まとめ買いした食材を長持ちさせるために欠かせないフリージング。“フードロス”を極力なくすための、食材のかしこい活かし方でもあります。冷凍前に小分けにしたり細かくカットしたりしておけば、欲しい分だけ解凍できるだけでなく、料理が手早くできるように。また最近は、あらかじめ味付けをしてから冷凍する「下味冷凍」にも注目が集まっており、冷凍機能を活用しての作り置きにはさらに幅が生まれています。
そこで、発売中のレシピブック『冷凍&冷蔵 かしこい保存と作りおき350品』(ワン・パブリッシング)の中から、食材をおいしく冷凍するための基本のルールと、下味冷凍や冷凍した食材を活用したレシピを紹介します。
[目次]
・冷凍の基本ルール
・自家製ミールキットの作り方
・【肉のおかず】「鶏むね肉とかぼちゃのガーリックマヨ漬け」と活用レシピ
・【魚のおかず】「生さけのレモンマリネ」と活用レシピ
・【番外編 / 野菜】「常備野菜ミックス」と活用レシピ
「下味冷凍」ってなに?
「下味冷凍」とは、食材にあらかじめ調味料で下味をつけた上で冷凍する作り置きのこと。冷凍している間に食材に味がしみ込むので、時短調理でも時間をかけて煮込んだような味わいを引き出せるところが、通常のフリージングとは異なります。また、揚げる、焼く、蒸すなど、調理方法を変えたり、追加する食材を変えたりすれば、その日の気分に合わせたアレンジが楽しめるのもメリット。
食材の種類や鮮度にもよりますが、基本は冷凍室で約2週間保存がきくので、「毎月第1、第3日曜日は下味冷凍のおかずを仕込む日」と決めて、平日の買い物や食事作りの負担を減らせるといいですね。冷凍室に下味冷凍をストックしておくことで、忙しい日や疲れて帰ってきた日でも、気分に合わせた献立の食事作りがスムーズに進むようになるはずです。
冷凍保存の基本ルール
食材の鮮度とおいしさをキープしながら冷凍保存をするには、大事なポイントがあります。下味冷凍の前に、食材を冷凍する際のルールを整理しておきましょう。
1. 清潔な保存状態をキープする
密閉できる容器、またはジッパー付きの冷凍用保存袋を用意します。保存容器は使用前に消毒をし、冷凍用保存袋は再利用しないようにしてください。
2. 保存期間をメモする
冷凍すれば、いつまでも食べられるわけではありません。保存開始日の日付を記しておき、食材により前後しますが、冷凍した日から2週間以内に使い切るようにしましょう。
3. 密閉して酸化を防ぐ
保存容器に空気が入っていると、冷凍していても酸化が進みやすくなります。なるべく真空に近い状態で保存できるように、保存容器の中の空気を抜いてから袋の口を閉じます。
4. 急速冷凍をする
冷気を伝えやすい金属製のトレイに横に寝かせて置き、なるべく短時間で冷凍できるように、上から保冷剤をのせたり、急速冷凍機能を活用したりしてください。
それでは早速、肉や魚の下味冷凍を仕込んでみましょう。
肉と野菜と調味料だけ!
自家製ミールキットの作り方
肉と野菜を合わせ、調味料を加えた下味冷凍をすることで、自家製ミールキットになります。ジッパー付きの冷凍用保存袋の中で混ぜれば、ボウルは不要で、下ごしらえはわずか5分程度。このとき、手軽に仕込めて調理のアレンジがしやすくなるように、自家製ミールキットは、肉1種類に対し、野菜1種類の2つの食材で作ることがポイントです。
それでは、冷凍ミールキットを使って料理を作ってみましょう。まずは肉のおかずから。
【肉のおかず】
ヘルシーな鶏むね肉がごちそうに
自家製ミールキット「鶏むね肉とかぼちゃのガーリックマヨ漬け」
マヨネーズベースの調味料が冷凍している間に染み込むので、淡白な味の鶏むね肉がジューシーに。一度冷凍したかぼちゃはほっくりとやわらかく、ペーストのようなまろやかさが引き立ちます。
【材料(2人分)】
鶏むね肉…1枚(250g)
かぼちゃ(種とわたを取って)…150g<A>
マヨネーズ…大さじ2
しょうゆ…大さじ1/2
にんにくのすりおろし…小さじ1/2
塩…小さじ1/4
【作り方】
1.鶏肉は一口大のそぎ切りにする。かぼちゃは1cm厚さに切り、長さを3~4等分に切る。
2.冷凍用保存袋に[A]を入れ、袋の上からもんで混ぜ合わせ、鶏肉を加えてよくもみ込む。
3.鶏肉の上にかぼちゃを入れ、混ぜずに平らにならす。空気を抜いて口を閉じ、冷凍する。
【活用レシピ1】
カリッと焼いたマヨチキンとバターライスが食欲をそそる!
「鶏むね肉とかぼちゃのガーリックマヨライス」
追加で必要な食材は、バターとごはん、塩・こしょうのみ。半解凍したものをフライパンで炒めるだけなので、わずか15分でつくれます。忙しい日や、すぐに主食を用意したいときにぴったり。
【材料(2人分)】
下味冷凍「鶏むね肉とかぼちゃのガーリックマヨ漬け」…1袋
水…大さじ1
塩…少量
ごはん(温かいもの)…適量
バター…適量
粗挽き黒こしょう(お好みで)…少量
【作り方】
1. 下味冷凍「鶏むね肉とかぼちゃのガーリックマヨ漬け」を600Wの電子レンジで30秒加熱し、半解凍する。
2. フライパンに1の中身と水を入れてふたをし、中火にかける。温まったら弱火にし、ときどき混ぜながら7〜8分蒸し焼きにする。
3. 鶏むね肉がほぐれてきたら、ふたを取って4~5分炒め、塩で調味する。
4. ごはんにバターを加えて混ぜ、器に盛って3をのせる。お好みで、粗挽き黒こしょうを振る。
【活用レシピ2】
衣をつけて揚げればOK!
「鶏むね肉とかぼちゃのフリット」
下味冷凍で味のしみた鶏むね肉とかぼちゃにフリットの衣をつけ、かぼちゃから順に170℃の油で3~4分揚げるだけ。レモンを添えれば完成です。調理の前日、または当日の朝に、冷蔵庫に移動し、全解凍してから調理しましょう。
【活用レシピ3】
ホワイトソースいらずで簡単!
「鶏むね肉とかぼちゃのパン粉焼き」
全解凍したミールキットの鶏むね肉とかぼちゃを耐熱皿に交互に並べてオーブントースターで15分ほど焼き、具材に火が通ったら、パン粉や粉チーズ、オリーブオイルを加えて1~2分焼けば完成。下味冷凍後のかぼちゃはペーストのような味わいです。
次は、魚を下味冷凍したミールキットと、それを活用したレシピを紹介します。
臭みを抑え素材の持ち味を生かす、魚の下味冷凍
傷みやすく臭いの気になる魚介類は、買った当日中に内臓を抜き、塩をふって余分な水気を拭き取り、ラップに包んで保存することが、鮮度を守り、おいしく食べ切るコツです。さらに、下味をつけて冷凍すれば、身に味がほどよくしみて旨味が引き出されます。ここでは、さけの切り身を使った、下味冷凍の作り方と、解凍後の調理例をチェックしてみましょう。
【魚のおかず】
さけにしみたレモンの風味が上品な味わいに!
「生さけのレモンマリネ」
さけなどの魚や貝類は、傷みやすく臭いが気になります。レモンと酒に漬け込むことで、臭いを防ぎます。また、さわやかな旨味が加わり、新鮮なおいしさが引き出されます。
【材料(作りやすい分量)】
生さけ…2切れ
レモンの輪切り…2枚<A>
レモン汁…大さじ1
酒…大さじ1
塩…小さじ1/4
こしょう…少量
【作り方】
1. 生さけは一口大のそぎ切りにする。
2. 冷凍用保存袋にAを入れ、袋の上からもんで混ぜる。1とレモンの輪切りを加え、同様にもんでからめる。
3. 冷凍用保存袋を平らにならして空気を抜き、口を閉じて冷凍する。
【活用レシピ1】
しょうゆとはちみつを加えて、和風アレンジ!
「さけのレモン照り焼き」
レモンと酒で臭みが取れ、酸味の加わった生さけに、しょうゆとはちみつを加えて焼き上げます。ごはんにも合い、お酒のおつまみにもなります。お弁当のおかずにもぴったり。
【材料(2人分)】
下味冷凍「生さけのレモンマリネ」…1袋
<A>
しょうゆ…小さじ2
はちみつ…大さじ1/2
グリーンカール(お好みの葉物野菜)…適量
【作り方】
1. 下味冷凍「生さけのレモンマリネ」を600Wの電子レンジで30秒加熱し、半解凍する。[A]は混ぜ合わせる。
2. フライパンに1の下味冷凍「生さけのレモンマリネ」を入れてふたをし、中火にかける。温まったら弱火にし、ときどき混ぜながら7〜8分加熱する。
3. 生さけが完全に解凍状態になり、身がばらけてきたらふたをとり、水分を飛ばすように両面を焼く。[A]を加えて全体にからめ、グリーンカールとともに器に盛る。
【活用レシピ2】
野菜とチーズを加えて、こんがりと焼くだけ!
「さけと野菜のチーズ焼き」
下味冷凍「生さけのレモンマリネ」を全解凍し、ズッキーニやトマトなどの野菜を加え、ピザ用チーズを散らしてオーブン焼きに。さっぱりとした味わいがワインに合います。
【活用レシピ3】
酸味のあるホワイトソースで上品な味わいに!
「さけとかぶのレモンクリーム煮」
火が通りやすいかぶと一緒に煮れば、15分ほどで完成します。体が温まり、あっさりした味わいなので、体調のすぐれない日のスタミナ補給にオススメです。
次のページでは番外編として、下味をつけずに生の野菜を数種類合わせて作る、カット野菜の冷凍作り置きとその活用レシピをご紹介します。
【番外編 / 野菜】
生の野菜を2~3種合わせて作る“カット野菜”の冷凍作り置き
野菜は生のまま冷凍すると、解凍後に水分が出てしまったり、根菜はブヨブヨになってしまったりするので冷凍には向かないといわれています。ところが、野菜の切り方や解凍後の状態を生かした調理をすれば、凍ったままや半解凍で使え、調理時間を短縮することができるのです。ここでは、加熱調理をせずに冷凍した玉ねぎ、にんじん、じゃがいもの野菜ミックスを使った冷凍食材の活用テクを紹介します。
火の通りが早く、用途がたくさんの「常備野菜ミックス」
玉ねぎ、にんじん、じゃがいもの定番常備野菜は、煮物、炒め物、シチューなどさまざまなメニューで活躍します。冷凍の野菜ミックスがあれば火が通りやすく味もしみ込みやすくなるので、大幅時短に貢献します。
【材料(2人分)】
玉ねぎ…1/2個
にんじん…1/2本
じゃがいも…2個
【作り方】
1. 玉ねぎはくし切り、にんじんは厚さ1cmの半月切りにする。
2. じゃがいもは3~4cm大の乱切りにして水にさらし、しっかりと水気を拭く。
3. 1と2を冷凍用保存袋に入れ、口を閉じて冷凍する。
【活用レシピ1】
手早くできて、しっかり味がしみこむ
「肉じゃが」
茹でたじゃがいもを凍らせるとスカスカになりますが、生のままならOK! 凍ったまま鍋に入れて、10分ほど煮込むだけで肉じゃがをつくれる手軽さは、やみつきになります。
【材料(2人分)】
「常備野菜ミックス」…1袋
牛こま切れ肉…120g
しょうが…1/2かけ
絹さや…3~4枚
サラダ油…小さじ2
だし…カップ1 と1/2
<A>
しょうゆ…大さじ2
みりん…大さじ2
砂糖…大さじ1
【作り方】
1. 牛こま切れ肉を食べやすい大きさに切る。しょうがは千切りにする。
2. 絹さやは筋を取り、塩少々(分量外)を加えた熱湯で色よく茹で、水にとって斜め半分に切る。
3. 鍋にサラダ油を熱し、1の牛こま切れ肉としょうがを炒める。肉の色が変わったら、「常備野菜ミックス」を凍ったまま加え、強火で炒めてだしを加える。
4. だしが沸騰したらアクを取り、[A]を加え、中火にする。落としぶたをし、10分ほど煮る。
5. 煮汁が1/3量になったら落としぶたを取り、上下を返してそのまま汁気がなくなるまで強火で煮汁をとばす。
6. 器に盛り、絹さやを散らす。
【活用レシピ2】
揚げ焼きにした具材と卵でボリューム満点!
「スペイン風オムレツ」
半解凍した「常備野菜ミックス」をざく切りにして多めの油で揚げ焼きし、塩・こしょうをした卵に混ぜて焼くだけ。ランチやお弁当に大活躍の食べ応えある一品です。
【活用レシピ3】
火の通りが早いから、パパッとつくれる!
「チキンカレー」
ひと口大の鶏もも肉を炒め、凍ったままの「常備野菜ミックス」を加えてつくるカレーです。カレールウの味が野菜にしみ込みやすいので、コトコト煮込む必要なし!
食材を、鮮度やおいしさをキープしながら長持ちさせられるだけでなく、おいしさを引き出し、調理時間の短縮までも可能にする冷凍術を活用しない手はありません。お買い得な新鮮食材との出合いを生かし、冷凍保存をフル活用しながらおいしくいただきましょう。
【書籍情報】
『冷凍&冷蔵 かしこい保存と作りおき350品』(ワン・パブリッシング)
調理の時短とおいしさキープができる食材別の冷凍や冷蔵方法から、下味冷凍の「ミールキット」まで、オールシーズン使える350品のレシピをピックアップ。食材別にレシピが並んでいるので、作りたいレシピがすぐに見つかります。
肉や魚、野菜類をおいしく冷凍する方法や解凍のコツ、鮮度を保つ正しい冷蔵や常温保存のノウハウをわかりやすく解説。カレー、鶏のから揚げ、ポテトサラダなどの定番おかずを冷凍し、新しいおかずにリメイクする活用術も必見です。鮮度を保ち、おいしく食材を保存するテクニックだけではなく、冷凍食材のアレンジやリメイク例が豊富なので、やりくり術が身につきます。