文房具
2019/6/11 19:00

スルスル引けてキレがいい!ストレスフリーなトンボ鉛筆とプラスの最新「テープのり」

【きだてたく文房具レビュー】ちょっとしたストレスを解消したテープのり

嫌いな言葉は? と問われれば「乾燥時間。」と答えてしまうぐらい、接着系の乾燥待ちが面倒くさい。四十半ばを過ぎても精神年齢は小学生並みなので、成果が出るまでじっと我慢して待機するのが耐えられないのである。だから、ちょっとした紙工作なんかでは、手軽かつ乾燥の待ち時間ゼロで使える「テープのり」ばかりを多用してしまうのだ。

 

となると当然、テープのりの新アイテムには注目してしまうわけで、今回はこの春以降に発売された面白い最新テープのりを2点紹介したい。

 

スルスルと軽く引けるテープのり

まずは、トンボ鉛筆から発売されたばかりの「ピットエアー」。この「ピットエアー」という名称だけでどういう新製品かピンときた人は、文房具好き黒帯レベルの、なかなか“お好きな方”だとお見受けする。

↑トンボ鉛筆「ピットエアー」(つめ替えタイプ)400円(税抜き)テープ長16m/テープ幅8.4mm
↑トンボ鉛筆「ピットエアー」(つめ替えタイプ)400円(税抜き)テープ長16m/テープ幅8.4mm

 

↑カバーをパカッと開けてつめ替え作業を行う。つめ替えカートリッジは300円(税抜き)
↑カバーをパカッと開けてつめ替え作業を行う。つめ替えカートリッジは300円(税抜き)

 

トンボ鉛筆は、使い切りまで軽い力で引ける修正テープ「モノエアー」を2016年春に発売、かなりのヒットとなった。この“軽い力でテープが引ける”機能を司る新機構「エアータッチシステム」をテープのりに転用したのが、この「ピットエアー」である。

 

トンボ鉛筆の消字ブランド「MONO」+エアータッチシステム=「モノエアー」、接着ブランドの「ピット」+エアータッチシステム=「ピットエアー」というわけだ。

↑一瞬「空転してる?」と勘違いしたぐらいに軽く引ける。音が静かなのも快適だ
↑一瞬「空転してる?」と勘違いしたぐらいに軽く引ける。音が静かなのも快適だ

 

エアータッチシステムは、ヘッドが接地している時はテープリールのテンションをオフにして軽く回転させ、ヘッドが離れると同時にリールをロックしてテープを切る、という仕組み。

 

従来の修正テープ/テープのりがテープをたるませないよう常にリールに抵抗をかけ続けていたのに対して、スルスルスルーッと軽く引けるのが最大のポイントである。

 

実際にピットエアーを使うと、確かに引き心地がはっきりと軽い。なにより、従来品がリールのギアからギリギリギリギリ……と音を立て続けていたのが、ピットエアーはほぼ無音。この静音性だけでも「おっ、これいいじゃん!」という気にさせられた。

↑テープ供給リールに付随する、半透明パーツとコイルバネの一帯がエアータッチシステム。(写真では、見やすいように、つめ替えユニットだけで撮影)
↑テープ供給リールに付随する、半透明パーツとコイルバネの一帯がエアータッチシステム。(写真では、見やすいように、つめ替えユニットだけで撮影)

 

またテープのりは、テープの残量が少なくなるほど引くのが重くなるのが、これまでの常識だった。感覚的な話だが、だいたい2/3ほど使った辺りから、手応えが確実に重くなっていたはず。これは、テープ残量が少ない=テープ供給側の直径が小さくなる。つまり自転車のリア側ギアが小さいほど重くなる、というのと同じ仕組みだ。

 

しかしエアータッチシステム搭載のピットエアーは、もともとの引き抵抗が圧倒的に低いため、テープの残りが少なくなっても変わらず、軽い引き心地が得られるのである。

↑もともとトンボ鉛筆のテープは強粘着で定評があるが、パターンが大柄になった分、さらに強く粘着する
↑もともとトンボ鉛筆のテープは強粘着で定評があるが、パターンが大柄になった分、さらに強く粘着する

 

ピットエアーののりパターンは、比較的大きなドットが端でつながり合っている網目状の「パワーネットテープ」。細かいドットが密集している他社のドット系テープと比べるとのりのキレはやや劣るが、ドット面積が大きいこともあってか、粘着力はかなり強めに感じられた。

 

のり自体も、曲面接着力(折り曲げた紙を貼り合わせた際に、紙の反発力によって剥がれない力)を高めた新開発のものということで、メーカーリリースでは「封筒の封かん作業に最適」と謳っている。

↑ヘッドは左右に傾く構造で、常に紙面へ正対するように工夫されている
↑ヘッドは左右に傾く構造で、常に紙面へ正対するように工夫されている

 

ヘッドに関しては、トンボ鉛筆お得意の“首振り型ヘッド”を採用し、作業時の手の傾きを吸収。雑に引いてもヘッドが勝手に紙にフィットしてくれるので、ムラなくきれいなのり付けができるようになっている。

 

テープのりを使うのが苦手、という人が使っても安定して作業ができるので、これは便利だ。

 

強粘着なのにスパッとしたキレがあるテープのり

今年の2月末に発売されたプラスの「ノリノコロ」は、粘着力が同社従来比で1.8倍、という強力さが売りのテープのりだ。

↑プラス「ノリノコロ」(テープ使い切り)230円(税抜き)すべて強粘着タイプ
↑プラス「ノリノコロ」(テープ使い切り)230円(税抜き)すべて強粘着タイプ

 

ここしばらく、テープのりは各メーカーともギミック競争的に新機能を持った製品を投入しているが、ノリノコロは見た目どおり、機能はシンプルそのもの。使い切りタイプでキャップ別体。ギア周りもごく普通だし、ヘッドもローラーだけの固定型。のりパターンもドットではなくフラットな帯状になっている。スペック的には一見、10年前ぐらいの製品? という印象だ。

↑テープ供給リールの大きさが目立つが、他はシンプルそのもの
↑テープ供給リールの大きさが目立つが、他はシンプルそのもの

 

もちろん、それは意味あってのこと。まずペンケースに入れて持ち運べるサイズなのに、テープ長12mとたっぷり(同サイズの他製品だと8~10mが普通)で、さらに価格も税抜230円とかなりお手頃になっている。

 

つまりギミックを省略した分、ユーザーがまず気になるテープ長と価格で値打ちを出してきた、ということだろう。

↑帯状で粘着力の強いのりテープ。端がスパッと切れるのが快適だ
↑帯状で粘着力の強いのりテープ。端がスパッと切れるのが快適だ

 

それだけでは新製品としてちょっと面白みがないなー、と思うだろうが、さにあらず。先に述べたように、ノリノコロはその粘着力の強さと、そのわりにスパッと心地よい“のりギレ”の良さがポイントとなっているのだ。

 

粘着力に関しては、最近の主流派であるドットではなく、フラットな帯状にすることで、のりの面積を稼いで強化している。これは、ドットパターンのテープと貼り比べれば誰でも体感できるほど、確かに強い。

↑ドットタイプとノリノコロをプラ板と紙の両端に貼り、中央から引っぱって粘着力テスト。ドットのりが剥がれても、ノリノコロは貼り付いたまま
↑ドットタイプとノリノコロをプラ板と紙の両端に貼り、中央から引っぱって粘着力テスト。ドットのりが剥がれても、ノリノコロは貼り付いたまま

 

ではなぜ、ドットパターンがテープのりの現在の主流になっているのかというと、帯状ののりはドットよりものりギレが悪く、ヘッドを引き上げた際にニチャーッと糸を引く傾向が強いからなのである。

↑帯状のりの糸引き状態。強粘着テープのりで特に発生しやすい
↑帯状のりの糸引き状態。強粘着テープのりで特に発生しやすい

 

この糸引きが仕上げの悪さだったり、次に使うときののり付け不良につながったりするため、帯状ののりは現在では不人気になっているわけだ。

 

そこでノリノコロは、のりテープに微細な針状のカーボンファイバーを配合。硬いカーボンファイバーが、ヘッドを引き上げる際にのりの層を突き破って切り口を作るため、スパッとしたキレの良さが得られる、という仕組みになっている。

↑顕微鏡で確認すると、確かに黒い針のような繊維が見える。これがのりを突き破ることで小さな切り口をいくつも作る
↑顕微鏡で確認すると、確かに黒い針のような繊維が見える。これがのりを突き破ることで小さな切り口をいくつも作る

 

理屈は分かったけれど本当か……? と試してみたが、なるほど、ヘッドを紙面から離した瞬間に、端がきれいにまっすぐ切れて、かなり糸を引きにくいようになっている。これだけ強粘着だと、従来品ではまず確実に糸引きを起こすので、これはやはりカーボンファイバーがいい仕事をしているんだな、と感じられる。

 

テープのりの純粋な性能として「強い粘着力が安定して使える」という点では、とても優れたものだろう。細かい便利ギミックはないが、でもコスパがいいんだから文句はつけられないな。