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2023/12/8 20:30

流行のフワフワ系にはない安定感、“ブルックス流”厚底!/大田原 透の「ランニングシューズ戦線異状なし」

ギョーカイ“猛者”が走って、試して、書き尽くす! ランニングシューズ戦線異状なし

2023「ブルックス」冬の陣②「ゴーストマックス」の巻(後編)

 

北米で知らぬランナーはいないビッグブランド、「ブルックス(BROOKS)」。日本での知名度こそ高くはないが、100年以上続く超~老舗である。そのブルックスを代表するクッショニングモデルと言えば、「ゴースト(GHOST)」である。

 

今回、日本でブルックスを展開するアキレスの担当者からGetNavi web読者に薦められたのは、そのゴーストのさらなるエントリーモデル「ゴーストマックス(GHOST MAX)」。厚底タイプのランニングシューズである。

 

ゴーストマックスが単なる厚底シューズではないのは、ブルックスが並々ならぬ注力を注いできたミッドソールの機構「DNA LOFT v2」の存在にある。着地の衝撃に応じて反発性が変化する初期のDNAを、ブルックスは何と2010年に発表。以降、現在までブルックスはDNAの進化を後押ししてきた。

↑ 「ゴーストマックス」1万9800円(税込)。カラー:4色展開(メンズ)、4色展開(ウイメンズ)。サイズ:25~29㎝(メンズ)、23~26㎝(ウイメンズ)。重量:285g(27㎝片足)。ミッドソールドロップ6㎜

 

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いよいよ、ブルックス「ゴーストマックス」を試走!

てな話が、前回まで。後編では、ゴースト マックスを実際に、履いて、走って、レビューする。まずは、シューズに足を入れた感覚、そしてウォーキングのインプレ。次は、「運動不足解消」の目的で走る、1㎞を約7分(=キロ7分)の、の~んびりペース。

 

さらに、脂肪を燃焼させる「痩せラン」に適した、1kmを約6分(=キロ6分)のゆっくりペースで走る。最後は、距離ではなく、走る爽快感重視の、1㎞約4分30秒~5分で走る(キロ4.5~5分)「スカッと走」。どれも、“たまには、走ってみよっかな~”の目安になるペースだろう。

 

【まず、履いてみた!(走る前の足入れ感&ウォーキング)】

厚底ながら、ゴーストマックスの重量は300g(27cm:片足285g)を切る。最近のランニングシューズは、ブルックスも含め、驚くほど軽い。それでいて、ゴーストマックスに足を入れて立ってみると、それなりの硬さがあって沈み込み過ぎず、しっかり支えてくれている。

 

見た目は、今流行りの厚底フワフワ系に見えるが、ゴーストマックスはさに非ず。しっかり大地を踏んでいる安定感がある。少し歩いてみただけで、歩きやすさを感じるはず。まずはウォーキングから運動を始めようという方にもピッタリ!

 

その理由は、まさにミッドソールのブルックス独自のEVA素材「DNA LOFT v2」だ。EVAにラバーを加え、エアで発泡させたクッション材は、衝撃吸収性に優れ、しかも適度な反発性を持っている。DNA LOFT v2が、抜群の安定性をゴーストマックスに与えてくれているのである。

 

【運動不足解消ジョグ(1㎞を7分で走るペース)】

続いては、いよいよジョグペース。スピードはほんの僅かな違いしかないが、ジョギングはウォーキングよりも約2倍と運動強度が上がる。運動不足を効率的に解消するなら、歩くよりも、ランは俄然効果があるのだ。

 

で、ジョグでのゴーストマックス。低速で走っても、ブレない安定した走りだ。オートマ車のように、スピードに応じてギアが自動で変化する感覚。昨今、各社のミッドソール開発競争が激化し、低速はフワッ、高速になるほど高反発の素材が幅を利かせるようになったが、さすがはゴーストを冠にしているだけあって、ゴーストマックスは加減速でも安定した走りである。

 

それにしてもマックスのDNA LOFT v2ながら、ゴーストマックスは低重心。ミッドソールに厚みがある分、ブレるリスクもあるが、まっすぐ安定。その理由は、かかとから爪先にかけての揺りかごのようなラウンド「グライドロールロッカー」のなせる業だろう。

 

ロッカー構造を採ることで、着地から蹴り出しまで、転がるように前に進む。ゴーストマックスのマイルドなロッカーが、自然にカラダを前に進めてくれるのだ。足の甲を包み込むエンジニアドメッシュのアッパーのホールド感も、ストレスなく快適である。

 

ちとペースアップ。とは言っても、一緒に走る人と会話ができる程度の速度。それが脂肪燃焼効率の良い“痩せラン”、1㎞を6分で走るペース。走った分だけ燃えてくれるので、ジャンクなモノを食べても罪悪感は抑えられる。久しぶりの本格的な忘年会シーズンを迎えるにあたり、“痩せラン”なのである。

 

【痩せラン(1㎞を6分で走るペース)】

ちとペースアップすると、ゴーストマックスのクッションも、ちとアップ。スピードアップに対して、正確に比例してクッションを効かしてくれる。仕事に……家事に……雑念に……と、走りに集中しなくても、ノンプロブレムなゴーストマックス(ちなみに何も考えずに走ってみたら、1㎞を6分15秒で走るペースだった)。

 

ゴーストマックスの安定性の高さを確認したところで、試しに、上体を少し前傾させてみよう。すると、すーっとスピードが上がる。グライドロールロッカーが効いている証拠だ。姿勢の制御だけで、面白いほどスピードに乗ってくるのだ。

 

ゴーストマックスなら、100㎞を走るウルトラマラソンもイケそう。10時間以上走り続けるウルトラマラソンでは、どんな天気でも、どんな気温でも、激坂があっても、何があっても、一定のパフォーマンスを保ってくれるシューズが欲しくなる。初めてのウルトラマラソンなら、ゴーストマックスは間違いない選択。あっ、初フルマラソンでもOKなのは、改めて書くまでもございませぬ(笑)。

 

【スカッと走(1㎞を4.5~5分で走るペース)】

姿勢の制御だけで、1㎞を4.5分で走るペースは簡単に作れる。ゴーストマックス侮りがたしである。走る目的が、運動不足解消や脂肪燃焼ではなく、ゴールに向かって走り切る精神衛生にあるなら、ゴーストマックスでのペースアップは正義である。

 

とは言え、ゴーストマックスのロッカーはマイルド。DNA LOFT v2も安定性重視のフォーム材なので、坂道をガシガシ登るパワフルさは、さすがにゴーストマックスは持ち合わせていない。

 

ただし、下りは別モノ! 日が暮れて暗い急坂をガンガン下るが、ソールの踏み面も広く、DNA LOFT v2の適度に硬いクッションで全く不安がない。下り坂が苦手、という人こそゴーストマックスを試していただきたい。

 

ということで、次回からは、2024年1月に発売が決まったブルックスの名モデルの21代目「グリセリン21」に移る。最新のグリセリン21の進化を、GetNavi webにて、どこよりも早くお届けしたい!

 

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撮影/中田 悟

 

 

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