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筆記用具
2018/1/7 19:05

文房具界のポスト・ハンドスピナーはコレ!会議中にも活躍する無意味ギミック満載の暇つぶしペン

【きだてたく文房具レビュー】意味なくカチカチポチポチクルクルし続けたくなる中毒ペン

2017年の春頃から、日本でも子どもたちの間で爆発的に流行して、そして年末にはもう誰も欲しがっていないもの……と言えば、ハンドスピナーである。

 

そう、遠い昔のように思うかもしれないが、あれ、つい昨春から夏にかけての話なのだ。ただ単に羽根が延々と回り続けるだけの、意味なしオモチャがなぜあれほど売れたのかはさておき、アメリカではそういう意味なしオモチャをまとめて「Fidget Toy」(フィジェット=いじくりまわす)と呼ばれており、きちんとしたジャンルとして成立している。

↑いま現在、売り逃して大量在庫を抱えているであろう玩具店さん多数のハンドスピナー
↑いま現在、売り逃して大量在庫を抱えているであろう玩具店さん多数のハンドスピナー

 

で、いまそのアメリカで、ハンドスピナーの次に“キテる”と言われているのが、意味のないガジェットをあれこれペン軸に搭載した「Fidget Pen」というもの。

 

例えば退屈な会議で時間を持て余しているとき、意味なくペンのノックをカチカチと押し続けていることはないだろうか。あのペンを使った暇つぶしを、もっと効率的に行おう、という趣旨である。これならハンドスピナーと違って大人も仕事中に楽しめるとあって、2018年には日本でもブレイクするかもしれないので、注目しておいて損はない。

 

無意味な気持ちよさ満載ペン

Fidget Penの中でも比較的初期に発売されたのが「Fidget Widget Pen」。6種の暇つぶしガジェットを搭載したペンである。

↑ThumbsUp「Fidget Widget Pen」9.99ドル
↑ThumbsUp「Fidget Widget Pen」9.99ドル

 

まず目につくのは、軸上で一列に並んだ5個のボタンだろう。

 

これは押せるけど、何の意味もないボタン。押し込むとカチッカチッと硬めのクリック感があり、なかなか気持ちいい。

↑左は意味なしクリックボタン、右は意味なしトグルスイッチ。押して気持ちいい、というだけが存在意義だ
↑左は意味なしクリックボタン、右は意味なしロッカスイッチ。押して気持ちいい、というだけが存在意義だ

 

その上には、ロッカスイッチ。これも全く何の意味もないスイッチである。パチッパチッと切り替える感触を楽しむためだけのものだ。

↑さすが感触に特化しているだけあって、どれも触っているだけでクセになる楽しさだ
↑さすが感触に特化しているだけあって、どれも触っているだけでクセになる楽しさだ

 

ペン軸の裏側には、指の腹で転がすためだけのロータリースイッチとスライダースイッチ。これも言うまでもなく、感触だけの意味なしスイッチだ。

 

さらに、グリップ部はダイヤルのように回せるが、もちろんこれにも意味はない。3つが連なっており、すべて回す硬さがちょっとずつ変えてあるところは芸が細かい。

↑チープな見た目にも関わらず、ノックノブの押し込み感は重厚で、高級ペンのそれに近い
↑チープな見た目にも関わらず、ノックノブの押し込み感は重厚で、高級ペンのそれに近い

 

最後に、ペン軸後端のトグルスイッチ。押し込むとペン先が出るノックノブになっており、これだけが唯一、意味のあるスイッチだ。ガッチョン! という重々しいノック感はいかにも「押し込んだ!」という満足感があっていい。

 

大人が遊べるFidget Pen

先の「Fidget Widget Pen」が初期型の“Fidget Pen”で少しオモチャ寄りのビジュアルだとしたら、最新型でかなり洗練されているのが「FIDI PEN」である。一昨年、アメリカのクラウドファンディングで出品され、無事に成立して商品化されたものだ。

↑FIDIPEN.com「FIDI PEN」24ドル
↑FIDIPEN.com「FIDI PEN」24ドル

 

これも全体的に意味のないガジェット類が積載されているのだが、見た目的にはちょっとオシャレペン感もあり、より「大人が会社でこっそり持っていても怪しまれない」要素が強い。

↑各スイッチともFidget Widget Penより押し心地がまろやかで、高級感がある
↑各スイッチともFidget Widget Penより押し心地がまろやかで、高級感がある

 

普通のペンと比べて違和感があるとしたら、やはり軸のロッカスイッチだろう。Fidget Widget Penよりも押し心地がソフトだが、パチッと弾むような感覚があり、ついつい何度もパチパチしてしまう。

 

軸上にはもうひとつ、クリクリと回して遊べるボールもある。小さなトラックボールのようなものだが、指でいじっても音がしないので、会議中などに手遊びするならこれがベストだろう。また、ボールを押し込むとわずかにコリッとしたクリック感があるのも楽しい。

↑感触の楽しさで、無限にビョンビョン・クルクルと指でいじり続けてしまう
↑感触の楽しさで、無限にビョンビョン・クルクルと指でいじり続けてしまう

 

隠し機能的に備わっているのが、フリップ・クリップだ。クリップを持ち上げるとロックが外れ、バネの力でビョンと立ち上がるようになっている。これを指でビョンビョンと弾くとこれも感触が気持ちいい。

 

軸後端のノックノブは、押し込むと深めのストロークがあって押し心地がいいのに加えて、さらに回転するホイールもついている。ハンドスピナーのようにベアリングが入っているわけではないが、指で弾いて回転させると、わりと長く回ってくれる。これもついつい「どれぐらい回転させ続けられるか」という遊びに没頭してしまうため、中毒性が高い。

 

↑なだらかなくぼみは、サテンのようなすべすべ感。気がつくとこればかり触っている
↑なだらかなくぼみは、サテンのようなすべすべ感。気がつくとこればかり触っている

 

そして、このペンで最も中毒性が高く、最も官能的なのが、ペン軸に掘られたスムースディップと呼ばれる“へこみ”である。

 

つるんとした単なるへこみなのだが、これがすべすべしていて、さすると恐ろしく気持ちがいい。特にサテンの手触りなどすべすべとしたものに弱いタイプの人であれば、軽く1時間ぐらいはずっと、すべすべとさすっていられる恐ろしいガジェットだ。ボールだホイールだとあれこれついていても、結果、一番気持ちいいのがプリミティブなへこみである、というのはちょっと面白い。

 

ちなみに、本質から外れるので言及はわずかに止めておくが、今回紹介したどちらもペン自体はごくありふれた油性ペンである(Fidget Widget Penの方が若干なめらか寄りで書きやすい)。特にアメリカのオモチャペン系によくあるタイプのもので、筆記具としてはまあ必要充分というところだ。

 

【著者プロフィール】

きだてたく

最新機能系から駄雑貨系おもちゃ文具まで、なんでも使い倒してレビューする文房具ライター。現在は文房具関連会社の企画広報として企業のオリジナルノベルティ提案なども行っており、筆箱の中は試作用のカッターやはさみ、テープのりなどでギチギチ。著書に『日本懐かし文房具大全』(辰巳出版)、『愛しき駄文具』(飛鳥新社)など。