【きだてたく文房具レビュー】機能がみっちり詰まった省スペース多機能ペン
日常的に持ち歩く筆記具の本数。これって意外と難しい問題だったりする。仕事の関係でどうしても、蛍光マーカーやシャープペンシルが必要という人は本数がかさんでしまうが、移動が多いので、軽量化のためカバンは小さくしたい → ペンケースも小さくなる → 容量が少ないので本数は減らしたい、という流れになり得る。
つまり筆記具の本数は、作業内容(必要量)とペンケース容量(限界量)のバランスで考えねばならないわけで、運用思想としてはいろいろと悩ましいのである。
そこで重要になってくるのが、省スペース化のための多機能ペンだ。例えばボールペンの黒・赤とシャープペンシルが必須という場合でも、それが1本にまとまった多機能ペンならば、ペンケース内に筆記具2本分の隙間ができる。つまり運用に余裕が生まれるわけだ。
今回は、そういった「ペンケースに隙間を作る」視点で有用な多機能ペンを紹介したい。
極スリムな多機能ペン「bloom」
OHTO(オート)の「bloom」は「極スリム3機能」を謳う、油性0.7mmボール黒・赤と0.5mmシャープペンの2+1筆記具だ。
見た目からしてスリムさは理解できると思うが、具体的に数値で言うと軸径がわずか8.4mm。一般的な単色ボールペンでも直径10mm以下というのはあまりないので、2+1でこの軸径は驚くレベルだろう。
実際にペンケースからボールペン2本とシャープペンシルを抜いて、代わりにbloomを入れると、「おおー、マジか!」と声が出るぐらいに隙間が空くはずだ。作業内容に対しての筆記具の必要量が2+1で減らせる上に、さらにペンケースの限界容量がスリム化によって大きく稼げるわけで、これは省スペース化の点で効果大といえる。
金属軸にぎっしりとメカが詰まっているので、重量は既存のプラ軸ボールペン2本分ぐらい(約19g)。軽量化の点では多少マシかな? ぐらいかもしれない。
ただ、これは個人的な感覚だが、細身の軸を握った際にみちっとした密度の高さを感じると、いかにも「高品質なものを手にしている」という喜びがあってうれしいのだ。凹凸の少ないシンプルなルックスと落ち着いたマット塗装も、2500円+税という価格に充分に見合う高級感はあるだろう。
機能の選択は、ペン軸後端に印字された表記(BLACK・RED・0.5)のうち、使いたいものを上に向けてノックする振り子式となっている。
初見の人だと「?」と思うかもしれないが、基本的には表記が自分に見えるよう向けてノックするだけのこと。誤ノックやノック詰まり(ジャム)もほぼないので、かなり使いやすいはずだ。ただ、黒→赤などの切り替えは、いったんクリップ上部のリリースボタンでノックを解除してから向きを合わせて再度ノックし直す、というやや面倒な感じ。慣れないうちは動作がもたつくかもしれない。(あくまでも慣れの問題レベルなので、わりとすぐスムーズにできるはず)
ボールペンはOHTOお馴染みの0.7mmニードルポイント。ペン先が細く手元が見やすいということで、手帳などへの細かい書き込みはニードルポイントでないと……というファンも多い。
インクは、最近の低粘度油性の中では比較的サラッとしており、落ち着いた書き味なので、なめらかすぎるのが苦手という人にはかなり使いやすいだろう。筆者も低粘度油性の中ではOHTOがいちばん書きやすいと感じているので、同じ芯の0.5㎜に換装して使用している。
逆にぬるぬる系が好きという人は、いっそ好みのリフィルに替えてしまうという手もあるだろう。多機能ペンでは標準的な4C規格対応なので、多色ジェットストリーム芯などもOKだ。
消しゴムまでリストラできる多機能ペン「モノグラフマルチ」
もう一本、省スペース化が望める多機能ペンとしておすすめなのが、トンボ鉛筆の「モノグラフマルチ」だ。
こちらは昨年春の発売直後にもこの連載で紹介したことがあるので、もしかしたら「もう使っているぜ」という方がいるかもしれない。
このモノグラフマルチのなにが省スペースかというと、機能が油性の黒・赤+シャープペンシルに、さらにロングタイプの消しゴムが付いた2+1+1多機能ペンなのである。
シャープペンシルを使う場合はどうしてもペンケースに消しゴムを合わせてパッケージングする必要があるが、モノグラフマルチならその消しゴムのスペースまで空く、ということになる。特に小容量かつ消しゴムが収納しにくいロールペンケースなんかだと、非常に効果的だ。
ポイントとなる消しゴムは、軸後端を回すとにょろっと出てくる繰り出し式。シャープペンシル後端の消しゴムなんて、基本的には粒みたいなオマケ要素でしかないが、モノグラフマルチの消しゴムは長さ26mmとたっぷりの実用サイズ。しかも別売りで消しゴムだけ購入できる(3本108円)ので、躊躇なく消すことができる。
なによりMONOを名乗っているだけあって、ピンポイント消しがしやすい硬めのゴムは消字力も確かなものだ。充分にいつもの四角い消しゴムの代役は務まる……というかむしろ積極的に代えていいレベルだ。
黒・赤ボールペンはトンボ鉛筆の低粘度油性インク「エアータッチインク」を搭載した0.5mmボール。かなりなめらかでスルッと軽い書き味は、いかにも低粘度油性といった感じ。
ただしロング消しゴムが後端にある分だけ重量バランスはリアヘビーなので、なめらかさを活かしてスピード感のある筆記がしたい、という用途には向かないかもしれない。