ライフスタイル
2023/1/29 6:30

家庭での再生可能エネルギー利用の最進化形。パナソニックの新システム「eneplat」に注目

省エネ関連のソリューションを開発するパナソニック エレクトリックワークス社。同社は電気自動車(EV)関連の技術を開発しており、直近でもEVの充電器シェアリングサービスを世に送り出しています。その同社が、2023年2月から受注を開始するのが、V2H蓄電システム「eneplat」です。

 

Vehicle to Homeの略であるV2Hは、太陽光発電でEV(電気自動車)に溜めた電力をクルマの走行だけでなく家庭でも使えるようにするシステムです。eneplatはこのシステムの効率を高めたソリューションで、太陽光で発電した電力の自家消費を促進し、省エネはもちろん電気料金の抑制にも寄与、さらには災害時の非常用電源としての可能性を拡げるものとなっています。その仕組みや効果について、取材しました。

 

太陽光による発電と自家消費の仕組み

eneplatの話に入る前に、太陽光による自家発電と、そこで生み出された電力の消費がどのように行われているか、その流れを解説しましょう。なおここでは、太陽光パネルに加えて蓄電池を設置し、“eneplatに対応していない”V2Hスタンドを導入、EVを使用している家庭を想定します。

 

【電力が自家発電されてから消費されるまでの流れ】

1、太陽光パネルが直流の電力を発電する

2、パワーステーションが直流の電力を交流に変換

3、交流に変換された電力を家庭で消費。余った電力は蓄電池用コンバータを通して蓄電池、またはEVに溜める

4、太陽光発電ができない夜間などに、蓄電池に溜めた電力を消費。V2Hスタンドを設置していることで、EVに溜めた電力を家庭用の電源として使うこともできる

 

太陽光パネルが発電する電力は直流です。家庭で消費する電力は交流であるため、そのままでは使用することができません。そこで、パワーステーションが直流から交流への変換を担います。

 

また蓄電も、蓄電池を設置しただけでは不可能です。蓄電の制御を行う蓄電池コンバータを併置する必要があります。また、蓄電池とEVを両方設置している家庭では、蓄電池かEVの片方を優先的に充電し、それが満充電になってから、もう片方への充電を行います。

↑パワーステーション(左)と蓄電池用コンバータ

 

蓄電池に溜めた電力は、夜間をはじめとした太陽光発電ができない時間に消費することになりますが、V2Hスタンドを設置している場合は、EVに溜めた電気も家庭で使用することが可能です。この機能は、災害時など、緊急で電力が欲しい際に役立ちます。

↑蓄電池。右のほうが厚みがあるぶん大容量

 

太陽光で電気を作ってから、自家消費されるまでの流れをご理解いただけたでしょうか。ここからは、eneplatがこの流れをどう変えるのかについてお伝えします。

 

電力の自家消費率を高めるeneplat

上で紹介した方式には、ある問題が潜んでいます。それは、自家発電した電力の自家消費率が低いことです。そんな問題が起きてしまう理由は、蓄電池とEVへの同時充電ができないことにあります。というのも、蓄電池とEVの片方に充電する場合では、一度に送れる電力量の限界が低くなってしまい、発電された電力が余りやすくなってしまうのです。

 

たとえば、蓄電池に充電できる速度は4kW程度が限界だとします。もし太陽光発電が5kWの発電をできたとしても、残った1kWをリアルタイムで消費しきれない場合、残りは売電するしかありません。しかし、その余った電力を電力会社に売ることなく、自家で溜めて消費できれば、電力の自家消費率がアップします。

 

その問題を解決するのがV2H蓄電システムのeneplatです。eneplatは、蓄電池とEVへの同時充電を可能にすることで、電力の自家消費率を向上させます。

 

電力の自家消費率アップには、2つのメリットがあります。まずは、経済的なメリット。電力会社へ売電した際の電力価格は、買電した場合に払う額よりも低くなっているため、同量の電力を消費するとしても、自家発電したものを消費する方が経済的といえます。

 

2つめは環境面のメリットです。自家発電した電力は100%再生可能エネルギーですから、これの自家消費率を高めれば結果としてCO2排出量が減り、脱炭素化につながります。

 

またeneplatは、蓄電池とEVからの同時放電にも対応。これにより瞬間的に自家消費できる電力量が増えるので、停電時など、一度に多くの電力が必要になる場合にも安心です。eneplatは、経済性、環境への負荷軽減、災害時の安心と、3つのメリットを併せ持っているといえます。

↑eneplatの仕組みの模式図

 

eneplatは、導入へのハードルが低いのも特徴です。すでに太陽光発電パネルと蓄電池コンバータ・蓄電池を設置している家庭であれば、V2Hスタンドを新たに増設するだけでeneplatを導入できます。

↑eneplatの新型V2Hスタンド。EVに充電するだけでなく、EVに溜めた電気を家庭向けに送ることもできます

 

自家消費率をさらにアップさせる、エネルギーマネジメントシステムとの連携

eneplatは、この夏にバージョンアップを予定している家庭用のエネルギーマネジメントシステム「AiSEG2」と連携します。今後のアップデートでAiSEG2に新機能として実装される「AIソーラーチャージPlus」が、eneplatと連携して、電力の自家消費率をさらに引き上げます。

↑AiSEG2の画面では、発電量と電気の使用状況がわかりやすく表示されます

 

具体的には、翌日の日射量予測から太陽光による発電量を推測し、蓄電池に貯めておく予備電力量を自動で調整します。停電時の備えとして、蓄電池に一定以上の電力を予備として蓄えているのは従来のシステムと同様ですが、これまでは予備電力量が固定されていました。

 

しかしAIソーラーチャージPlusでは、予備電力量を翌日の日射量に応じて可変できるシステムを搭載。翌日に多くの発電が見込める日の前の晩から未明にかけては、蓄電池に溜めた電力を積極的に使うことで、自家消費率のアップに貢献します。

↑パナソニックの従来システムと、AIソーラーチャージPlusの差

 

また気象警報が発令された場合には、万が一の停電に備えて蓄電池とEVのバッテリーを満充電にするようAiSEG2が指示。もしも停電が発生した場合には、エコキュートの自動沸き上げを中止して、電力の消費を抑えるよう自動で制御します。これにより、停電時でも、短期間であれば普段と変わらない暮らしができるだけの電力・出力が確保されます。

 

なお、AiSEG2がeneplatと連動できるようになるのは夏に予定されている同システムのバージョンアップ以降。eneplatの受注は2月21日に先行してスタートしますが、その点は注意が必要です。

 

太陽光発電の自家消費率を90%に向上させ、年間で2.2tのCO2を削減

パナソニックのシミュレーションによると、AiSEG2、V2Hスタンド、蓄電池、エコキュートをあわせて使うことによる自家発電電力の自家消費率は、90%にもなります。蓄電池とエコキュートのみを導入した場合の自家消費率は50%にとどまるため、その効果は大きいといえます。またeneplat導入後のCO2排出量削減効果は、年間で一家庭2.2tにも及ぶそうです。

 

太陽光発電による経済性を最大限にしつつ、環境負荷を抑え、災害への備えにもなるeneplat。家庭における再生可能エネルギー利用の最先端を走るシステムになりそうです。