ライフスタイル
2023/8/14 21:15

自分さえよければいいの? 工藤勇一先生が教える “誰かのため” を意識する意味

「みんな一緒」に経済成長できる時代は終わり、多様な文化を認めながら自身で考えて答えを導く、いわば「自律」の力が求められる時代。自分はいったい何がしたいのか、どう生きていくのか? 子どもも大人も、当事者意識を持つことが求められるようになったのです。

 

学校にはびこる “当たり前” を撤廃し、自律型教育を進める横浜創英中学・高等学校校長の工藤勇一先生。著書『きみを強くする50のことば』(かんき出版)には、子どもも大人も知っておきたい自律のヒントがたくさん詰まっています。これからの時代に必ず役立つ、工藤先生のことばをお届けします。

 

「何のため」と「だれのため」を意識する。

自分がやっていることが「何のため」と「だれのため」になっているかと、常に考えている人はあまり多くないかもしれません。これらを考えなくても生きていけますし、自分のことでせいいっぱいだと思っている人もいるでしょう。

 

ではなぜ、このメッセージを『きみを強くする50のことば』に入れたのかというと……

 

それは、社会の中で「何のため」と「だれのため」を意識して行動している人の方が、 “幸せ” を感じやすいからです。「自分が楽しいからOK」と自分だけの幸せを優先するよりも、「自分の行動が、何か(もしくはだれか)の役に立った」と思えた時、心がウキウキする、そんな経験はありませんか?

 

例えば、企業においても「何か」と「だれか」のための事業なのか、考えないと破産してしまいます。自社の利益だけを追求していても、長く続く企業にはなれません。そこで働く社員とその家族、取引先、さらには顧客、そして企業が属する地域のために取り組んでこそ、成長できるのではないでしょうか。尊敬を集める経営者だった京セラの稲盛和夫さんも、「企業は何のためにあるか?  社会の幸せのためだ」と、公明正大に事業を行うことを伝えていた先駆者ですね。

 

今日ではSDGsの話題が、多くのメディアで取り上げられています。誰一人取り残さない社会にするためには、自分だけが幸せならいいという考えでは不十分です。社会のあるべき姿を想像しながら、一人一人が「何のため」と「だれのため」を意識することで、地球全体の幸せにつながっていくでしょう。

 

『きみを強くする50のことば』(かんき出版)
「どうしたら、すてきな大人になれるだろう?」___やさしい絵と、心に響く50の言葉が並ぶ本書は、絵本のようでいて、大人でもハッとするような人生のヒントが満載。「自分をきたえるヒント」「人とつながるヒント」「学ぶときのヒント」「挑戦するためのヒント」「楽しく生きるヒント」の5つの切り口から紹介されている。

 

プロフィール

横浜創英中学・高等学校校長 / 工藤勇一

1960年山形県生まれ。山形県と東京都の公立中学校の教員を務め、東京都や目黒区、新宿区の教育委員会へ。2014年から千代田区立麹町中学校の校長になり、宿題なし・テストなしなど「学校の当たり前」を見直し、子どもたちの「自律」を育んでいくことに注力。これらの取り組みはさまざまなメディアでも紹介されている。2020年4月より横浜創英中学・高等学校校長に就任し、さらなる教育改革に取り組んでいる。
Twitter