ライフスタイル
2020/12/30 20:15

「断捨離」生みの親 やましたひでこが振り返る2020年と、2021年にもつべき希望と心構えとは?

2020年は、これまでの“当たり前”が一変し、非日常が日常になった1年だった、という人も多いのではないでしょうか。

 

「断捨離」の“生みの親”でもあるやましたひでこさんには、この連載を通じて断捨離の真意をお話しいただいてきました。今回は、そんな特別な1年となった2020年を振り返りながら、2021年に向けて、この試練をどのように乗り越えていけばいいのか、またこの経験をどう生かしていけばいいのかを、断捨離の視点から考察していただきました。

 

2020年は良くも悪くも“分断”した年
この経験から見えてくる“希望”とは

———2020年は本当にいろいろなことがありました。やましたさんは、振り返ってみてどのような1年だったと感じますか?

 

「ひと言で表すなら、“分断”の年だったと思います」

 

———政府から緊急事態宣言が発令された後にお話をうかがった、「#StayHomeの今、私たちが家で過ごしながらすべきこと」でも、今後は“分断された社会”になるとおっしゃっていましたね。

 

「はい。振り返ってみれば、必要な分断だったのかもしれません。現状は、この分断された状況を理解した上で受け入れている人、気がついたら分断されたまっ只中にいた人、分断されていることにすら気がつかず過ごしている人の、3つに分けられると思います。できることなら理解した上で、分断の中にいる人でありたいですよね」

 

———“分断”と聞くと、どうしてもネガティブな印象をもってしまうので、3つのどの状況にあっても、「なんとなく不安だな……」という思いが付きまといます。来年以降も、漠然とした不安を抱えながら暮らしていくことになるのでしょうか?

 

「今は不安に思っている人も多いかもしれませんね。でも私は、この分断を“希望”としてとらえています。この状況を希望と感じるか、不安だと思いながら生きるかはどこに焦点を当てるか次第です。つまりは自分の意識次第なんです。

ちょっと難しいので例を出してお話しすると、新型コロナウイルスも第三波がやってきて、Go To トラベルが停止になったり、再び緊急事態宣言が出されてしまうのではないか? と不安になったり、ニュースをつければ日々ネガティブな情報ばかりが飛び交っています。けれど、世界規模で感染者増加グラフを見比べてみれば、日本の状況はそこまで悲惨ではないんですよね。もちろん、ひとりひとりが感染を予防するのは当たり前のことですが、俯瞰してみると、『今、必要以上に不安がることはないのでは?』と思えることもあります。ずっと家にいるのに、感染者が増えていくニュースに右往左往してしまってはそれこそ不安だし、疲れ果ててしまいます。感染予防し、不要な外出を控え、家の中で生活しているだけなら快適に毎日を過ごせるわけだから、どうやって物事をとらえるかで気持ちは変えられるということです」

 

「みんな一緒」の価値観はもう終わり

———確かに、新型コロナウイルスのネガティブな部分ばかりがピックアップされてしまいますが、俯瞰して考えてみると、リモートワークが中心になったことで今まで交通費がかかっていた場所の方とも気軽にオンラインでお話しできたり、自由な家空間で仕事ができたり、予想外の恩恵もありました。断捨離を通じて、「住」環境ともじっくり向かい合えた1年だったとも感じます。

 

「やっと、時代が断捨離に追いついてきましたね(笑)。この時期にしっかり断捨離できていたかどうかというのも、“分断”の中のひとつにあると思います。『断捨離していて良かった』と感じられるか、知らずに過ごしてイライラしているか……。自分が住んでいる場所が不要・不適・不快(※)だったら、それだけでもイライラするし、不安になりますからね。12月末に新著『1日5分からの断捨離』(大和書房)を発売するのですが、そこでも、目の前にあるものをたった1つでもいい、5分でもいいから断捨離してみようということを書いています。時間がなくてできないとか、何から手をつけたらいいか、と悩んでいる方はこの連載と合わせて読んでいただけると、理解も深まると思いますよ」

※『要・適・快』は、「これは私にとって、必要か(要)・ふさわしいか(適)・心地よいか(快)?」と自分に問いながら必要なものを見定めていくこと。『不要・不適・不快』は、今の自分にとって「あれば便利だけどなくても困らない(不要)モノ・今の自分には合わない(不適)モノ・長く使っているけれど違和感を感じる(不快)モノ」を手放していくこと。

 


『1日5分からの断捨離』(大和書房)

 

———われわれは、コロナ以前からやましたさんに取材させてもらっていたので、プライベートでも少しずつ断捨離することができました。こう言うのもおこがましいですが、「断捨離していて良かった」派です!

 

「それはなによりです(笑)。これは私の勝手な妄想でしかないけれど、新型コロナウイルスによって今、“密”と“疎”のバランスが見直されているのでは? とも感じています。昔は、みんなが同じアイドルが好きで、みんなが知っている歌があって、みんなが同じドラマやバラエティを見て、みんなが同じスポーツを観戦して熱狂して、日本全体で一体感を感じる場面が身近にありましたよね。日本全体の趣味嗜好や流行が“密”だったんですよね。けれど、今はどうでしょう?」

 

———今は自分の趣味嗜好に合わせた番組をYouTubeで楽しんだり、音楽もヒットチャートなど関係なくサブスク配信で好きなものを聞いたり、各コミュニティの中での一体感を感じることはあっても、日本中が一緒に盛り上がるという機会は少なくなりましたね。

 

「そうですよね。その意味での“分断”と捉えると、『私は私で好きなことやります! 興味があるなら一緒にやらない?』くらいで十分楽しめる時代になっていると思います。今までは興味のない人までどうやったら巻き込めるか? ということに苦心してきたけれど、分断されたことでかえって“個”が尊重されるようになり、働き方はもちろん、生き方も自分らしく、ダイナミックな人生を送れるようになってきたと思うと、意外といい時代だと感じませんか?」

 

———ええ、そう感じます。

 

「マラソンで例えるなら、みんな同じゴールを目指してスタートしても先頭集団と後方集団に分かれてしまいますよね。『断捨離』に関しては、今までは遅れている人がいたら、さぁ! 一緒に頑張りましょう! って並走していましたが、その行為自体がおこがましいし、私の役目ではないなと感じたんです。分断されている時代での私の役目は、先に行ってるよ〜! と、どんどん前を走っていくこと、そこについて来たい人とともにスピードアップして走り抜けることだと思っています」

 

———なるほど。後方の人も途中で目的地を変えるかもしれないし、先頭集団に追いつくスピードを得られるかもしれないですからね。「置いていかれた!」と思うのではなく、自分でどこに向かいたいか考えることが大切ですね。

 

いろいろあるから人生は面白い

———来年に向けてのお話も少しお伺いしたいのですが、やましたさんご自身は、なんと鹿児島県指宿市に住民票を移されたそうですね。

 

「はい。ご縁があって、指宿のホテルに住民票を移しました。役所での手続きはいろいろと面倒でしたけどね(笑)」

 

———すごいですね! 私にとって“住民票を移す”ということは、一大決心というか……もう戻らないぞ! とか、ここでなんとかやっていくんだ! という気合が必要な気がしてしまって。しかもその移住先がホテルとなると、驚きです。心のどこかで「楽しそうだな〜」「いいな〜」とは思っていても、なかなか行動には移せません。

 

「断捨離の中で、“断”ちがたいものは人間関係で、“離”れがたいのが土地。気軽に引越しができない背景には、仕事や学校、家族はどうするの? と、断ちにくいもの、離れがたいものがあるからです。けれど、2020年を振り返ると、仕事もリモートでできるようになって、毎日出社する人も減りましたよね。これまで当たり前に離れられなかったものが崩壊し始め、離れることのしがらみがなくなったんだと思います。だったら緑が豊かな場所でのんびり過ごしたいし、刺激が欲しい時には都会に戻りたい、自由自在に行き来できるなら『このシーズンにはこの服を着ましょう』くらいの感覚で住む場所を変えても、問題ないと考えたんです」

 

———やましたさんとお話ししていると、とても簡単なことに思えてしまうから不思議ですね……。

 

「それと、このホテルは一般のお客様が宿泊できるホテルの顔とは別に、やましたが信頼している仲間が1日でも1週間でも1年でも、いつでも来て泊まってもらえる場所として活用してもらいたいと計画しています。ひとりでのんびりしたい時には、部屋でくつろいでもらって、でもラウンジに出てくるとやましたと会えたり、他の仲間もいたり。今回の計画も、ご縁がなければ実現できなかったことですから」

 

———“分断”を経て、あらためて新しい絆が繋がっていくように感じますね。来年からはどんな方向に向かっていくのでしょうか?

 

「2020年は、“分断”によってたくさんの人が重たい荷物を手放して、捨てた年だったと思います。やましたの考え方として、人生って『いろいろあって大変だ』ではなくて、『いろいろあるから面白い』ってスタンスなんです。人生を面白がれる方が、生きていて楽しいはず。目の前にあること、人、状況と徹底的に向き合って、思いっきり楽しんでやるぞ! って姿勢が、これからの時代には必要になってくると思いますよ」

 

———お話をお伺いする前は「まだまだコロナの状況は続くし、先行きが不安定だな」と来年を迎えるのが不安だったのですが、少し希望が持てるようになりました。

 

「こんなにたくさん手放して、捨てたんですから。あとは好きなものを拾っていくだけです。これからどうしていこうかな? どんなことができるかな? って考えて、アグレッシブに行動していく年になると思いますよ。だって人生は『いろいろあるから面白い』でしょ?」

 

———本当にそうですね。すべて来年のための準備だったんだなと思うと、2021年が楽しみになってきました。ありがとうございました。

 

第7回の断捨離に関するキーワード

・2020年は分断の年。いろいろなものを断ち、手放した年
・2021年は好きなものを選び、楽しむ年
・洋服を着替えるように、住んでいる土地も選べる時代へ

 

やましたひでこさんの「断捨離」に関する過去のコラムはこちら
https://at-living.press/tag/yamashitahideko-danshari/

【プロフィール】

クラターコンサルタント / やましたひでこ

一般財団法人「断捨離®︎」代表。学生時代に出逢ったヨガの行法哲学「断行・捨行・離行」に着想を得た「断捨離」を日常の「片づけ」に落とし込み応用提唱。誰もが実践可能な「自己探訪メソッド」を構築。断捨離は人生を有機的に機能させる「行動哲学」と位置づけ、空間を新陳代謝させながら新たな思考と行動を促すその提案は、年齢、性別、職業を問わず圧倒的な支持を得ている。『断捨離』をはじめとするシリーズ書籍は、国内外累計500万部を超えるミリオンセラー。アジア各国、ヨーロッパ各国において20言語以上に翻訳されている。

・BS朝日「ウチ、断捨離しました!」<毎週月曜夜8時>レギュラー出演中
https://www.bs-asahi.co.jp/danshari/

・やましたひでこ公式HP『断捨離』
日々是ごきげん 今からここからスタート http://www.yamashitahideko.com/
・やましたひでこオフィシャルブログ『断捨離』
断捨離で日々是ごきげんに生きる知恵 http://ameblo.jp/danshariblog/
・断捨離オフィシャルfacebookページ http://www.facebook.com/dansharist

※「断捨離」はやましたひでこ個人の登録商標であり、無断商業利用はできません。
※取材はオンラインで行いました。写真は2020年1月中旬に撮影したものです。



提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」