そして、ついに決勝戦、泣いても笑っても、これで最後の1戦です。どんどんススムンガのリーダーが「この勢いで中部にトロフィーを持ち帰る」と意気込みを語れば、Catsも「勢いなら僕らのほうがあるので全力で勝たせていただきます」と応じます。両チームともに笑顔を見せますが、見えない火花がばちばち散っているようでした。
勝負で先行したのはどんどんススムンガ。解説に「かなり早い」と言わしめる立ち回りを見せ、危なげなく初戦を制します。すると2戦目はCatsに痛恨のミスが! 途中で一度挽回したものの、最後はどんどんススムンガがねじ伏せ、2連勝でアジアのチャンピオンの座を手にしました。
どんどんススムンガのリーダー・ぴよまるさんは感極まった表情で「いままで何度も挑戦してきたので、うれしい」、「プロになるだけでなく、幕張の全国1位の夢がまで叶った」と喜びを語りました。惜しくも敗れたCatsも、「相手がとても強かったので終始勝てる気がしなかったです。優勝おめでとうございます」と敗戦の弁を述べています。
今大会通して筆者の印象に残ったのは、真剣勝負の末に生まれた敗者の美しさ。敗戦後のインタビューでは、「楽しかった」「強かった」「次、頑張ってください」など、相手を讃えるコメントが多く、対戦後にはハグをする姿も見受けられました。
もちろん選手たちの技術にも脱帽の一言です。1000分の1秒の時間差、1ピクセル、2ピクセルの誤差で勝敗が分かれてしまう世界ゆえ、プレイングにはとてつもない精緻さが求めれます。解説のタイガー桜井さんによれば、1回13時間もの練習をするチームもあるそうです。今大会の優勝賞金は4000万円とかなりの金額ですが、彼らの努力を鑑みれば、それに見合ったものだと納得させられました。
プロライセンス取得は、4000万円の賞金よりもうれしい
表彰式では、まだ”不慣れ”なところも見せたどんどんススムンガのメンバー。彼らは、囲み取材で意外なことを語りました。「4000万円の賞金よりも(今回の大会結果により手に入る)プロライセンスのほうがうれしい」というのです。
プロライセンスとは、日本eスポーツ連合が発行しているもので、「国内eスポーツの発展に寄与」するなど、一定の条件をクリアしたプレイヤーに交付される、いわば”人気・実力を兼ね備えているというお墨付き”のようなもの。モンストにはプロだけが参加できるツアーがあるなど、プロライセンスを得ることで活動の幅が広がります。今大会では、上位4チームにこのプロへの推薦権が与えられることになっていました。
どんどんススムンガのリーダー・ぴよまるさんは、そのプロライセンスについてこのように語ります。
「モンストが好きだし、もっと流行らせたい。そんな活動をするにはプロライセンスが必要でした。イベントをしてもプロでないとお客さんが集まらないし、YouTubeで活動をしているメンバーもいるけれど、プロじゃないうちは視聴者がなかなか増えないですし。そういった意味では、これからいろいろできると思うとうれしいですね」
試合の勝因についても、「とても僅差な試合(100分の2秒差で決着した試合)で勝って、当初の目標だったプロライセンス獲得が叶いました。それで緊張がほぐれて『あとは楽しもう!』と気持ちを切り替えられた」と、やはりプロライセンスの存在が彼らにとっては相当に大きかったよう。
4000万円にも勝る彼らのモンスト愛が優勝を引き寄せたのでしょう。
ちなみに、今回初優勝&プロ入りを飾ったどんどんススムンガのメンバーのなかには、まだインタビューに不慣れなのもあって、報道陣を前にしてなかなか言葉が出てこない場面もありました。これからプロとしての活動を続けていくなかで、だんだん慣れも出てくるのかなと考えると、今回の新王者誕生の瞬間を取材した筆者としては、これから”プロとして成長する”どんどんススムンガを追いかけていきたいと思わされました。
4万人超が来場したという今回のXFLAG PARK。日本のeスポーツシーンを牽引するこの盛り上がりが、来年以降にも続いていくことを願ってやみません。
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