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2024/3/8 20:05

3月8日の“国際女性デー”に知りたい、世界の女性を取り巻く現実と日本のジェンダーギャップ指数が低い理由

毎年3月8日は「国際女性デー」。日本では数年前からメディアでも取り上げられたり、イベントが行われたりするようになりました。この日にミモザを贈るイタリアの風習にならい、ミモザをシンボルにして国際女性デーが紹介されることも。とはいっても、その名称から「女性のための日」というのは何となくわかるものの、実際はどのような意味を持ち、何をする日なのかを理解している人はまだまだ少ないかもしれません。

 

国際女性デーとはどんな日なのでしょうか? UN Women(国連女性機関)の日本事務所に、その歴史やこの日が持つ意義についてうかがいました。

 

先人たちが積み上げた
国際女性デーの歴史とは?

 

国際女性デーとは、いつ誕生し、どんな歴史を持つ日なのでしょうか?

 

「国際女性デーとは、女性が達成してきた成果を認識する日です。歴史を辿ると、20世紀初頭に北米とヨーロッパで行われ始めた労働者運動が発端とされています。労働者運動の流れを受け、1909年にアメリカ・ニューヨークで女性縫製労働者よる労働条件の改善や賃上げを訴えるストライキが起こりました。女性たちが主体となって声を上げたことが称えられ、同年の2月28日を『全米女性の日』とし、初めて記念行事が行われました。1910年には国際組織である『社会主義インターナショナル』が女性の権利を求める運動に敬意を表し、デンマークで行われた会合で『女性の日』を制定。翌年1911年3月19日に初めて『国際女性デー』の記念行事が行われたのです」(UN Women 日本事務所広報、以下同)

 

100年以上も前から女性たちによる抗議や改革のための運動が起こり、その勇気ある行動が称えられ、次第に認められるようになっていきました。ではいつから、国際女性デーは3月8日となったのでしょうか?

 

「1913年~1914年の第一次世界大戦中、ロシアの女性が戦争に反対する平和運動の一環として、国際女性デーの記念行事を行いました。開催されたのは2月の最終日曜日。現在多くの国で採用されているグレゴリオ暦でいうと3月8日にあたります。ロシアの女性は1917年2月の最終日曜日に、再び抗議とストライキを決行。ロシア革命で知られる『パンと平和』を求めた行動でした」

 

それから年月を経て、国際婦人年にあたる1975年に国連が3月8日を『国際女性デー』と定めたのです。

 

「歴史としてまとめると端的ではありますが、私たちの大先輩である女性たちが勇気を持って行動を起こしてきたからこそ、今の私たちがあります。国際女性デーは、女性の権利を獲得してきた先人たちを称える日として設けられたのです」

 

日本における
国際女性デーの存在感

 

日本においても、明治・大正時代に起こった「女性解放運動」をはじめとする女性による改革運動が行われてきました。現在私たちが社会的権利や参政権を持ち、社会参画できるようになったのも、先人たちが行動を起こしてきたおかげです。ですが、日本で国際女性デーを耳にするようになったのは比較的近年のように感じます。日本が国際女性デーを意識するようになったのはいつ頃からなのでしょうか?

 

「日本で大々的にイベントなどが実施されるようになったのは比較的最近のこと。国連のイベントで言うと、1995年に中国・北京で『第4回世界女性会議』が開かれ、この会議から15周年目にあたる2010年に、日本の国連諸機関が『国際女性の日2010 国連公開シンポジウム』を開催しました。日本社会の男女格差の課題や、企業等の取り組みをシンポジウムで紹介し、日本社会でのジェンダー平等に向け、これまでの進展とこれからの課題を議論した大きなイベントとなりました」

 

この頃から次第にメディアを通し、少しずつ国際女性デーが世間に伝えられるようになったそう。

 

「最近は国際女性デーのためのイベントも各地で行われていますよね。日本でジェンダー平等に向けた取り組みが増えてきていることと連動して、国際女性デーの認知度も高まってきているのではないでしょうか」

 

世界各地で行われる
国際女性デーのイベントは?

今では国際女性デーのイベントが世界中で行われています。世界各国ではこの日をどのように過ごしているのでしょうか?

 

「UN Womenの各国事務所が主催したイベント事例をあげると、メキシコではジェンダー平等のためのマラソン大会が開かれており、2023年に開催した際は参加者が3万6000人におよぶ大規模なイベントになったと聞いています」

 

2023年(左)に、メキシコで開かれたマラソン大会の参加者たち。コロナ禍前の2019年(右)にも大規模に開催されました。

 

「コロンビアでは2023年に、UN Women事務所がドキュメンタリー映画を作りました。女性たちによる権利向上を求める運動がどのように行われてきたのかについて、当時の葛藤や課題などが彼女たちの言葉で力強く語られている内容です。国際女性デー当日には映画の上映会が行われました。
こうしたイベントが行われることで、『ジェンダー平等を前進させよう』という結束力も生まれますし、意思を表明する場にもなりますよね。女性だけでなく、男性やほかのジェンダーの方にも参加してもらうことで、より大きなメッセージ性が生まれると思っています」

 

女性と少女たちを守るために
UN Womenが取り組んでいること

世界では男女格差による問題がまだまだ存在しています。現在どのようなことが問題視されているのかを、UN Womenの活動とともに紹介します。

 

「UN Womenは、『ジェンダー平等と女性のエンパワーメント(=力を引き出すこと)』を推進していくための機関です。女性や少女が必要とする支援は、男性とはまた違ったニーズがあり、どうしても見落とされがちです。私たちはそうしたニーズがしっかりと満たされるための取り組みや支援を行っています」

 

支援については、次の4つの優先的な柱が定められています。

1.公共スペースにおけるガバナンスと参画

「政治や経済をはじめとする多くの分野や場面において、女性リーダーや女性の参画が少ない現状を好転させ、女性がリーダーシップに参画できるよう取り組んでいます。例えば、女性が選挙に立候補するために必要なスキルを身につけることを目的としたプログラムなどを行っています」

 

2.女性の経済的エンパワーメント

「女性は経営者として、従業員として、家庭での無償ケア労働の担い手として、経済に大きく貢献しています。しかし、ジェンダー不平等により、不安定な、あるいは低賃金な仕事に就かざるを得ない状況や、リーダー的役割のポジションに就くことができないといった状況も生まれています。こうした現状から、働き甲斐のある仕事で経済的な自立を実現すること(=ディーセントワーク)をサポートしています」

 

3.女性と少女に対する暴力の撤廃

「暴力について、私たちは特に大きな問題として捉えています。親密なパートナーから受ける暴力などは、開発途上国だけでなく日本でも問題になっていることです。
毎年11月25日(女性に対する暴力撤廃の国際デー)~12月10日(人権デー)までをジェンダーに基づく暴力に反対する16日間とし、各市民団体などとともに暴力撤廃に向けた活動を行っています」

 

4.持続可能な平和とレジリエンスの構築に、女性と少女が関与・貢献する

「レジリエンスとは、『ショックがあったときに耐えうる強靭性を身に付けていくこと』を指します。自然災害の復興や紛争の予防、人道的活動といった平和構築の場において、女性が主体者として入っていくことで、女性の視点が反映された形で平和や安全保障が実現できるようサポートしています。
自然災害時の女性特有の課題である、生理時の対応や性被害については、日本でも話題に上ることです。そこには、災害時やその直後の避難時において、意思決定や取りまとめを行う場に女性が入っていないことが想像されます。意思決定の場に女性が入っていくことで、女性ならではの考えや悩み、課題が反映されていくはずです。これは女性だけでなく、障がいを持つ方、LGBTQの方、多様な人たちの参画が必要だと考えています」

 

被災した女性や少女に向けてディグニティキットを届ける支援も。キットの中には、生理用品や下着のほか、石けん、歯ブラシ、歯磨き粉、懐中電灯などが入っています。(C)UN Women

 

ジェンダー平等において話題になる
ジェンダーギャップ指数とは?

ジェンダー平等とは、国連で定められた「持続可能な開発目標:SDGs」の5つ目の目標です。ジェンダー平等を語るとき、世界経済フォーラムが発表している「ジェンダーギャップ指数」が話題になります。これは、各国の政治、経済、教育、健康の4つのカテゴリーから見た、男女格差の現状を評価した指数です。2023年の日本の指数は146カ国中125位とかなり低いものに。ここにはどんな原因があるのでしょうか?

 

「UN Womenとしてデータを集めたものではありませんが、客観的に評価を見てみると、教育と健康に関して日本はとても優秀なんです。義務教育をはじめ、教育にはそこまで男女差がないですし、健康寿命も男女ともに高いですよね。問題は政治と経済。政治においては、女性が首相を務めたことはまだないですし、大臣含め、議員における女性の数が少ないという点が問題としてあがってきます。経済もしかりで、CEOの数も管理職の数も女性はまだまだ少ないことが要因です」

 

ただ、日本の企業も変わろうとしている真っ只中にあります。

 

「男性が育児休業を取れるようにしたり、産休・育休明けの女性が職場復帰しやすくしたりと、女性が継続してキャリアを積めるようなシステムや制度が整えられてきているんです。ですが、変えていくにはどうしても時間はかかりますし、周りの理解も必要。今から何ができるかを各企業が考え、取り組み続けることが大切だと思います」

 

女性リーダーの育成と促進のために、UN Womenでは若い女性リーダー向けにワークショップも開催しています。

 

「女性の政治参画が低いという問題は私たちも重大なこととして捉えています。2023年8月、UN Women 日本事務所では『未来女性リーダー育成ワークショップ』を開催しました。15歳~24歳までの参加者30名に向けて、政治経済に関わらず、意思決定の場にどのようにして女性が参画していけるのか、逆にその足かせとなっている要因は何かを考えるという内容です。参加された方からは、『リーダーシップについて自分の意見を語ったり共有し合えたりする場があることがうれしかった』というお声をいただきました。2024年もまた開催できたらと考えています」

 

ワークショップでの様子。大学生や社会人だけでなく、高校生の参加もありました。

 

古くからある習慣を断ち
意識から改革していくために

一昔前の日本では、「男性は一家の大黒柱として働き、女性は家で家事や子育てをする」という考え方が主流でした。ジェンダー平等を達成するためにはこうした伝統的な考え方や構造を変えていく必要があります。

 

「時間も必要ですし、変わろうとする意識も必要ですよね。女性においても『男性のほうができる気がする』ではなく、『自分にもできるんだ』と意識改革することが大切だと考えています」

 

 

アジアだけを見ても、日本以外にも古くからの伝統によってジェンダー平等が進みにくい国は多いのだそう。例えば近年経済成長が著しいインドには、現在も根強い男女格差のしがらみがあると言います。

 

「インドでは、男女の役割がきっちりと決まっていることが多くあります。街中で車を運転している人は大半が男性ですし、家事を手伝ってくれるメイドさんはほぼ女性。貧困のために路上でお花を売っていたり、小さい子どもと外で暮らしていたりする人も見かけますが、女性がとても多い傾向にあります。経済は発展しているけれど、同時に経済格差はどんどん広がっています」

 

そういった現状は、もしかしたらインド国内にいる人にとっては、いまだ “普通のこと” なのかもしれません。

 

「結婚も妊娠も自分で決められず、職業も未来も自由に選べない女性たちもいる。現状で幸せだと感じている一方で、彼女たちも心のどこかで無力さを感じているように思います。そうした彼女たちにこそ、ほかにも選択肢があると気付いてもらうよう支援をすることが、自尊心を持って一歩踏み出すことにつながるのではないかと。まさにエンパワーメントが役立つのです」

 

国際女性デーに
私たちができること

国連が発表した2024年の国際女性デーのテーマは、「女性に投資を。さらに進展させよう。」です。ジェンダー平等を達成させるための重要な課題として、支援するための資金不足があげられています。

 

「新型コロナウイルス感染症の流行、世界各地での紛争、気候変動による災害などの影響、そして二極化する社会など、今まで以上に女性の平等な権利のために行動を起こすことが重要になっています。2017年と比べ、紛争下に身を置く女性は50%も増加。特に紛争下では、女性や少女は影響を受けやすく、性暴力も発生しやすくなります。彼女たちが必要とする支援は、生理・妊娠・授乳に不可欠なヘルスケア、水、衛生施設など多数。ですが現在、年間3600億米ドル、日本円で約51兆円の資金不足という危機的な状況で、早急な対応が必要です。今年の国際女性デーは、この現状をまずは世間に伝えるために呼びかけていく日にしていきます」

 

国際女性デーに向けて、私たちができることはあるのでしょうか?

 

「何かアクションを起こそうと気負わなくても、一日ふと立ち止まり、国際女性デーに思いを馳せるだけでもいいと思います。今どんなことが日本や世界で課題になっているのかを考えてみるだけでも十分なのです」

 

 

国際女性デーに思いを馳せ、世界の課題について考えてみるための方法をいくつか教えていただきました。

 

・国際女性デーの歴史を振り返り、女性がこれまでに歩いてきた道のりを振り返ってみる
国際連合広報センター」のサイトでは、国際女性デーの歴史を紹介しています。

 

・UN Women日本事務所のSNSから、世界各国でどんな問題が起こっているか情報を得てみる
世界の問題をわかりやすく伝えています。「女性の政治家や学者、宇宙飛行士など著名人の言葉も紹介されているので、それらを読んで勇気をもらうのもいいですね」
UN Women 日本事務所公式X
UN Women 日本事務所公式Instagram

 

・各地で開かれている国際女性デーのイベントに参加してみる
UN Women日本事務所では、以下のイベントを予定しています。
国際女性デーシンポジウム
ジェンダー平等の現在とこれから~みんなでデザインする自分色の未来~
「2024年3月8日に、UN Women 日本事務所と事務所がある文京区との共催イベントが行われます。当機関日本事務所長による講演やパネルディスカッション、各団体の活動発表などが行われます。オフラインのみですが、どなたでもご参加いただけるイベントです」

 

「ほかには企業広報やマーケティング担当者に向けて、メディアと広告から有害なステレオタイプ(固定概念)を撤廃することをテーマにしたイベントも予定しております。当機関のイベントだけでなく、各団体がさまざまなイベントを行っていますので、興味を持たれたものがあればぜひ足を運んでみてください」

 

チャリティランやふるさと納税…私たちにもできる慈善活動まとめ

 

一人でも多くの人が国際女性デーの背景を知り、少しでも意識してみることが大切だと感じます。今年の3月8日は、自分にできること、興味を持ったことから目を向けてみませんか。

 

 

Profile

UN Women (国連女性機関)日本事務所
ジェンダー平等と女性のエンパワーメントのための活動を行う、国連機関の一つ。国連加盟国がジェンダー平等を達成することを目指し、国際基準を策定する支援に取り組んでいる。また、世界全域で女性と少女を支援するための法律や政策、プログラム、サービスなどの企画立案を政府や市民社会と協力して行っている。
UN Women Japan 公式サイト