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ランニング
2022/12/9 11:30

ミズノには、ライダーがある。ライダーには、ウエーブがある。/「大田原 透のランニングシューズ戦線異状なし」

ライダーの“履き心地”の秘密に迫る

日本でも、ライダーを選ぶ層は“一定程度の走力を持っている人”というイメージがある。実際に、マラソン大会などの現場を観察しても、ライダーを履いている人は、体型や走力的にも、全くの初心者ではない。“自分の足に、もっと馴染むモデルを試したくなった”という層が、ライダーを履き、熱烈な支持者になってゆくのだと思えてならない。

 

「“やっぱり、日本人の足に合うよね”と、足入れの良さを実感して購入される方は多く、その点は私たちも自信を持っています。足入れの良さは、アッパーの工夫でも感じていただけます。アッパーのシュータン(足の甲に当たる部材)は、ガセットタングという一体構造で、しかも表と裏で異なるメッシュを使っています。シュータンがズレないようにしつつ、足を快適な状態に保つことをサポートします」(吉村さん)

 

ランニングシューズは、さまざまな部材が組み合わさって作られる、労働集約型を代表する商品のひとつだ。走行時に最も屈曲する甲の部材(アッパー)、ひもの通し方だけでシューズのフィッティングを自在に操ることができるシューレース、つま先からかかとまで足を包み込むアッパー、着地衝撃を緩衝して推進力に替える靴底のクッション材(ミッドソール)、中足部のアーチをサポートして走行安定性を高めるプレート(シャンクとも呼ぶ)、地面をとらえる着地面のアウトソールなどなど。

 

“小さなことの積み重ね”が、シューズの履き心地を決める

さらに、履き心地に直接大きな影響を与えるのが、シューズの成型時に使用される足型(ラスト)だ。完成品のシューズからは外されているが、こうした一つひとつの部材が、履き心地を形作っているのだ。

 

「フィッティングの要となるライダーのラストは、過去に一度だけ見直されました。さらに甲をしっかりホールドするように削ったり、つま先部分にわずかな余裕を持たせたりなど、工夫を重ねた結晶です」(吉村さん)

 

愛用するシューズのラストが変更になると知ると、何足も買い込むファンもいる(オイラだ!)ほど、履き心地に影響するのである。

 

履き心地に影響する部材と言えば、ヒールカウンターも忘れてはならない。最近は、ヒールカウンターを小さくしたり、モデルによってはヒールカウンターそのものがないランニングシューズもある。

 

「初心者にも履いていただくライダーには、他社と比べて特別大きくはないですが、成型されたしっかりしたヒールカウンターを使用しています。インソール(ソックライナー)はEVA素材の方が安価なのですが、履き心地を優先させ、しっかりしたPU素材(ポリウレタン)を採用しています。これはミズノの品質基準が、非常に厳しいためです」(吉村さん)

 

こうした少しずつの積み重ねが、ライダーの履き心地を支えているのだ。

↑左がPU素材のインソール。シューズからインソールを引き抜くと、そのシューズの特性に合わせた製法が確認できる。ライダーは、ストローベル製法で中底とアッパーを袋状に縫製している

 

ライダーの価値の源は、ウエーブにあり!

ランニングシューズには、さまざまなパーツへの細やかな仕事が結実しているのだ。そうした結実が、履き心地の良さを左右することは、言うまでもない。最後は、ライダーを語る際、絶対に忘れてはならないパーツ=ウエーブについて触れておきたい。

 

「ウエーブの役割は、衝撃緩衝性と安定性の確保です。かかとから中足部にかけて、ミッドソールに内蔵された一枚のプレートが、ウエーブです。ウエーブは、着地時にたわむことで衝撃を緩衝します。また、着地から蹴り出しにかけて、過度なねじれ(オーバープロネーション)も、生じにくくさせています」(吉村さん)

 

ウエーブは、この26代目も含め、過去に10回以上も形状や素材を見直してきたという。以前は、普通のTPU(熱可塑性ポリウレタン)素材だったが、今は樹脂素材の「ぺバックス」を使用しているという。

↑左は、「ライダー25」に使用された、ミッドソールおよびウエーブプレート(灰色のもの)。右が、「ライダー26」に採用された部材だ。ミッドソールの厚みが2㎜アップし、その最適化のためにウエーブプレート(黄色のもの)も仕様変更となった

 

ライダーのポテンシャルの高さは、もっと評価されて然るべきだ

「ライダー25とライダー26のウエーブプレートを比較すると、その形状や厚みを変更しています。その理由は、ミッドソールを2㎜厚くしたため。厚くなったミッドソールによる、着地時の軟らかさを担保しつつ、反発性を高め過ぎず、さらなる安定性を重視した設計です」(吉村さん)

 

ここ数年のランニングシューズ開発のトレンドは、初心者から履けるランニングシューズから、プレートの存在を消すことだった。ミッドソールを厚底化して+ゆりかごのような形状のロッカー構造を持たせることで、転がるように走るシューズは、確かに流行りではある。しかしロッカー構造は、多くの初心者にとって、必ずしも優しい構造は呼べない面もあるのだ。

 

しかしミズノには、ライダーがある。ライダーには、ウエーブという確固たる信念とデータに裏打ちされたプレートがあって、しかもその技術は26年継続して高められてきた。さらに、パーツやフォームのクオリティの高さを、日本のモノづくりの価値として継承してきている。ライダーには、もっともっと高いポテンシャルが秘められている。

 

「ウエーブがあることで、着地のファーストタッチが安定します。そこから蹴り出しにかけての動作が、スムーズに繋がるのです。まさにウエーブは、ミズノのランニングのコンセプト“スムーズさの追求”そのものの機能なのです。ライダーの良さは、ウエーブによる安定感と、その反発性です。それを変えることはありません」(吉村さん)

 

いよいよ次回は、ミズノ「ウエーブライダー26」の実走インプレをお届けしよう!

 

撮影/石原敦志

 

 

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