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2022/1/25 10:15

マンションのロビーにSFの世界を作る新技術「空中タッチインターホン」とは?

コロナ禍で注目が高まった技術のひとつ、「非接触」。非接触の鍵をはじめ、ボタンに触らずとも停止階を指定できるエレベーターなどが、世に現れています。

 

そんななかで、大和ハウス工業・パナソニック・アスカネットの3社が合同で発表したのが「空中タッチインターホン」です。集合住宅のロビーに設置されるインターホンの非接触化を実現するこの装置、実用的な価値だけでなく、未来を感じさせる点でも興味深いものになっています。今回は、神奈川県川崎市で開催されている実証実験を取材しました。

 

未来しか感じない新技術「空中タッチインターホン」とは?

昨今、大きく伸びたのが通販需要です。出歩く必要がなくなりますから、感染リスクを抑えながら買い物を済ませられます。しかし、通販には配達員の存在が不可欠。”安全な通販”を実現するため、彼(女)らの感染対策も重要になります。

 

そこで必要になるのが、マンションロビーの非接触化です。大和ハウス工業によれば、ロビーに設置されるインターホンの非接触化は実現が難しかったそう。住宅の居住者であれば個別の非接触キーを活用すればよいのですが、臨時でマンションにやってくる訪問者にそういったキーを発行することはできないので、非接触化の方法が限られていたからです。

 

空中タッチインターホンは、その問題を解決すべく開発されました。部屋番号を指定して住人を呼び出す、インターホンとしての機能は従来と同一ながら、操作するボタンが物理ボタンではなく”空中に浮かぶ画像”であるという点に決定的な違いがあります。

 

↑新たに開発された空中タッチインターホン(写真下)。パナソニック製のインターホン(写真上)と連携し、操作内容を同期

 

上の写真下部にあるのが、空中タッチインターホンです。写真ではやや分かりにくいですが、操作画面を肉眼で見ると、その名の通り空中に浮かんでいます。画面が浮かぶ空間を”タッチ”することで、完全非接触のまま住人を呼び出せるという仕組みです。

↑空中タッチインターホンの仕組みの概略図。インターホンや室内機、自動ドアなどと連携するプログラムは、パナソニックが開発

 

実証実験機を操作してみると……画面に触れずとも、ちゃんと反応してくれました。職業柄多くのデジタル端末に触れている筆者も、空中をタッチ操作したのは初めてです。その操作感は斬新なもので、SF映画の世界を思わせるワクワク感すらありました。

↑空中タッチインターホンに表示されている操作画面をタッチしている様子。なお、操作画面が視認できるのは、インターホンの正面に立った場合のみです。そのため、この写真ではインターホンの画面が大きく歪んで見えています

 

↑空中に浮かぶボタンを押下する様子。指の直下にある「5」のパネルの色が変わっており、操作が反映されているのがわかります

 

さてここからは、空中タッチインターホンの仕組みを見ていきましょう。空中に画像を表示する装置の内部には、一枚のモニターが入っています。そのモニターが放つ光を本体の前面にある特殊な樹脂パネルが屈折させることで、何もない空中に画像を形成しています。

 

この樹脂パネルの正体は、空中結像技術のトップメーカー・アスカネットが開発した「ASKA3D」。この1枚の板によって、何もない空間に画像を表示させることが可能になったのです。

↑空中タッチインターホンのデモ機を横から見た写真。赤線で囲った部分にモニターを内蔵しています

 

↑樹脂パネル「ASKA3D」の内側を覗き込むと、モニターが設置されているのがわかります。なおこの写真はデモ機のため、インターホンの操作画面とは異なる画像が表示されています

 

空中タッチインターホンの操作画面は、モニターの位置から樹脂パネルを境目にして、反転したところの平面に表示されるよう調整されています。そして、パネルの上部に設置されたセンサーが、空中に現れた操作画面をタッチする指を検知。その操作内容が本機と連携したインターホンに伝わることで、居住者の呼び出しができるのです。なお、空中タッチインターホンのセンサーが反応する操作面は、空中に画像が表示されるエリアと同様になるよう調整されています。筆者による実測値では、本体から10cm程度離れた場所でもボタンを”押す”ことができました。

 

↑青い点線で囲ったあたりに、インターホンの操作画面が表示されます。操作画面のサイズは、実証実験機では7インチですが、10インチ、13インチのものも開発されています

 

↑樹脂パネル「ASKA3D」が、空中に画像を結像させる仕組みの模式図

 

マンションの来訪者に、素敵な驚きをもたらす

実証実験機は大和ハウス工業が神奈川県川崎市で開発中の分譲マンション「プレミスト津田山」のモデルルームに設置されており、同所を訪れた人を対象に、空中に表示される画像の視認性、操作性などのアンケートを取っています。実証実験は2022年1月から始まっていて、およそ6か月の期間行われる予定です。

 

ちなみに筆者が見た限りでは、視認性は現時点でもかなり高そう。モデルルームの室内は十分な明るさがありましたが、空中に現れた画像は、筆者の目にくっきりと映っていました。一方で、操作に関してはややコツが必要な印象で、その感覚を掴むまでにかかった時間は30秒ほど。そのコツを言葉で表すなら、“空気を押し込む”ようなイメージで操作するということです。うまく操作ができるようになった暁には、SF映画のような未来を、短時間ながら体感することができました。

 

今回の発表を行った3社によれば、プレミスト津田山のモデルルームで行っているのはあくまで実証実験であり、実際に販売されるプレミスト津田山のロビーに空中タッチインターホンが導入される予定は現状ないとのこと。また商品化までには、実証実験終了から1年程度かかると見込まれており、普及にはまだまだ時間を要します。ですが本機が商品として世に出た際、マンションの来訪者に素敵な驚きをもたらすものになるのは、間違いなさそうです。

 

「プレミスト津田山」モデルルーム所在地

プレミスト津田山マンションサロン

神奈川県川崎市高津区溝口2-26-8

※新型コロナウイルス感染拡大防止のため、モデルルームの内見は、当面予約制になっています。

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