スポーツ
ランニング
2022/12/23 11:30

ミズノ「ウエーブネオ ウインド」。今どきイケメンシューズの素顔!/「大田原 透のランニングシューズ戦線異状なし」

ギョーカイ“猛者”大田原 透が、走って、試して、書き尽くす! ランニグシューズ戦線異状なし

2022-23「ミズノ」冬の陣③「ウエーブネオ ウインド」の巻

 

シューズ好きも、ランニング好きも、必読! 最新のランニングシューズを、開発担当者に聞いて、実際に履いて走ってレビューする本連載。日本が誇るミズノにフィーチャーする3回目は、ミズノの基幹シューズ「ウエーブライダー」のDNAを継ぐ「WAVE NEO WIND(ウエーブネオ ウインド)」である。

↑「ウエーブネオ ウインド」日本のみならず、グローバルで展開中。カラーは、ホワイト×ブルーのみ。メンズ、ウイメンズともに2万2000円(税込)

 

純白のボディに、ブルーの差し色。ファッションユースと見まごう、今どきのイケメンシューズの素顔や、いかに⁉ 今回も、企画担当の吉村憲彦さんにお話を伺った上で、実走レビューを行おう!

↑3回にわたってお話を伺ったのは、「ウエーブライダー26」企画担当、ミズノのグローバルフットウエアプロダクト本部、企画・開発・デザイン部パフォーマンスランニングの吉村憲彦さん。東京・神田小川町「MIZUNO TOKYO」3階にある、ランニングシューズ売り場にて撮影

 

【関連記事】

ミズノ「ウエーブライダー26」はランシュー界の高級SUV /「大田原 透のランニングシューズ戦線異状なし」

 

ミズノ初の“CO₂オフセット”シューズ!

いつもは、機能を中心にシューズのインプレを行う本連載。しかし、今回の話題の中心は、その製造から流通に至る、全ての工程だ。ミズノが、本気で環境負荷低減に取り組んだ「ウエーブネオ ウインド」。どんなシューズなのだろう?

 

「ウエーブネオ ウインド(以下、ウインド)の原材料には、CO₂排出量を抑制するため、リサイクルポリエステルや植物由来など、環境に配慮した素材を使っています。印象的な白のアッパーはニット(編み物)ですが、環境負荷低減のため、染色工程で水を使用しておりません」(吉村さん)

↑ウインドは、シュータンからシューホールまで一体になったようなシームレス構造

 

さらに、シューズの流通や最終的な廃棄までのライフサイクルを視野に入れ、CO₂を吸収する木々の植林も行われたという。

 

「ウインドに使用されている、クッション性と反発性に優れたミッドソール(ヒールウエッジ)のフォーム材『ミズノエナジー』には、安定感の要となるプレートの『ミズノウエーブ』にも、植物由来の原材料を使用しています。水辺にも繁殖している藻類を回収し、原材料として使っています」(吉村さん)

↑ミッドソール下部に通常のミズノエナジー、上部に軽量なミズノエナジーライトを搭載

 

ミズノ欧米攻略のための、新たな橋頭堡

ウインドの主なターゲットは、ミレニアム世代やZ世代。欧米を中心に、これらの世代はサステナビリティにも高い関心を持っているという。

 

「環境意識の高い欧米のミレニアム世代やZ世代に向けて、ミズノのメッセージをきちんと伝えることで、ブランドの認知度を上げることも視野に入れています。そのため欧米では、かなりの数のウインドを展開しています」(吉村さん)

 

ウインドのイケメンぶりは、ファッションではなく、まさに環境への配慮そのものだ。しかも、そんなイケメンを単なるイケメンで終わらせず、走り心地をしっかりと追求している点もミズノたるところ。開発のコンセプトは、“フルマラソンにも使用可能なパフォーマンスランニングシューズの機能をそのままに、環境への負荷を低減するシューズを生み出すこと”なのだ。

 

「ウインドは、42.195㎞のフルマラソンを3時間30分以内で走る、いわゆる“サブ3.5”のランナーが履くシューズと同等のスペックです。前回取り上げていただいた『ウエーブライダー26』が、サブ4ぐらいのスペックですので、たしかにウインドの方が速い位置づけですね」(吉村さん)

 

【関連記事】
ミズノには、ライダーがある。ライダーには、ウエーブがある。/「大田原 透のランニングシューズ戦線異状なし」

 

ライダーのDNAを持った韋駄天=ウインド

実は、このシューズのベースとなったのは、2021年度まで展開していた「ウエーブライダーネオ」だったという。今回紹介するウインドにも、「ウエーブライダー26」に搭載されたウエーブと同じスペックのものを搭載。まさにライダーの系譜を継ぐシューズなのだ(2022のコレクションからはライダーの名称が外されている)。

 

さらに、ウインドのミッドソールには、「ミズノエナジーライト」というエラストマーのフォーム材も採用されている。ミズノエナジーライトは、標準的なミズノエナジーよりも、軽量かつ反発性に優れており、レーシングシューズなどで使用されている。

 

「ウインドは、あくまでランニングシューズです。なので、カジュアルに対応させようとは考えていません。しかし、プロトタイプを見たとき真っ白で“めっちゃいい”って、私も思いました(笑)」(吉村さん)

 

パっと見のウインドは、“今風のイケメンだから、カジュアルでも受けるだろう”という程度の印象だった。しかし、話を聞いてみると、けっこうな韋駄天だ。“イケメンのナイスガイは、けっこうな瞬足”なんて、人間だったら嫉妬するところ。でも、ランニングシューズなら、ズルいほど◎だ!

 

いよいよ、ウエーブネオ ウインドを試走!

開発の話をたっぷり聞いたところで、ウインドの試走スタート! まずは、シューズに足を入れた感覚のインプレを行った。そして、初心者も含め、多くの方々がランニングシューズを履く、3つの理由に合ったペースで実際にフィールドを走ってみた。

 

最初は、「運動不足解消」が目的、1㎞を約7分で走る(=キロ7分)の~んびりペース。続いて、脂肪を燃焼させる「痩せラン」に適した、1kmを約6分で走る(=キロ6分)ゆっくりペース。最後は、距離ではなく、走る爽快感重視の、1㎞約4分30秒~5分で走る(キロ4.5~5分)「スカッとラン」。今風のイケメンがどこまで走れるのか、とくとご覧あれ!

 

【まず、履いてみた!(走る前の足入れ感)】

ニットのブーティ構造は、履くのが少し面倒。しかし、いったんシューレース(靴ひも)を締めてしまえば鬼に金棒。抜群のフィッティングが得られる!(もちろん、サイズや足型が自分の足に合っている前提だが……)。

 

かかとをシューズに合わせたら、はと目(シューレースを通す穴)ひとつひとつ丁寧に、平ひもが捻じれないように締めていこう。ウインドの特盛のミッドソールは、歩く際に、左右のシューズがこすれるほどだが、走り出せば心配無用だ。

 

立ち上がると、ソールから足に伝わってくるのは、筆者好みの程よい硬さ。2020年に発表された「ミズノエナジー」以前の頃の、往年のライダーの乗り心地を彷彿とさせる。今風のイケメンのくせに、昔気質のハングリーさもありそう。これは侮れない……。

↑アウトソールには軽量性とグリップに富んだG3ソールを全面に搭載。足裏も爽やかさが漂う!

 

【運動不足解消ジョグ(1㎞を7分で走るペース)】

ゆっくり走り出す。前回のライダー26と同日にインプレをしたが、着地はライダー26より硬め、前足部で地面をがっちり捉えている印象。もしかして、ウインドの前足部の面積は、ライダー26よりも広い? と思い、ウインドとライダー26を比べるが、全く一緒だ。しかも、安定性の要となるウエーブのスペックは、ライダー26もウインドも同じだという。

 

両者の際立つ違いは、ウインドのミッドソールに「ミズノエナジーライト」を採用している点だ。ミズノエナジーライトは、読んで字の如く、ミズノエナジーよりも軽く、しかも衝撃緩衝性と反発性に優れている。さらに、中足部からかかとにかけては、ミズノエナジーも採用。ミズノエナジーで着地衝撃をソフトに緩衝し、ミズノエナジーライトで大きな推進力に変えている。

 

ウインドは、全体的にはライダー26よりもソールが硬めだが、ミズノのランニングのコンセプトである“スムーズさの追求”を忠実に再現している。ある意味で、ライダー以上に、ライダーらしいシューズなのかもしれない。それを明らかにすべく、スピードを上げてみよう。

 

【痩せラン(1㎞を6分で走るペース)】

地面をがっちりつかむ感触は、どうやらアウトソールの素材も影響しているようだ。ウインドには、実業団選手レベルのシューズに採用されている「G3」という、軽量でグリップ性が高いパーツが使われている。試しに、石畳の坂道を登るが、驚くほど路面を捉える。そのまま駆け下り、下り直後のコーナーリングでも、スリップの不安がない!

 

ちなみに、ウインドを履いて、何も考えずに心地よく走ってみた際の速度は、1キロ5分45秒ほど。同日インプレをしているライダー26は、6分20秒。同じスペックのウエーブを搭載しているが、なるほどウインドは明らかに速い! 運動不足解消でスタートしたジョギングが、いつしかダイエット目的も加わって体脂肪が落ち、距離を走る楽しさを感じられるようになってきたら、ウインドはピッタリな一足になっているはずだ。

 

【スカッと走(1㎞を4.5~5分で走るペース)】

環境に配慮した無染色のホワイト地に、ブルーの差し色。日本国内での流通が限られたシューズだけに、周囲の目線がチラチラ筆者の足元に集まる。ここは自宅からほど近い、とある10㎞のローカルレース会場。インプレ3日目の本日は、レースでの実戦で試すことに。おしゃれ感覚の今どきイケメンシューズと思いきや、一連のインプレで、実戦投入の腹が定まった。ウインド、期待できそうだ!

 

で、よく晴れた、少し暑いくらいのレース本番。あくまでインプレが目的なので、5分を少し切るペースで走ってみる。しかしながら、ペースダウンを意識しないと、“もっと走らせろ”と加速モードに、スグに入ってしまう。ウインド、なかなかの若武者ぶりだ。

 

ゴール前2㎞、さらに加速してキロ4分巡航。すぐ前を走っていた地元の国会議員をぶち抜くべく、最後はキロ3分を切ってみたが、全ての加速にウインドはきれいに反応してくれる。シーズン初めに無理は禁物なのだが、ウインド、やっぱり侮れない。

 

で、結論。ウインドは、気持ちが前向きになる“スカッと走”に最適だ。今風のイケメンのルックスも、前向きの気持ちを後押ししてくれる。42.195㎞のフルマラソンなら、初参戦や完走を目指すよりも、2回目や3回目の自己ベスト更新のチャレンジに合っている。

 

最後に蛇足ながら、ミズノさんにお願い! こうした環境配慮型のシューズに合った、今どきイケメン風、しかもレースへの実戦投入可能で、かつファッション性に優れたホワイト&ブルーのカラーコーデもバッチリのアパレルを作ってくださいませ。ベースレイヤーやライナーも工夫し、リサイクル+天然素材など機能性を大きく損なわない提案ができるかと。期待しています!

 

撮影/石原敦志

撮影協力/10 over 9「ランキューブ」(東京・神田錦町)

 

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると拡大表示されます)】