ライフスタイル
2020/10/22 17:00

学校・教育委員会も認める「涙活(るいかつ)」の中身

「怒りに満ちて泣く」「怒られて泣く」のも、悪い涙ではない

ーー素朴な疑問ですが、赤ちゃんはよく泣きます。これは前述の3つの涙のうち、どれに当てはまりますか?

 

吉田 やはり「情動の涙」ですね。赤ちゃん泣きは「言葉を表現できないから泣いて訴える」「自分を見てほしい」といったものから、やがて成長してくると「不快だ」と、ストレスを溜めた上での泣きに変わってきます。しかし、いずれにしても「情動の涙」には変わりなく、赤ちゃんは「泣くこと」で結果的にストレスを解消していることになります。

 

ーー「情動の涙」が喜怒哀楽に起因するということは、例えば「怒りに満ちて流す涙」や「怒られて流す涙」も、ストレス解消として考えると良いものになりますか?

 

吉田 もちろん良いです。「涙活」としては「何かに感動して涙を流す」「嬉しくて涙を流す」ということをおすすめしていますが、「怒って流す涙」「怒られて流す涙」もストレス解消としては悪くはないです。例えば怒られても、「我慢して泣かない」というほうがマズいです。

涙を流すことでその人自身が、自分の状態を再確認できますけど、これを我慢したり出さないのは良くない。もちろん、「情動の涙」であれば、どんなものでも心の状態が良くなり、血流も良くなり、新陳代謝も促す。つまり良いことしかないので、「情動の涙」であれば、どんどん泣いたほうが良いのです。

 

ーーさらにもう一つの疑問ですが、動物は涙を流さないのでしょうか。幼児向けの絵本などには、「かわいそうな思いをしたぞうさんの目に涙が……」みたいな表現もありますが。

 

吉田 特に「情動の涙」というのは人間しか流さないと言われています。ですので、そういった絵本などでの動物が涙を流す描写というのは、人間が物語を盛り上げるためにつけた押し付けですね。「反射の涙」だと、基礎分泌から亀などが流すこともありますが、「情動の涙」は動物にはないですから。押し付けということになります。

↑吉田さんが運営する、旅と涙カフェ あかねで涙するお客さん。泣くことは人間だけに与えられた特権だそうです

 

「涙活」セミナーの現場でもなかなか泣けない人もいる

ーーしかし、「涙活」=「意識的に泣く」というのは、なかなかできない人もいそうです。特に吉田さんが日々行われている各地での涙活セミナーでは、参加者の方々は簡単に泣けるものなのでしょうか。

 

吉田 参加される方の大半は泣いて帰られる方ばかりですが、たしかに泣けない方もいらっしゃるんですよ。そういう方の「泣けない要因」は主に以下の4つがあると考えています。

 

①人前だから……「隣に号泣している人がいるから泣くけない」などの他者とのことを気にする場合
②泣ける題材が合わない……吉田さんの講演で用いられる「泣ける題材」にツボが合わない場合
③泣ける題材の製作者の意図を読みすぎてしまう……映像などの泣けるお題に対し、作品に感情移入するのではなく、製作者の意図のほうばかりを感じてしまう場合
④「情動の涙」も出ないほどの大きな問題を抱えている……大きな心配ごとや出来事があったりして、涙腺が固くなっている場合

 

吉田 ただ、こういった場合でも「絶対に泣かないとダメだ」とは考えていません。むしろ「泣けない」ことも大事なことな一つだと思っています。なぜなら「泣けない」ことを考えることも、自分の状態を見つめ直すきっかけになりますから。

前述の通り、涙を流すことでストレス解消には繋がりますが、かと言って絶対に泣かないからダメということではないんです。人それぞれに合うカタチで「涙活」を行っていただくのが最も大切なことだと思っています。

↑「涙活」セミナーで、参加者同士が泣く「涙活タイム」の様子。泣くことを目的としてはいるものの「泣けない人がいても良い」と吉田さん

 

理想的な「涙活」は、毎日2~3分泣くこと

ーー逆に「泣ける」人の場合、理想的な涙活のペースはありますか?

 

吉田 理想は毎日2~3分は泣いてほしいです。

 

ーー毎日ですか!? 毎日となると、かなりハードルが高そうな……。

 

吉田 そうでない方でも週に一度は泣いてほしいです。ちょっとだけの涙でも良いので。涙の中にコルチゾールというストレスホルモン物質が含まれているのですが、これが体外に出ることで、ストレスが減ると言われています。

 

ーー定期的に「泣く」ためには、どんな素材を用いると良いでしょうか。

 

吉田 さっきも言ったように涙腺のツボは人それぞれ違いますから「泣くための素材」はご自分に合ったものであれば、なんでも良いです。今はYouTubeで「泣ける動画」もいっぱい上がっていますし、こういうものを1日1回見ると良いでしょうね。映画でも良いのですが、映画は全て見終わるのに、2時間くらいかかります。そうなると、1日1回というのはなかなか難しいでしょうから、やはり短めのYouTubeの「泣ける動画」がお手軽で良いと思いますよ。

 

ーー「自分の泣きのツボが分からない」という人はどうしたら良いでしょうか。

 

吉田 人が涙を流すときは、例えば言葉、環境などを、自分自身の経験を投影することが多いんですね。だから涙活セミナーではできるだけ多くのジャンル……家族モノ、動物モノ、アスリートモノなどの映像を流して、参加者の方のツボに刺さるように工夫しています。

このように「泣きのツボが分からない」という方は、むしろ「泣きのツボ探し」も含めて、涙活として考えていただき、発見していってほしいと思っています。不思議なことに、当初は自分に刺さらなかったテーマのものでも、このように「泣きのツボ探し」をしているうちに「泣きやすくなった」という声は多くあります。つまり今泣けなくても、意識して「泣ける体質」に変えていくこともできるということですね。

↑常総市教育委員会での涙活セミナー。泣けるツボを探し出せるよう分かりやすく解説されたそうです

 

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