すことができます」(fabbit 代表取締役社長 田中保成さん、以下同)
人との“つながり”を求めて活用も
カフェとオフィスの間のような場所で、効率よく仕事が進められるという魅力以外にも、コワーキングスペースを使うメリットがあるようです。
「コワーキングスペースの利点は、オフィスを持たずに仕事をしている人が、オフィス機能を使いながらも、遊牧民のような自由スタイルで働けます。そして、企業のオフィスとは明らかに違うのが、隣にどんな業種の人が座るのか、まったくわからないこと。偶然近くに座って仕事をした人との出会いが、新たなビジネスチャンスにつながったり、人脈を広げられたりすることがあります。そのような出会いを期待してコワーキングスペースを活用する人も増えています」
コワーキングスペースの市場規模
総合不動産サービス大手JLLの東京のコワーキングスペース市場に関する調査結果によると、2018年6月末時点で、都内で新規開設したコワーキングスペースの床面積は3万2624㎡と、2017年末時点での同調査結果の1万6902㎡と比べて、約2倍に増えています。コワーキングスペースの新設は2017年から急激に規模が拡大都心を中心にしながらも、全国のあらゆる市町村で増加しているのです。人口の減少が進む地方自治体で新たにビジネスを始める人をサポートしたり、新しいビジネスで市場開拓フェーズにある企業や事業などの「スタートアップ」を支援したりできる場所としても期待されます。例えばfabbitではこんな仕組みも。
「fabbitは利用者同士のマッチングをサポートするプラットフォームの役割に力を注いでいます。利用者同士が名刺交換をする機会や交流イベントを開き、有名上場企業の社長やスタートアップ起業家、海外の起業家や学生が同じ場所に集える機会を設け、人脈の広がりや新しい事業の誕生をサポートしています。
これからの時代は、働き方の多様性がさらに進んでいくので、会社員でありながらも、テレワークの日は自宅近くのコワーキングスペースで仕事をしたり、新規プロジェクトの企画ヒントを得るために、コワーキングスペースでの交流を生かしたりする動きも増えてくるでしょう」
ターゲットをしぼって展開
コワーキングスペースによっては、起業家専用やスタートアップ向けなど、ターゲットを絞っているスペースもあります。
「fabbitのコワーキングスペースは、全国各地でスペースやサービスの内容に大きな違いはなく、フリー席、個室の固定席、貸し会議室などがあります。レンタルオフィスやシェアオフィスを併設している場所もあり、利用形態や地域により料金が異なります。しかし、東京・青山のスペースのみ、女性向けのサービスを充実させ、女性が利用しやすい場づくりを強化しています。青山というロケーションは、ファッションブランドや美容系など、女性が活躍している業種が多く、それらの分野でコワーカーとして働く人が集まってくれるような場所にしたかったためです。
女性向けに用意しているサービスとして、ヒールで歩いても負担がないように全面に絨毯を敷き、ブランケットやスリッパの無料貸し出しサービスや髪留めなどの備品も用意しています。フリースペース内にはキッズスペースを設け、お子さん連れで利用することもできます。女性起業家向けのアフタヌーンティーパーティや、ウォーキングレッスン、アーユルヴェーダを学ぶ会など、女性を対象にしたイベントを積極的に開催しています」
fabbit青山
【Information】
・月額会員料金:1万8000円(フリー席)、5万円(固定席) ※そのほか、料金設定は多数あり
・入会金:2万円
・ドロップインの料金:1日 1800円
・電話番号:0120-753-361
・営業時間:9:00〜18:00 ※月額会員は全日24時間利用可能
・所在地:東京都港区赤坂8-4-14 青山タワープレイス8F
・アクセス:東京メトロ「青山一丁目」駅より徒歩約3分
https://fabbit.co.jp/facility/aoyama/
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都内の注目コワーキングスペース 4選
ほかには、どのようなコワーキングスペースに注目が集まっているのでしょうか。都内で人気の高いコワーキングスペースの一例を紹介します。
Albo
女性向けセミナーやイベントスペースとしての活用でも人気です。
【Information】
・月額会員料金:9000円 ※そのほか、ロッカー、ポスト、登記費用などの設定あり
・入会金:1万円
・ドロップインの料金:1日 2000円
・電話番号:03-6272-3320
・営業時間:8:00〜23:00 ※ドロップイン(スポット利用)は10:00〜17:00
・所在地:東京都文京区本郷4丁目2-12 芙蓉堂第3ビル2F/3F
・アクセス:東京メトロ「本郷三丁目」駅より徒歩約2分
https://albo.tokyo
スタディラウンジ
黙々と仕事や勉強をしたい人向けの“自習室”として最適です。
【Information】
・月額会員料金:レギュラー:9800円(平日16:00〜23:00、休日7:00〜23:00)※ほかにも多数の料金設定あり
・入会金:9800円
・ドロップインの料金:1時間 600円、3時間 1500円、5〜7時間 2500円。30分追加ごとに250円加算。
・電話番号:03-6450-5817
・営業時間:7:00〜23:00
・所在地:東京都渋谷区渋谷3-28-8 第三久我屋ビル8F
・アクセス:JR「渋谷」駅の新南口より徒歩約1分
https://studylounge.jp
Hatch Cowork +KIDs
コワーカーが子連れ出社できるスペースです。
【Information】
・月額会員料金:マンスリープラン 2万円、子育て応援割・チーム応援割プラン 1万5000円(平日10:00〜18:00) ※託児や会社登記、会議室利用、レンタルロッカーなどのオプション料金あり
・入会金:1万円
・ドロップインの料金:1日 2000円 ※月会員のゲストとしてのみ利用可能
・電話番号:03-3479-0073
・営業時間:10:00〜18:00 ※マンスリープラン会員は全日24時間利用可能
・所在地:東京都港区赤坂4-9-25 新東洋赤坂ビル 5階
・アクセス:地下鉄「赤坂見附」駅より徒歩約6分
https://hatchcowork.com
いいオフィス上野
コワーカー同士で語り合えるバーがあります。
【Information】
・月額会員料金:プレミアム会員 2万5000円(365日24時間、グループ店舗も利用可能:営業時間は店舗による)、オープン会員 2万円(365日24時間)、ナイト&ホリデー会員:1万2000円(平日 18:00〜24:00、土日祝 24時間)、平日ナイト会員 8000円(平日 18:00〜24:00)、個室 7万〜8万円(365日24時間)
・入会金:1万2000円
・ドロップインの料金:2時間 500円(10:00〜18:00)、1日 2000円(10:00〜18:00)
・電話番号:03-5812-4433
・営業時間:10:00〜18:00 ※プレミアム、オープン会員は全日24時間利用可能
・所在地:東京都台東区小島2-20-11
・アクセス:都営大江戸線/つくばエクスプレス線「新御徒町」駅より徒歩1分
銀座線「稲荷町」駅より徒歩約7分 JR「御徒町」駅より徒歩約9分
https://ii-office.jp/ueno-by-lig/
200カ所以上のスペースが定額で使い放題になるサービスも!
その日の気分や仕事内容でコワーキングスペースを選びたいときには、ドロップインスタイルでの利用がおすすめですが、利用頻度が高い場合は割高になってしまいます。その場合は、日経が提供している「オフィスパス」制度を利用するのもひとつの方法です。
これは、月額1万4980円で首都圏にある200カ所以上もの提携オフィスのコワーキングスペースの自由席を何度でも利用できる制度で、現在は首都圏を中心にしたサービスですが、コワーキングスペースの増加により、利用可能な場所や地域の拡大が期待できます。
※オフィスパスで利用できるコワーキングスペースはこちらから
https://officepass.nikkei.jp/user/top.php
2018年6月に働き方改革関連法が成立し、雇用形態や勤務時間などさまざまなしがらみを見直し、生産性を高める臨機応変な働き方が認められるようになってきました。コワーキングスペースへのニーズはさらに加速度的に高まっていくことでしょう。運営会社により、コワーキングスペースの雰囲気や料金設定はさまざまなので、利用目的や好みに合う場所を探し出すのも楽しそうです。
※表示された料金はすべて税抜き価格です。
【プロフィール】
fabbit代表取締役社長 / 田中保成
ハーバード大学経営大学院修了(MBA取得) 、ボストン・コンサルティング・グループなど経て fabbit株式会社の代表取締役に就任。政府の提唱する「日本再興戦略2016」の趣旨に賛同し、「スタートアップ企業」や「ベンチャー企業」、「中小企業の第二創業」の支援や、それらの企業と大手企業とのビジネスマッチングを推進する施設として「fabbit」を運営している。
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