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2016/7/20 15:00

【先人のライフハック】電気冷蔵庫もエアコンもなかった明治・大正期の人は夏をどう乗り切っていたのか!?

買えない本の意味ない(!?)書評
~国会図書館デジタルコレクションで見つけた素晴らしき一冊~ 第9回

 

いよいよ夏本番。連日うだるような暑さが続きうんざりだが、かといって冷房がガンガン入った部屋にずっといるとノドも乾燥するし、体もだるくなる……。夏をいかに元気に乗り切るかというのは、なかなかの難題だ。

 

では、電気冷蔵庫(国産第1号は昭和5年に発売)も普及しておらず、ルームエアコン(国産第1号は昭和33年発売)もまったくなかった明治・大正期、日本人はどのように夏の暑さと向き合っていたのだろうか。

 

今回も、著作権切れの本が閲覧できる国会図書館デジタルコレクションの検索窓に、「避暑」「夏」「暑中」などと入力してみた。それぞれ方向性の違う暑さ対策本が3冊見つかったので、紹介していきたい。

 

■1冊目:「夏之家庭」

最大の避暑対策は○!

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まず1冊目は、「夏之家庭」(明治27年)。近代日本を代表するジャーナリスト・徳富蘇峰が設立した出版社・民友社の「家庭叢書」というレーベルの第2巻で、家庭で夏を涼しく過ごすためのマニュアル本といった感じだ。明治時代のお知恵を拝借、と期待してページを開いたが……。

 

「葦戸または竹すだれをもってし、家内を快活となし、十分風通しをよくし空気を新陳代謝せしめ、戸口より台所に至るまですべての室内を清潔に掃除し、雑巾掛けを怠らず……」(※一部仮名遣いなどを修正)

 

とにかく部屋を掃除して風が通るようにしなさいというのは、至極ごもっとも。でも、この片付けが面倒なんだよなあ……。なお、本書ではコレラなどの流行病を防ぐ意味でも、夏は便所や台所の掃除が欠かせないと説いている。

 

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ほかにも、「労働の快楽:一生懸命働いて、夜風呂に入って涼めばそれが最高」とか、「早起きの快楽:早朝に草花に水をやり、散歩すれば気分も爽快。早起きの習慣を実行実践したまえ」とか、こちらが謝りたくなるほど真面目。

 

ちょっと面白かったのは、夏の食事について。夏バテを防ぐために、精のつくものを食べなさい、というのかと思いきや……。

 

「脂肪多き鳥獣肉よりも淡白なる魚肉、蔬菜(野菜)を喰らい、ときどき果実の汁液を吸うは、胃の消化力を助けるのみならず、大いに避暑の方法を得るものなり」

 

「日本に来たれる西洋人らが小暑にあいて大いにその苦悩を訴うるが如きは……常に鳥獣肉をくらう濃厚的の飲食に帰する」

 

夏は渡り鳥は寒帯に飛び、鹿やイノシシは北の山へ行く。旬じゃない肉類よりも、夏によく取れる魚や野菜を食べるべし、とも記されている。なるほど、これは説得力がある。

 

ちなみに、避暑のマストアイテム・ベスト16も発表されていた。もうすぐトップテン、第16位から11位は……。

 

「第十一・ガラスの茶器、第十二・岐阜提灯、第十三・蒲織の円座、第十四・藤製安楽椅子、第十五・木地の枕、第十六・石竹の盆栽」

 

と、こんな感じ。続いて10位から1位の発表。

 

第10位 噴水器(ふきだし)
第9位 渋団扇
第8位 白地の浴衣
第7位 じょうろ
第6位 金魚
第5位 葭戸(よしど)
第4位 風鈴
第3位 雑巾桶
第2位 風通し
第1位 水

 

和の情緒を感じさせる風流なラインナップ。今なら何がランクインするだろうか。クーラー? 冷却マット? USB扇風機? 100年で夏の家庭の光景は大きく変わった。

 

■2冊目:「趣味の避暑案内」

ハワイが避暑地!?

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続いての本は「趣味の避暑案内」(大正6年)。こちらは、主に避暑旅行関連のオススメスポットが掲載されている。

 

「箱根の仙境」
「外人の眼に映じたる箱根宿」
「親しむべき史的鎌倉」
「夏の軽井沢と耶馬溪」
「伊豆の伊東」

 

と目次には、今と変わらず、夏の国内旅行といえばここ! という観光地が並んでいる。そんななか、ちょっと驚いてしまったのが「大平洋上の火山生活」の章。

 

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「布哇(はわい)のごとき四面水に囲まれたる群島は、水と風のおかげでそんなに暑くない……デ欧米人は布哇を太平洋の楽園(パラダイス)と称して夫婦などで避暑にでかけて来る」

 

「富士以上の高山に車道を設けて遊園地とし、旅館を作るが如きは流石に米国式で……清涼の気を養うことができるので、その季節となれば山上の旅館はあふるるばかりの客を有している」

 

なんと、この章でオススメされているのはハワイ! 現在は、ハワイといえば正月休みに芸能人が日本の寒さを避けて行く場所というイメージが強いが、当時は避暑地としてのハワイも推されていたようだ。

 

■3冊目:「金は無くとも」

現在にも通じる形式美

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最後の1冊は、岡本太郎の父でストーリー漫画の先駆者ともいわれる岡本一平の「金は無くとも」(大正13年)。この本には「一文無しの花見」「郵便貯金のいろいろ」など、いくつかの短編作品が収録されている。

 

なかでも「ロハ珍避暑法」は、銭がない二人の男が、なんとかタダで涼もうとするギャグエピソード。今でも日常ものや学園マンガを読むと、暑い毎日をアイデアで乗り切ろうとするエピソードがよく出てくるが、マンガではこれが草分け的存在だろう。

 

まずは、当時庶民の憧れだった扇風機。といってもそうそう手に入るものではない。

 

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大八車の車輪に団扇を取り付ければ扇風機の出来上がり!?

 

今度は、男のひとりが「船で夕涼みをしたい」と言い出した。もちろん船に乗る金はなし……。

 

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ならばと家の戸をすべて外し、隅田川に放り込んで船頭と客ごっこ。なんとも楽しそうだ。

 

思えば現代は、いつでも冷たいアイスを食べられるし、どこに行ってもクーラーが効いている。それでも、やっぱり夏バテするのだから不思議。どうせ暑いなら「ロハ珍避暑法」のふたりのように、面白おかしく夏をやり過ごすのが一番なのかも!?

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