文房具
2017/4/15 17:00

日々の相棒にはユニークな文房具を! 個性が光るワザあり「ペン」大集合!

最も使用頻度の高い文房具は? と問われたら、ほとんどの人は「ペン」と回答するでしょう。サインペンやボールペン、シャープペンシルなど種類も多く、もはや使わない日はないというくらいの必須アイテムです。今回はそんな王道中の王道文房具・ペンのなかでも、ちょっとした変り種をピックアップ。ユニークなだけでなくとっても便利なアイテムを教えてくれるのは、3000以上の文具コレクションに囲まれて暮らしているという文具ライター・きだて たくさんです。

 

惣菜の管理に最適な“ラップにかける”水性マーカー

筆者のライター仲間Aくん(30代独身男性)は、健康及びコストの問題上できるだけ自炊を心がけているのだが、梅雨時や夏になるとこまごまと作り置きしたお総菜が次々とダメージを受けていくのが悩みだという。ちょいちょい食べきれないものを冷蔵保存しているうちに、冷蔵庫の奥に追いやられて数日忘れられていたほうれん草のおひたしやらゴボウのきんぴらやらが、変わり果てた姿で出てくる。ここはひとつ、厳格な消費期限管理が必要だろう。……という話になった。

 

かといって「マステに消費期限を書いて貼るのは面倒くさい」とのこと。なんという怠惰か。しかし、まさにそんな要望にぴったりの文房具が存在する。

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エポックケミカル
ラップにかけるペン
1本:173円 6色セット:1059円

「ラップにかけるペン」は、サランラップでおなじみ旭化成と文房具メーカー・エポックケミカルの共同開発で生まれた、食品用ラップに直接書き込みができる水性マーカー。名前と機能に1㎜のズレもない、便利文房具である。

 

冷蔵庫に作り置きおかずなどを保管する場合、だいたいはラップをかけるはず。そのラップの表面にダイレクトに「いつ作ったおかずか」というのを書き込んでしまえばいい。ふせんやマステに書いて貼るよりは、面倒くささが軽減されるだろう。

 

実際に書いてみると、つるつるしたラップの表面でもインクが乗って、確かに書ける。すこし弾くような感じもあるが、重ね塗りすればラップの下が透けないぐらいの不透明度で面を塗ることもできた。

↑ラップはできるだけピンと張って書くのがポイント
↑ラップはできるだけピンと張って書くのがポイント

 

書き損ねた部分は、すぐに濡らしたティッシュなどで拭けばきれいに落ちるが、数分置けば乾いて定着し、指でこすったぐらいでは落ちなくなる。冷蔵庫内に余分なインクが付着したり、という危険性は少なそうである。もちろん、油性インクのように刺激臭のある溶剤を使っていないので、食品に変な臭いがつく心配もなし。

 

さらに「ラップにかけるペン」が優れているのは、書き込んだラップをそのまま電子レンジにかけられるというところ。実は、油性マーカーなら既存品でも普通にラップに書き込みができるのだが、レンジで加熱すると筆記跡が熱くなりすぎてラップが溶け、大惨事になる可能性があった。しかし本製品は水性インクなので、ラップの耐熱温度を超えることもない。日付を書いたお総菜でも気軽に電子レンジでチンができるのだ。

↑書いたラップをかけたままレンジ可能
↑書いたラップをかけたまま、レンジを使うことも可能

 

もちろん、冷凍もOK。ただし冷凍庫から取り出したばかりで表面が結露して濡れていると、インクが流れてしまうことがあるので要注意。常温の時に書いてから冷凍する、が基本である。

↑結露したり濡れているラップだと、うまく書けない
↑結露したり濡れているラップだと、うまく書けない

 

さらに、『ラップにかけるペン』は、子ども用のお弁当デコレーションにも強力な武器となる。例えばおにぎりをラップで包んで絵を描くだけでも、ばっちりデコ弁当になってしまうのだ。朝の忙しい時間でも素早くカラフル&かわいいお弁当が作れるので、子ども親も大喜びではないだろうか。

↑ただの塩おにぎりを天むすや鮭おにぎりに変身させるライフハック
↑ただの塩おにぎりを天むすや鮭おにぎりに変身させるライフハック

 

計器マニアによる計器マニアのためのボールペン

意外と理解されていないのが、「計器マニア」と「測定マニア」の違いである。というか、そもそもそんなマニアがいるという認識すらされていない可能性もあるが、あなたが知らないだけで世の中にはそこそこいるのだ。

【計器マニア】

●計測器が好き ●測定する行為が楽しい

【測定マニア】

●計測して正しい数値を知るのが好き ●不確かなものを許さない

 

わけてみるとこんな感じで、このふたつのマニアが人種として別モノだということはご理解いただけたと思う。では、なんでいきなりそんなことを言いだしたのかというと、昨年にクラウドファンディングでスタートした長さを測れるペン「InstruMMents」を使わせてもらったのだが、これが計測器マニアの「測定するよろこび」に満ちたアイテムだったからだ。

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Montreal
InstruMMents
1万7280円

InstruMMentsは、見たところシュッとしたデザインの金属軸ボールペン。正直なところ、後述のメカが軸後端に詰まってリアヘビーなのと、そのわりにペングリップが細くなりすぎているせいで書きづらい。だが、大事なのはそこじゃない。ペンはあくまでも常時携帯するための言い訳というかアリバイでしかない。先にも“長さを測れるペン”と紹介した通り、InstruMMentsで重要なのは、軸後端についている距離計測デバイス部分なのだ。

↑ペン軸後端のローラーとレーザー照射ユニット。ここを転がして距離を測定する
↑ペン軸後端のローラーとレーザー照射ユニット。ここを転がして距離を測定する

 

まず、スマホでInstruMMents専用アプリを起動したら、つづけてペンのお尻にタッチ。すると、Bluetoothでペンとスマホが連携される。あとはペンから照射されるレーザー光をガイドにして軸後端のローラーを転がすだけで、アプリに転がしただけの距離がカウントされる。

↑コロコロと計測中。単位mmからcm〜kmまで変更可能で、インチ〜マイルの米単位も使える
↑コロコロと計測中。単位mmからcm〜kmまで変更可能で、インチ〜マイルの米単位も使える

 

地図上でローラーを転がして距離を測る「キルビメーター」というツールがあるが、まんまあれのデジタル版だと思ってもらえればいい。ローラーを転がすだけなので、直線でも曲線でも自由自在。このローラーのコロコロと転がる感じが手のなかでだいぶ気持ちいいし、レーザーをガイドにするので測定物に直接ローラーを当てなくても測れるのも楽しい。なにより、ローラーを転がすとそれに連動してスマホが「ブッブッ」と震えるのが、アナログのメジャーを引き出して測ってる的な感触で面白い。

↑レーザー光をガイドにして対象の端から端まで転がす
↑レーザー光をガイドにして対象の端から端までを転がす

 

例えば、目の前にあったブロックメモの横幅をまず計測したとしよう。つぎに画面内の「+」をタップすると、先に計測した長さを保存した状態で数値がゼロに戻るので、今度はマーカーの縦の長さを計測。そしてもう一回、今度は高さを計測する。最後に「セーブ」を押すと、何を測ったのかタイトルと写真をつけて計測データとセットで保存することができるのだ。

↑縦・横・高さの3軸を転がして計測中
↑縦・横・高さの3軸を転がして計測中

 

これがかなり楽しくて、とにかく手近にあるモノはすべてサイズを測っては写真を撮ってリスト化してしまう。まるで図鑑を作っているような感覚である。また、データをセーブすると自動的にクラウドにhtml化してアップされるので、URLを伝えることで他人に計測した値を渡すことも可能というわけだ。

↑写真やメモをつけて記録を残せる。図鑑を作るような楽しさだ
↑写真やメモをつけて記録を残せる。図鑑を作るような楽しさだ

 

↑計り続けるとログがたまっていく

 

このInstruMMentsを作ったのは、カナダでデザイン事務所を経営しているムラデン・バーバリック氏。工業デザイナーである彼は「とにかく身の回りのものすべてを測りたい」という欲求を元に、この計測ペンを作ったという。なるほど、彼もまた計測することそのものを愛する計測器マニアなのだろう。

 

実際問題として、長さを測る装置としてのInstruMMentsはそんなに優秀ではない。精度が出ないのだ。計測単位として0.1mmまで測れるスペックは備えているものの、ローラーを転がして0.1mmなんて超誤差。長さを測ってペンをスッと持ち上げただけで、ローラーがほんの少し回って1mm程度ならずれてしまう。

 

そもそも、直線を転がしていたつもりなのに少しカーブしていたりすると、出てきた距離なんてまったくアテにならない。どうしても正しい長さを出したいなら、InstruMMentsを定規に当てて真っ直ぐ測るしかないだろう。対して「多少の誤差ぐらいいいよ。なんとなく測れたら楽しいから」という、測るの大好き計測器マニアなら筆箱に1本入れておくのはオススメできる。「目についたものは当たるを幸い測り倒す」ぐらいの勢いでサイズを出してやるの、相当に楽しい。

 

独自機構で机から落ちにくいゆらゆらシャープペン

勉強中にふと一息ついて手を休めているとき、うっかりシャープペンシルを机から転がして落としてしまったとかないだろうか? で、落とした衝撃でなかの芯がポキポキに折れてたりすると、またショックが大きい。

 

じゃあ、机の上で転がりにくいシャープペンシルがあればありがたいんじゃないか。そんなものがあるのかというと、ちゃんとあるのだ。トンボの“ゆらゆらシャープペン”こと「ユラシャ」がそれだ。

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トンボ
ユラシャ
324円

クリップがついていようが、しょせんシャープペンシルは円筒なので、転がってしまう。転がったら結果として、机から落ちるのは当然である。もちろん転がらない三角柱のシャープペンシルというのも存在するが、自分の持ち方に合わないと握り辛いことから、どうしても人を選ぶ。

 

じゃあ、一見太めの円筒形でよく転がりそうなフォルムのユラシャがなんで転がらないかというと、中に重りが入っているから。ペン軸が偏芯した、おきあがりこぼしのような仕組みになっているのだ。

↑ユラシャの断面図。揺れても元に戻るので転がらない
↑ユラシャの断面図。揺れても元に戻るので転がらない

 

↑机の端に置いても、ゆらゆら揺れるだけで転がり落ちる心配が少ない
↑机の端に置いても、ゆらゆら揺れるだけで転がり落ちる心配が少ない

 

なので、どれほど転がそうとしても、ゆらゆらと揺れるだけで元に戻ろうとするわけだ。また、この偏芯させるための重りが適度にずっしりしているので、握ったときに手の中での収まりが良いというのもメリットのひとつだ。

 

マークシートに強い“物理的に折れない”シャープペンシル

シャープペンシルの芯の太さについては、好みがそれぞれあることだろう。細いのが好きな人には芯径0.2mmという、極細かつ芯が折れないぺんてる「オレンズ」という人気商品があるので、ぜひそちらを使って欲しい。逆に、太いのが好きという人には各メーカーとも0.7mmとか0.9mmといったものをラインナップしているので、探せば好みのものが見つかるだろう。

 

そこで問題となるのは、0.9mmでもまだ足りない人だ。そういう人にオススメなのがコクヨ「鉛筆シャープ1.3mm」である。

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コクヨ
鉛筆シャープ タイプS 1.3mm(※)
324円

太芯はメモを取るなど滑らかな早書きに良いし、考えごとをまとめるための落書きスケッチ的な使い方にマッチする。0.5mmの書き味に慣れていると、1.3mmはヌルヌル、スラスラとした滑らかさが本当に面白い。

※)0.7mm・0.9mタイプもあり

 

↑描線でいうとこれぐらい違う。とにかく太い
↑描線でいうとこれぐらい違う。とにかく太い

 

↑左が0.5mmで右が1.3mm芯。丸太かというぐらいの太さだ
↑左が0.5mmで右が1.3mm芯。丸太かというぐらいの太さだ

 

この太芯のスラスラ感を味わいたいなら、1.3mmの2B芯がベスト。そして、この組み合わせにB5サイズノートでは狭すぎる。できれば大きめのスケッチブックを使って、手の動くままに自由に書き殴って欲しい。これが、アドレナリンが出るぐらい気持ちいいのだ。

 

また実用面でいうと、1.3mmはマークシートの記入に最適。長方形タイプのマーク欄なら1回シャッと線を引くだけだし、楕円タイプでも塗りつぶしはあっという間だ。芯の太さで単純に考えれば、0.5mmシャープの2.6倍スピーディーに塗れる計算である。

↑楕円形マークシート欄も驚くぐらい早く塗りつぶせる
↑楕円形マークシート欄も驚くぐらい早く塗りつぶせる

 

また、もうひとつ太芯の優位性がある。折れないシャープペンシルを使うまでもなく、芯に物理的に強度があるため折れないのだ。グイグイと荷重をかけてもびくともしない頼もしさも、太芯シャープの醍醐味である。ちなみに、さらに太い1.4mmシャープも海外製品でいくつか存在するが、ベストマッチな2B芯が存在しない。なんともったいないことだろうか。

 

細かすぎて伝わりにくい、最強クリップ搭載シャープペンシル

筆箱に入れずにシャープペンシルを持ち歩く、というシーンはたまにある。そういうとき、ペン軸についてるクリップというのは便利なもの。ジャケットの胸ポケにひっかけたり、バネ内蔵のクリップなら手帳の表紙を挟んで固定するという使い方もある。

 

とはいえ、「使ってみると便利だな」ぐらいで、普段はほとんど気にすることのないクリップだが、そこに特化したシャープペンシルというのも存在する。三菱鉛筆「CLiFTER」は、特殊な“支点スライド式クリップ”を搭載したクリップの存在感が強すぎるシャープペンシルだ。

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三菱鉛筆
CLiFTER
108円

支点スライド式クリップというのは、挟むものの厚さによってクリップの支点が上下に動くようになっている。サラサクリップなどでお馴染みの板バネ内蔵クリップがさらにパワーアップしたものと考えて欲しい。

↑クリップの支点が楕円の穴の中をスライドすることで、より厚いものを挟むことができる
↑クリップの支点が楕円の穴の中をスライドすることで、より厚いものを挟むことができる

 

この支点スライドのおかげで、厚いものを挟んでもクリップの奥までくわえ込むことができるため、挟む力が安定し、高い保持力を発揮できるのだ。

↑厚さ5mmだと、クリップの奥までがっちりと挟める
↑厚さ5mmだと、クリップの奥までがっちりと挟める

 

メーカー公称は「5mm厚のものが奥まで挟める」とあるが、最終的にはその倍の1cmぐらいならなんとか挟み込めるようだ。(板バネに負担がかかるので推奨はしないが……)

↑厚さ1cm強の文庫本でもこのとおり。ペンのクリップとしての実力は現時点で世界最強だろう
↑厚さ1cm強の文庫本でもこのとおり。ペンのクリップとしての実力は現時点で世界最強だろう

 

例えばノートや手帳がカバンの中で開いて困る、という場合などは、このCLiFTERでがっちり挟んでしまうというのもひとつの手だろう。薄いノートでも厚い手帳でも保持力が変わらず安定して挟めるのも、支点スライド式クリップのメリットだ。

 

いかがでしたでしょうか? 毎日使うペンは私たちの相棒ともいえる存在。だからこそ、ほかの人とは少し違った、個性的なアイテムを選ぶとよりいっそう愛着がわくでしょう。ぜひお気に入りのペンを見つけてくださいね。

 

文・撮影/きだて たく

 

[Profile]

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きだて たく

1973年京都生まれ、東京都内在住。フリーライター/デザイナー。 小学生の頃、勉強も運動も見た目も普通の子がクラスでちやほやされるにはどうすれば良いかを考え抜いた結果「面白い文房具を持ち込んで自慢すればいい」という結論に辿り着き、そのまま数十年、何一つ変わることなく現在に至る。自称世界一の色物文具コレクション(3000点以上)に囲まれながらニヤニヤと笑って暮らす日々。ウェブサイト「デイリーポータルZ」では火曜担当ライターとして活躍中。

 

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