ライフスタイル
2021/6/2 20:30

物件探しから契約時,入居後まで“ペット可物件”で快適に暮らすためのチェックポイント

ワークスタイルの変化やおうち時間の増加により、ペットを飼いはじめる人が増えています。一方で、知識の浅さや準備不足から飼い方に困ってしまう人や、近隣とのトラブルに発展してしまう人も。ペットは家族ですから、一度飼いはじめたら、最後のときまで飼い続ける責任が生まれ、簡単に手放すわけにはいきません。人にもペットにも快適な環境を作るには、どんなことに気をつけたらいいのでしょうか?

 

今回はとくに「ペット可」の賃貸物件で暮らす際の、物件探しから入居後の日常生活まで、トラブルなく快適に過ごすにはどうしたらいいのかに着目。ペット共生型住宅のコンサルタントとして活躍する薬師寺泰子さんに、ペットと暮らす家のあり方についてうかがいました。

[目次]
1. ペットと暮らしたい! 物件探しの方法と選び方のコツ
2.「ペット可」でも契約書を事前にチェックすること
3. こんな物件は避けたほうがベター
4. ペットと暮らすならこんな部屋を選びたい
5. ペット可の賃貸物件で暮らすときの注意点

 

1. ペットと暮らしたい! 物件探しの方法と選び方のコツ

すでにペットを飼っている人が賃貸物件を探す場合に加えて、これからペットを飼おうとしている人が物件を探すときは、先に飼いたいペットのイメージを持っておくことが大切です。

 

「たとえ『ペット可』とあっても、実は物件によって条件が詳細に決まっています。犬はOKでも猫はNGだったり、小型犬ならOKだったり、種類やサイズ、ペットの頭数などによっては、ペット可であっても入居できない場合があるのです。まれに物件によっては、『災害時にひとりで連れ出せる頭数とサイズまで』や『抱っこできるサイズまで』などと、解釈に迷う条件が、契約書に記されていることもあります。まずは“10kg未満の小型犬を一頭飼う”“猫を一頭飼う”などと、おおよその目星をつけ、それに沿った物件探しをはじめましょう」(ペット共生型住宅のコンサルタント・薬師寺泰子さん、以下同)

 

ペット可物件とペット共生型住宅の違いに注意

「ペット可物件」とは、ペットを飼っても良い物件を示します。さらに「ペット共生型」という言葉がついていたら、共用部分にペットのための設備があるなど、ペット飼育に特化した物件のこと。

 

「このふたつには大きな違いがあります。『ペット可物件』というのは、“飼ってもいい”ということなので、ペットを飼っていない方もマンション内に多くいらっしゃる可能性があります。一方、『ペット共生型』となると、玄関にペットの足洗い場がついていたり、エレベーターに乗る際にペットが同乗することを他の方に伝えられるような“エクスキューズボタン”があったりします。

 

設備面で飼育しやすいのはもちろんですが、ペット共生住宅は、相対的にマナーの良い飼い主が多く、飼い主同士のコミュニケーションがとりやすいこともあり、ペットトラブルが少ない傾向にあるようです」

 

ペットファーストで物件を探す

ペット可物件は増えてきていますが、それでも全体的な物件総数からすれば少なくなります。あれもこれもと条件をつけているうちに、ヒットする物件がなくなってしまうかもしれません。

 

「ペット可物件を探すときは、“ペットファーストで考える”ということを基本にしておくといいでしょう。たとえば駅から遠くても、ペット共生型住宅の方が周囲に気遣うことも少なく、暮らしやすくなります。高層階は見晴らしがよくていいかもしれませんが、毎日散歩に出かけるのであれば、エレベーターで他の住人と会うタイミングも多くなり、肩身の狭い思いをするかもしれません。ペットに関わる以外の条件は少しゆるめ、ペットと暮らすことが堂々とできるかどうか、という視点で選ぶと失敗が少ないでしょう」

 

2. 「ペット可」でも契約書を事前にチェックすること

賃貸契約は、いい物件に巡りあい、いざ契約という段になって契約書を読むのが一般的な流れです。でも実は、契約書を読んではじめて“違った”と思うことや、“聞いていなかった”ということが多々あるのです。物件に申し込みを入れるタイミングで、一度物件の契約書を読んでみましょう。

 

敷金と原状回復には要注意!

ペット可物件では、通常よりも1か月分敷金を多く取る物件が一般的です。

 

「普通は、退去時に部屋のクリーニングや破損修理などを敷金から行い、残りは返金されるシステムですよね。ですが、一か月分多く敷金を払っていても、敷金以上にクリーニング代がかかることがあります。契約書にそう記されていたら、退去時に金銭が発生すると考えなくてはなりません。入居時に部屋の写真を撮っておくというのも大切です」

 

入居以降にペットが増えたときは退去しなくてはならないことも

契約書には必ずペットの種類や頭数、サイズなどの記述があります。それは入居時だけでなく、退去するまで守らなくてはならない約束ごとです。

 

「特に猫の場合は、“入居時は2匹だったものが、思わぬ妊娠や出産で増えてしまった”ということにならないよう、避妊・去勢手術をすることも大切です。猫は生後1歳前でも妊娠することができるので、オスとメスで飼っている場合は、早めの対応が必要です。また、避妊・去勢手術をすることで、発情期のメスの大きな鳴き声や、オスがあちこちにするニオイつけのおしっこを防ぐこともできます」

 

ワクチンに関する規約を確認すること

いざ契約時になったときに、「ペットのワクチン証明書を持ってきてください」と言われることがあります。

 

「こちらも契約書を確認することで事前にわかりますが、ワクチンを打つことが入居の条件であるとされている物件もあるのです。狂犬病ワクチンを打つことと、お住まいの市町村への登録は法律で義務づけられていますが、それ以外のワクチンは任意です。物件によってはこの任意のワクチンの摂取が必要となる場合もありますから、確認しましょう。持病などで打てないときはかかりつけの獣医さんに一筆書いてもらうなどでもよいのかも、聞いてみましょう」

 

3. こんな物件は避けたほうがベター

立地や間取りなどが気に入っても、ペットと暮らすにはあまりおすすめできない物件もあるそうです。

 

・高層階の物件

「特に猫を飼う方に注意が必要なのですが、猫によっては人の足元をするりと抜けて、ドアの向こうにパッと出てしまったりすることがあります。気づかないうちにベランダに追い出してしまったり、クローゼットの中に閉じ込めてしまったり……ということもよく聞きます。

 

なかでも一番危険なのは、猫がベランダから足を滑らして落下してしまうことです。特に高層階では階下に落ちると命の危険を伴います。万一ベランダに出て落下してしまっても、怪我が軽く済む可能性のある2階までのほうが安心です。いずれにしても、猫を落下の危険から守るため、ベランダの手すり近くにはペットの足場になるようなものを置かないようにしたり、掃き出し窓にガードをつけてベランダには簡単に出られないよう気をつけましょう」

 

・ゴミ出しの日が決まっている物件

「ペットを飼うと、どうしてもゴミがたくさん出ますよね。犬であればペットシーツ、猫ならば汚れた砂が毎日出るので、マンション内にいつでも出してよいゴミ捨て場があるととても便利です。ゴミを出せる曜日が決まっている物件では、自室内にずっと汚れ物を置いておかなくてはならなくなります」

 

・散歩に行くまでの導線が面倒な物件

「毎日散歩する必要のある種類のペットを飼うときは、連れて出やすい、ということが好ポイントになります。戸数が多いのにエレベーターがひとつしかなければ、ペットを連れて散歩に出るときに誰かと一緒になりやすく、気を遣います。できれば、ペット専用エレベーターがあったり、ペット専用の出入口があると、気兼ねなく連れ出すことができます。

 

また、外へ出ても狭い道や階段が多くあるとペットと一緒に歩きづらい、ということもあります。そうなると散歩に出かけるのに気が重くなってしまうので、散歩の行き来がスムーズにできるか、という点も考えてみましょう」

 

4. ペットと暮らすならこんな部屋を選びたい

ペット共生型住宅であれば、それがいちばん理想的な環境です。

 

「まわりにも同じ環境の方がいて極端に気を遣う心配がないため、神経質に暮らさなくてもよくなります。ペット共生型住宅なら、引っ掻き傷がつきにくい壁紙にしていたり、汚れやおしっこに強い床材が使われていたりと、室内での暮らしも、傷や汚れを気にすることなく快適に暮らせます。また、よく足洗い場が入口にありますが、実は犬種によってはあまり使わないこともあるので、外側の施設というよりは、個々の部屋の暮らしやすさを見るのがおすすめです。新築なのにペット可であれば、オーナーさんがペット好きの可能性も。床材や壁紙にこだわりを持って作られている場合もありますから、チェックしてみましょう」

 

5. ペット可の賃貸物件で暮らすときの注意点

ペット可物件であっても、ペット共生型住宅であっても、周りに配慮して生活するのは変わりません。

 

「マンション内にはペットアレルギーの方もいらっしゃるかもしれませんし、小さな犬や猫でも怖いと感じる方もいらっしゃいます。そういう可能性があることも頭に入れて、共用部分を使うときには特に注意しましょう。また、鳴き声や足音などの騒音やニオイなどのトラブルは、苦情を申し立てるほうも我慢に我慢を重ねて言うことが多いのです。溝が深まらないよう、日頃からコミュニケーションをとったり、防音などの環境を整えたりしましょう。部屋の中の設備は、壁と床を傷つけないよう、下記のようなアイテムを使って工夫をするのがおすすめです」

 

ペットと暮らすときに準備したいアイテム

ここでは、ペットを飼うときにトラブルにならないよう、おすすめしたいアイテムをご紹介します。

 

・壁を傷つけないようにする爪とぎ

ペピイ「壁に貼れる爪とぎボード」
3520円(1枚・税込)

「猫は、壁の角や各部屋の出入り口付近で、爪とぎをしがちです。このように爪とぎボードを用意してあげると、ここで爪とぎしますから壁が傷みません。その他の保護したい壁には、爪とぎ防止になる半透明のシートを貼っておくといいでしょう。壁がつるつるしてひっかからず、その場所では爪とぎしなくなるのでおすすめです」

 

・防音と傷の保護になる床材

ペピイ「ピタッと吸着タイルマット 大判サイズ」
3300円(無地3枚・)
※他に柄物もあり

「薄いのに吸着力がよくてずれないので、使いやすい床用シートです。ペットの爪で傷になることを防ぎ、走っても滑りにくく、ペットの足にやさしくて安心です。部分的に洗えるシートなので、掃除も楽でしょう。おしっこや吐瀉物は、床が汚れるだけでなく、そのアンモニアが木材を傷めてしまい、臭いがしみついて悪臭の原因にもなってしまうのです」

 

・ペットの脱走防止に

日本育児「のぼれんにゃん バリアフリー 2」
1万8480円(税込)

「特に、猫はあっという間にすり抜けて外へ出てしまうので、ガードをつけておくのが安心です。ベランダだけでなく、玄関につけたり、入れたくない部屋との境にするのもいいでしょう。お留守番のとき、狭い小屋に入れるのはかわいそうでも、ペットがいる空間との仕切りにガードをしておけば、その部分だけ自由に動きまわることができ、ペットにとってもストレスがありません」

 

どんなときも癒してくれるペットの存在はとても大切なものですが、一度飼いはじめたら長くおつきあいしていく命でもあります。飼うときには慎重に考え、準備や住まいの選択を抜かりなく行い、ペットも人も心地よい暮らしができるよう努めましょう。

 

【プロフィール】

ペットライフコンサルタント / 薬師寺泰子

株式会社クララ代表取締役。住宅業界とペット業界の双方に携わった経験と知識を生かし、ペット共生住宅のコンサルタントとして活動の場を広げる中、企画設計コンサルティングをおこなった猫専用賃貸マンション1階に、猫専用ホテルのさきがけとなる「ねこままホテル」を開店。その他、動物専門学校講師、セミナー講演、雑誌、新聞、ウェブでの執筆などでも活躍。