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2021/3/10 11:30

東日本大震災からの復興へ。コロナ禍の中でも私たちができる3つのこと

東日本大震災の発生から、2021年で10年。未曽有の大災害から月日が経った今でも、被災地が完全に「復興した」とは言い切れない現状があります。

 

被災地は今、どうなっているのか。そして今、私たちにできることは何なのか。

 

岩手・宮城・福島を中心に、震災伝承や防災・減災活動の“連携”“企画”“育成”に取り組む、3.11メモリアルネットワークの浅利満理子さんにお話をうかがいました。

 

東日本大震災から10年が経過した、被災地のリアル

今もメディアで取り上げられることが多い、東日本大震災の被災地。現在、宮城県石巻市に住む浅利さんですが、日々生活している場所と、メディアで「被災地」と呼ばれる場所との間にギャップを感じている部分があると話します。

 

「メディアの報道ではどうしても、道路がつながったとか、新しい施設ができたとか、ハード面に関する話題が多いように感じます。もちろんその情報は正しいのですが、『工事が終わりました』とカメラを向けられているすぐそばの土地は、まだ手付かずのままになっていることもあります。

また、被災地に住む“人の声”がもっともっと届けばいいなとも感じています。誰の声が代表というわけではなく、人それぞれ持っている意見も違いますし、状況も異なるので、そうした一人一人の声をさらにすくい上げていってもらえるとうれしく思います。10年経って復興が終わった、一区切りがついたとは言い難く、いろいろな状況が混在しているというのが現状だと思います」(3.11メモリアルネットワーク・浅利満理子さん、以下同)

 

コロナ禍でも歩みを止めない、震災の伝承活動

ここ一年はコロナ禍で、復興に関するさまざまな取り組みがこれまで通りに進められなくなっています。浅利さんが所属する「3.11メモリアルネットワーク」では、3.11の伝承活動を行う人々をサポートしていますが、その活動でも同様に、コロナによる影響を大きく受けていると言います。

 

「伝承活動に関して言えば、これまでは実際に現地を訪れてもらってご案内をしたりしていたのですが、今はそれがなかなか難しい状況です。しかし、オンライン上で語り部の活動やガイドをするなど、新しい形で活動をしている団体も出てきています。

また、被災地から離れたところに住んでいる人など、これまでなかなか来られなかった人が『オンラインなら』と参加してくださったり、学校と現地を繋いでオンラインで交流をしたりする機会もあったりして、思いがけず活動の幅が広がっている実感もあります。新しいアプローチに挑戦できた期間になったと、前向きに考えています」

 

これからの課題は、一人一人に防災意識を根付かせること

復興のための活動も、震災の被害を後世に伝えていく活動も、この10年間で確実に歩みを進めてきました。しかし、今でもまだ課題として残っているものや、今後さらに力を入れて取り組まなければならないことも出てきています。

 

「数年前に福島沖で地震があって津波警報が発令されたとき、全員がすぐに避難したわけではありませんでした。東日本大震災を経験したからといって、では次の災害でみんな、すぐに逃げるのかというと、けっしてそういうわけではないんです。そのときは『高い津波がくる』という警報ではなかったためかもしれませんが、『念のために避難しておこう』という意識を一人一人に浸透させていくというのが、今後の課題だと感じています。

そして当然ですが、10年経って東日本大震災を知らない子たちも増えてきました。震災のことを後世に伝えていく活動は、これからさらに大切になっていくと思います」

 

10年経った今、私たちにできることを考えよう

被災地の現状を踏まえ、私たちに今できることは何なのでしょうか?

「何かしたい」と思っていても、何から始めたらいいのかわからないと感じている人も多いのではないでしょうか。そこで浅利さんに「私たちにできること」に関するヒントを教えていただきました。

 

【関連記事】被災地支援の最新形「リモートボランティア」とは?

 

1. プラットフォームを利用し、寄付や買い物をする

まず1つは、寄付をしたり、モノを購入したりして応援をすること。「オンラインで気軽に応援できるプラットフォームも多数存在しているので、一度覗いてみてはいかがでしょうか?」と浅利さんは話します。

 

・クラウドファンディングで活動のサポートを

例えば『READYFOR』は、初心者にもおすすめのクラウドファンディングサイト。プロジェクトを、#東日本大震災、#被災地などハッシュタグで検索できたり、地域ごとに探したりすることができます。それぞれのプロジェクト内容も詳しく説明されているので、自分が「応援したい」と思えるところが見つかるはずです。

READYFOR https://readyfor.jp/

 

・検索するだけで支援につながる

「そのほかもっとライトに始められる支援として、Yahoo! JAPANでは、2014年から毎年3月11日に『3.11』と検索すると10円寄付されるという取り組みを行っています。今年の特設サイトでも、『寄付』『知る』『買う』などとサイト内でカテゴライズされていて、情報がとてもわかりやすくまとめられています。小さなことから始める仕組みとして、とても素晴らしいと思っています」

 

今年はYahoo! JAPANだけでなく、LINEからの寄付も可能。3月11日にLINEアプリの上部にある検索窓に「3.11」と入力して検索すると、10円寄付することができます。

Yahoo! JAPAN 3.11特設サイト https://fukko.yahoo.co.jp/

 

今年もYahoo! JAPANの3.11特設サイトでは、「東日本大震災から10年 のりこえるチカラ」と題し、さまざまな情報を発信しています。例えば、寄付先がわかりやすく一覧で掲載され、「どこに寄付をするか」をじっくり検討することができたり、モノを買って応援する場合も、食べ物はもちろん、伝統工芸品や防災グッズなど、幅広いラインナップの中から選んだりすることが可能です。そして被災地で生活している人たちの「今」がわかるインタビュー記事も数多く掲載されており、このサイトだけでさまざまな形の「応援」をすることができます。

 

2. 被災地と、継続した関わりを持つ

2つ目は、被災地と継続して関わっていくということです。今はコロナの影響もあって移動することがなかなか難しいですが、「実際に来てみてわかることもたくさんあると思うので、来られるようになったら、ぜひ一度被災地を訪れてみてほしい」と浅利さんは力を込めます。

 

「東日本大震災の被災地は広範囲なので、共感できる取り組みをしているひとつの地域を訪れるのもいいと思いますし、“お遍路”のようにさまざまな土地を巡ってみるのもいいのではないでしょうか。

また、植樹のボランティアなどを通して、被災地とつながりを持つことも、“できること”のひとつではないでしょうか。植えた木の様子を定期的に見に来ることは、被災地を訪れるきっかけにもなりますし、自分が植えた木とその土地のことをときどき思い出して気にかけてもらえるのも、とてもうれしいことだなと思います」

 

・桜の木を植えて、被災地とのつながりを持つ

「植樹事業を行っている団体の一つに「桜ライン311」があります。この団体では、東日本大震災の津波最大到達地点、約170キロメートルのラインに10メートル間隔で桜を植樹し、「桜のライン」をつくることをめざしています。現在も、春と秋の年2回、植樹会を行っており、目標の17000本達成に向けて活動が続いています」

 

今は現地に行く事が難しいですが、寄付という形で“桜の育て親”になることは可能です。

桜ライン311 https://www.sakura-line311.org/planting

 

【関連記事】私にもできる、寄付やボランティアの仕組みがある!知っておきたい慈善活動の仕組み

 

3.被災地のことを知り、自身の防災への意識を高める

3つ目は、被災地のことをあらためて「知る」ことで、災害への意識を高めたり、防災に取り組んだりするということです。

 

「毎年3.11に関連したさまざまな行事が行われています。今年はオンラインでの配信を行っているところも多いので、これまでハードルが高いと思っていた人も、『オンラインなら』と少しでも覗いてもらえたらうれしいですね」

 

・復興に取り組んできた行政の特設サイトで「知る」

「また、行政でも10年目を迎えるにあたって、特設サイトがつくられています。例えば宮城県のサイトでは、『伝えあう授業』、『あの時×今を伝えあう』と題したオンラインの動画や、災害時に役立つ知識や心構えに関するクイズなど、さまざまなコンテンツが用意されています。3.11を経験した人々の『今』も、知ることができます。

これからも、いつどこで大きな災害が起こるかわかりません。そのため『10年目』以降も災害について継続的に考えていくために、行政だけでなく、民間企業や報道機関などでも、さまざまな取り組みが進められています。東日本大震災に限らず『災害のときこういうことがあったんだ』と知ることは、自分が実際に災害に遭ったときに、行動するための第一歩になると思います。『支援』という形だけではなくて、『誰もが被災者になりうる』ということを念頭に置いておいて、折に触れて災害について考えてほしいなと思います」

宮城県特設サイト https://tsutaeau.pref.miyagi.jp/

 

・防災アプリで「学び、備える」

気軽に防災に取り組めるスマートフォンのコンテンツもあり、「『これならできそう』と思えるものから始めてみてほしい」と浅利さんは言います。例えば、「東京都防災アプリ」は、「あそぶ」「まなぶ」「つかう」がコンセプトの、東京都公式の防災アプリです。「防災ブック」や防災に関するクイズで学べるなど、都民でなくても災害時に役立つ知識を得ることができます。

東京都防災アプリ https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/1005744/index.html

 

・自分の防災力を「理解する」

「ヤフー防災模試」は、スマートフォンから簡単に受験することができ、地震や水害などさまざまな災害に関する問題にチャレンジできます。過去に出題された問題も掲載されているので、自分の“防災力”をチェックしてみるのもおすすめです。

ヤフー防災模試 https://bousai.yahoo.co.jp/exam/

 

 

東日本大震災から10年が経っても、復興が完了したわけでも、ましてや後世に残していくための活動が終わったわけでもありません。でもむしろ、これまで震災についてあまり考えてこなかったという人や、何かしたいけど行動を起こせていなかったという人にとっての「10年目」は、一歩踏み出すタイミングになるのではないでしょうか。

 

オンラインで気軽にできる支援をしてみたり、防災についてあらためて考えてみたり……ぜひ、できることから行動していきましょう。

 

【プロフィール】

3.11メモリアルネットワーク / 浅利満理子

東日本大震災の経験を伝承する個人・団体・拠点施設をつなぎ、支えるためのネットワークとして、2017年に設立。フォーラムなどの行事や、震災について学ぶための講座なども開催し、「災害で命が失われない社会の実現」「被災者や被災地域の苦難を軽減し、再生に向かうことのできる社会の実現」を目指して活動を行っている。

3.11メモリアルネットワーク https://311mn.org/

また、3.11メモリアルネットワークが主宰する震災フォーラムが3/21(日)に開催。今年はオンラインからも参加できます。
https://311mn.org/info15