【きだてたく文房具レビュー】大人も驚く工夫をこらした最新消しゴム
例えば、ボールペンやシャープペンシルが進化しました! という話を聞くと、「ほほう、どうスゴくなりましたか!?」と身を乗り出す人は多い。それだけ“なにか変わった”感というか、期待値が高いのだろう。
対して、進化したという話をしてもあまり身を乗り出されないのが、消しゴムである。消しゴムなんてそもそも樹脂の塊じゃねぇか、進化したって言ってもそんな代わり映えしないだろ、という扱いなのだ。あと、基本的に子どもの使うモノだし、というイメージもあるかもしれない。
ところが、実はそんなことはないのだ。子どもの消しゴムだって、そりゃものすごく地味にではあるけれど、着実に進化しているのである。本当に地味に、だけど。ということで今回は、地味に、でも実はしっかり使いやすく進化している最新消しゴムをご紹介しよう。
磁力で消しカスをキャッチ!
消しゴムを使うと必ず発生するのが、消しカス。これは、こすって吸着させた鉛筆の炭素をくるんで捨てるためのものなので、消しゴムというツールの構造上、どうしたって出てしまう。かといって出たら出たで散らばって邪魔だし、少しずつつまんで捨てるのも面倒な消しカスを、磁力で集めてなんとかしよう、というのが、クツワの「磁ケシ」である。
磁ケシは、消しゴムの素材である塩化ビニル樹脂の中に鉄粉を練り込んで作られており、当然、発生した消しカスも鉄粉入り。つまり磁石を近づければくっつくのだ。
鉛筆で書いた文字をこすり消して出た消しカスに、磁ケシの本体を近づけると……
消しカスがスッスッと勝手に吸い付いていくのが、ご覧頂けただろうか。磁ケシのスリーブ底面には強力なネオジム磁石が備わっており、鉄粉入りの消しカスをまとめてくっつけてしまうのだ。
あまりにも細かく粉末状になった消しカスは取りこぼしが出やすいので、底面を近付けるだけでなく、消しカスを上からトントンと軽く叩く感じで使うのがコツ。
あとは、消しカスのくっついた磁ケシをゴミ箱の上まで持って行き、OPENと表示された小さなつまみを押し出す。するとネオジム磁石とスリーブ底面の間に隙間ができるので、消しカスはパラパラと下に落ちる。
以上で、面倒な消しカス掃除が完了。床の上に手で払い落としてから掃除機をかける、とか、指でつまんで捨てる、といった手間を考えると、驚くほどにラクだ。
消しカスがきれいに片付くのはいいけど、肝心の消字性能はどうなのよ? と言うと、これがまたなんの問題もない。いや、むしろ普通の消しゴムとして考えても良く消える方だと思う。
タッチは比較的粘りけの少ないサラサラ系で、鉛筆の筆跡を軽い力でこするだけできれいに消える。特に小学生の標準鉛筆であるB~2Bの濃さに合わせてチューニングされているようで、濃いめの筆跡でもサラッと消してくれるのは大したものである。
「あれもしかして……軽い?」と気づくエアイン消しゴム
明らかにギミックづいている感のある「磁ケシ」に対して、見た目も雰囲気もまったく従来通り、白くて四角い“ザ・消しゴム”なのが、プラス「エアインキッズ」だ。
触ってみても手触りが違うワケでなし、素材感もお馴染みの消しゴムだ。
これで何がどう進化しているのか、むしろ進化しているはずがないだろう、などと思うのも分かるし、実際に2Bの鉛筆で黒く塗った面を一般的な消しゴムとゴシゴシと消し比べてみても、消字性能はほぼ一緒。普通に良く消えるけど、つまりこの時点でエアインキッズが特に進化している感はない。
しかし、ここで「消しゴムはゴシゴシこするもの」という思い込みをいったん脇に置いて欲しい。その上で、スルスルと軽~く、「これじゃ消えるわけないだろ」ぐらいの感じで筆跡をなでてみると……さっきゴシゴシこすったのと同レベルで、消えるのだ。
たぶん、消しゴムで消す感覚を長らくアップデートしていない人だと驚くはずだが、最新の消しゴムの消し味は、これぐらいの軽さなのである。ただ、あまりに軽くなでるだけだと消しカスが出ず表面が汚れていくので、たまにちょっと力をいれてわざと消しカスを出してクリーニングするのが、使うコツだろうか。
製品としては、児童鉛筆の標準であるB~2Bの濃さでもしっかり炭素を吸着させる新開発の樹脂を使用。さらに樹脂内には吸着作用を持つゼオライト(微細孔を多く持つ鉱物)と空気を閉じ込めたマイクロカプセルを配合し、軽い力で炭素を吸着して消せる! というのが、製品名であるエアインの由来だ。
この能書きの内容がどう機能しているのかは正直なところよく分からないが、ただ、大量の誤字を消すなどの作業に対して、手の疲れ具合が全く違ってくるぐらいには消える軽さが違うとは思う。
樹脂以外の部分では、スリーブ(紙製のケース)にうっすらと凸凹のエンボス加工が施されているのも良い。このエンボスが、軽い力でホールドしても指が離れないように滑り止めとして機能しているのだ。細かいポイントだが、なかなかに効いていて面白い。