スポーツ
2019/3/26 11:30

W杯が日本開催!ラグビー観戦をビギナーが楽しむポイントとは

2019年9月20日から、約7週間かけて48試合が行われる「ラグビーワールドカップ2019日本大会」。4年に一度のワールドカップが日本で開催されるとあって、ラグビーへの注目度が高まっています。

 

とはいえ、ルールまで把握している人は意外と少ないのではないでしょうか? そこで今押さえておきたい、ラグビーの基礎知識と楽しみ方を、1972年創刊のラグビー専門月刊誌『ラグビーマガジン』の編集者、田村一博さんに教えていただきました。

 

 

まずは、これを知っておかなければ始まらないという、超基本的精神から。

 

「One for all, All for one(ひとりはみんなのために、みんなはひとりのために)」

 

日本のラグビーには、そのプレーの根底にさまざまなスピリット(信念)があります。最も有名なのは「One for All, All for One」という言葉ですが、実は元はフランスの小説「三銃士」の中に登場したもの。

 

「ラグビーのメンバーにはそれぞれ役割があり、全員が協力することが求められるスポーツです。得点につながるプレーをした人だけでなく、チーム全員の努力があってこそ勝つ、という言葉です。また、ノーサイドの精神という言葉もラグビーでは有名です。試合中はお互いに目を吊り上げて戦っているのに、試合が終わったら握手をして、お互いの健闘を称え合うスピリットが大切にされています」(『ラグビーマガジン』編集者・田村一博さん、以下同)

 

日本のラグビーが愛される理由

ラグビーの選手は、スポーツ選手の中では体格の大きな人が多いのですが、他国のラグビー選手と比較すると、とても小柄です。つまり日本人選手は、その身体的ハンディを負いながら戦っていると言えます。

 

「日本ラグビーには、他国とは違う、テンポのある素速いプレーをすることが求められます。小さい者が大きな者に勝つために、身体的な特徴をハンディではなく活かせるようなプレーを確立しながら、日本は強くなってきているのです。また、元フランス代表の主将だったジャン=ピエール・リーブが言った、“ラグビーは少年をいち早く男にし、大人にいつまでも少年の心を持たせる”という言葉があります。ラグビーが愛されている理由は、この言葉通りである気がします」

 

3分で分かる! ラグビーのルール

ラグビーは1チーム15人で構成され、15人対15人で戦う「陣取りゲーム」です。ひとつのボールを奪い合いながら相手チームの陣地に攻め入り、ボールを持って前進していくことで陣地を広げていきます。相手のゴールラインの向こう側(インゴール)にボールを持ち込んで、地面にタッチすると、トライとなり得点が入ります。

 

知っておきたいポイント 1.プレーによって得点が違う
サッカーなどと違って、トライすれば一点が入る、という得点方法ではありません。トライは5点で、またトライが成立すると、キックで2点の追加得点が得られるチャンスが与えられます。また、ワンバウンドさせたボールをキックするドロップキックによる得点は3点になります。さらに、相手が反則したときに与えられる“ペナルティーゴール”というチャンスでは、キックしてゴールすると3点が追加されます。

 

「試合の残り時間が少なければ、5点が入るトライを狙わないと逆転できないでしょうし、反対にこちらが勝っているときは、ペナルティーゴールのチャンスを向こうに与えてしまわないよう、反則に気をつけるなど、場面場面で戦い方が変わっていくのがおもしろいところです」

 

 

知っておきたいポイント 2.ボールを自分より前に投げてはいけない
持っているボールを自分より前に投げると反則になります。「味方にパスするときは自分のいるラインより後方に投げて、ボールをつなぎます。また、持っていたボールを前に落とすと、それだけで“ノックオン”という反則になってしまいます。たったこれだけのミスでも、相手にペナルティーゴールのチャンスを与えることになってしまうので、時間がなく焦るような場面でも、正確さと慎重さが求められるスポーツなのです」

 

知っておきたいポイント 3.各ポジションの基本的な役割と特徴
ラグビーでは、15人のうち8人がフォワード、7人がバックスという役割につきます。「選手同士のぶつかり合いを避けることができないのがフォワードです。バックスより体が大きく、力の強い選手が求められます。一方、フォワードの獲得したボールを得点につなげることが多いバックスは、ボールまわしのテクニック力が高いことや、足が速いことなど、華麗なプレーを得意とする選手が多いです」

 

●フォワード(FW)
前線で体を張ってチームを下支えするため、身体的に優れた選手がつくことが多いポジション。

 

 

・プロップ(PR/背番号1、3番)
スクラムの最前列で相手とぶつかり合い、押し合うポジション。丸く大きな体の選手がつくことが多く見られます。

 

・フッカー(HO/背番号2番)
プロップ同様にスクラムの最前線でぶつかり合いますが、ラインアウトのスローイングや、スクラムの中でボールを後方に送るために蹴る役割を果たすため、器用さも求められます。

 

・ロック(LO/背番号4、5番)
空中戦と言われるラインアウトでボールを競い合うため、背が高い選手が多いです。また、スクラムの真ん中でパワーを発揮する必要もあります。国際的には2m超の選手も多く、男の中の男のポジションと言う人もいます。

 

・フランカー(FL/背番号6、7番)
常にボールと一緒に動きまわり、真っ先にタックルします。動き続け、タックルし続ける勇気とタフさが求められます。

 

・ナンバーエイト(NO8/背番号8番)
フランカーの仕事に加え、もっとボール前に出る攻撃力が求められます。自由さもあり、フォワードのスターポジションです。

 

●バックス(BK)
グラウンド後方でゲームをコントロールしてチームをリードしていくため、足の速さやボールを蹴る能力の高い選手がつきます。

 

 

・スクラムハーフ(SH/背番号9番)
フォワードとバックスのつなぎ役です。試合中は、ずっとパスをし続けるので、小柄ですばしっこく動き続けることが求められます。

 

・スタンドオフ(SO/背番号10番)
チーム全体を動かす司令塔と呼ばれ、ゲーム全体をデザインする役目です。パスもキックもうまく、広い視野も求められる花形ポジションです。

 

・センタースリークウォーターバック(CTB/背番号12、13番)
ボールを持って前に出ることが多いポジションです。タックルする機会も多く、頑健な体躯も求められます。

 

・ウイング(WTB/背番号11、14番)
仲間が運んでくれボールをトライにするポジションです。チームでいちばん足が速い人が多いです。

 

・フルバック(FB/背番号15番)
キックを蹴ったり、相手キックを受けたりするポジションです。また、チームの後方に立つので、全体を動かす指示の声も重要です。ディフェンダーとしては「最後の砦」と呼ばれています。

 

ラグビー観戦の楽しみ方とは?

 

ラグビーを見るのが初めての人には特に、スタジアムで観戦することをおすすめします。

 

「大きな体の男性同士が本気でぶつかり合う姿は、格闘技を思わせる場面もあり、迫力があります。タックルしてぶつかり合う音を感じたり、スタジアムのお祭りのような賑わいを味わったりすることで、試合観戦がより楽しめるでしょう。ラグビーには細かなルールもあり、席から見えづらい場面などでは、試合を見ていてわかりにくいところもありますが、最初からルールをすべて勉強していかなくても、そのリアルな迫力を楽しみに行ってみてください」

 

では、いよいよ開催が近づく日本大会は?

 

「ラグビーワールドカップ2019日本大会」はこうして楽しむ!

 

W杯での注目ゲーム
9月から開催されるワールドカップの中で、注目すべき試合は2つです。

 

・日本VSアイルランド、スコットランドの試合
「予選リーグ(プールA)では、日本、ロシア、サモア、アイルランド、スコットランドの5カ国の中で2位までに入らないと、決勝トーナメント(8チーム)には出場できないのです。過去の大会で、日本は決勝トーナメントには進んだことがありませんから、格上のアイルランド、スコットランドのどちらかには絶対に勝たなければいけません。この2カ国との試合は、ぜひ観てほしいです」

 

・世界の強豪同士の試合
「予選リーグ(プールB)のニュージーランド×南アフリカ、プールCのイングランド×アルゼンチン、プールDのオーストラリア×ウエールズは、世界中のラグビーファンから注目される試合です。世界の強豪と言われる選手が集まったチーム同士の戦いは見ものです」

 

覚えておきたい日本代表の選手たち

 

現在、日本代表に選ばれた15名の選手は、元日本代表だったヘッドコーチとともに、ワールドカップに向けてトレーニングを続けています。

 

「現在の日本代表は、世界ランキング11位です。なかでも注目すべき選手は、2015年大会でも主将を務めたリーチ・マイケル。ラグビーが強いニュージーランドの出身で、世界でも名の知られた選手です。ポジションはフランカー(6番か7番)を務めています。また、ウイングの福岡堅樹選手は爆発力があり、50mを5.8秒で走る脚を持っていて、世界レベルのスピードを出す選手と言われています。彼は2019年のワールドカップと、2020年の東京五輪に出場した後、引退して医学部を受験し、医者を目指すことを決めています。ヘッドコーチのジェイミー・ジョセフは元日本代表で、1999年のワールドカップには日本代表の選手として出場しています。また、元ニュージーランド代表選手でもあり、1995年大会ではワールドカップで準優勝したときのメンバーでもあります。瞬発力や駿足力を必要とする日本独特の戦い方をよく知っていて、日本ならではの戦い方をサポートできるコーチです」

 

さらに、ワールドカップのほかにも注目の大会は目白押し。

 

絶対チェックしたい国際大会 直近スケジュール

ラグビーマガジン編集部がオススメする、これからチェックしておきたいラグビーの試合をお聞きしました。

 

1. 2月23日から始まっているスーパーラグビー
「世界レベルのスーパーラグビーというリーグがあります。そこに参加する、日本を本拠地とする「サンウルブズ」の試合は要チェックです。日本代表選手も出場しますし、他国のチームにも代表選手がたくさんいますから、ワールドカップの予習にはぴったりです」

 

2. 7月27日から始まるパシフィック・ネーションズカップ
「ワールドカップ開催の2ヶ月前とあって、しっかり調整した日本代表の姿が観られる絶好の機会です。日本は、フィジー(会場は岩手・釜石)、トンガ(会場は大阪)、アメリカ(会場はフィジー)と戦います。そのひとつとなる釜石鵜住居復興スタジアムは、2011年に津波で甚大な被害を受けた地域で、復興計画によって新設されたところです」

 

3. 9月6日のウォームアップゲーム
「ワールドカップ直前の9月6日には、熊谷にて南アフリカの代表選手と日本代表の戦いがあります。南アフリカは世界ランク5位ですが、2015年の試合では日本が僅差で勝利しています。また、この熊谷ラグビー場は今年のワールドカップのために大規模な改修工事が行われ、熊谷という街がラグビーで盛り上がっているのが楽しめます」

 

ラグビーを観たことがない!という人でも、ワールドカップ開催に向けて今から試合を観戦しておけば、徐々にルールがわかってきて、より楽しめるようになるでしょう。スタジアムに足を運んで、その迫力を味わってみてください。

 

ラグビーマガジン

説ベースボール・マガジン社が発行するラグビー専門の月刊誌。選手のインタビューや注目すべき試合の特集が組まれ、予習や復習にもおすすめです。
https://www.sportsclick.jp/rugby/

 

取材・文=吉川愛歩 写真提供=松本かおり 構成=Neem Tree

 

GetNavi webがプロデュースするライフスタイルウェブメディア「@Living」(アットリビング)

at-living_logo_wada