【きだてたく文房具レビュー】高機能な2019年式定規
文房具業界ではなぜか、シンクロニシティのように複数メーカーから同ジャンルの製品が、タイミングを合わせて発売されることがある。それがボールペンだのペンケースだのといった、主力級のアイテムならなんの不思議もないのだが、定規という少々ニッチなジャンルだと「どゆこと?」と思うわけだ。メーカー間で話し合いがあったわけでもなかろうに、たまーにそういうことが起きるのが面白い。
まさに今年の春~夏期は、数年ぶりとなる定規の当たりシーズンであり、それぞれ機能に工夫を凝らした面白い定規が、立て続けに発売されたのである。
2つの機能性定規を融合した“折り畳み定規”
まず紹介したいのが、クツワの「紙が切れる折りたたみ定規」だ。こちらは2年前にこの連載でも紹介した、同社の「スパッ! と紙がキレイに切れる折りたたみ式アルミ定規」の新作、ということになる。
そもそも、クツワの「紙が切れる定規」シリーズはその名の通り、定規の板面にプリントされた矢印に沿って紙を引くだけで、気持ちよくスパーッと切れるという機能を持ったもの。クーポン誌の切り取りや、書類のちょっとしたカット程度なら、わざわざカッターやはさみを使うまでもなく、お手軽なのである。
で、これはその折り畳み(15㎝⇔30㎝)定規版……ということなのだが、前作がアルミ定規なのに対して、新しい方はポリカーボネート製の透明定規ということで、見た目のクオリティ的には、やや安っぽくなった印象を受けるかもしれない。
ただ、実はこの新作には機能的に面白いものがプラスされており、かなり便利にバージョンアップ。個人的には、前作を持っている人にも買い換えをオススメできるレベルなのだ。
それが、折り畳みストッパー兼用のスライダーパーツを使った“ゼロピタ機能”である。
スライダーを使うことで、線を引く際のゼロ位置がピタッと決まるため、複数の線を引く表組みやグラフを書くのがとてもラクになる。さらに、角が丸くなったものの長さも正確に測りやすくなるというのだから、これは本当に優れもの。
これは「紙が切れる定規」と並ぶ、クツワのもうひとつの便利定規「ゼロピタ定規」の機能であり、つまり「紙が切れる折りたたみ定規」は2つの便利定規の融合型、ということになる。
また、折り畳み定規としては珍しい二重ヒンジを使っているため、折り畳んだ状態で余分なパーツが露出しない。ペンケースに収納するときなどはよりコンパクトになるので、これはなかなかありがたいのだ。
ちなみに各ヒンジは、開閉時にメモリに合わせて15°ずつクリックするので、あくまでもざっくりとだが角度を測ることもできる。
使い続けても指の疲労が少ない“ノンスリップ定規”
デザインフィルが発売した新作定規「ノンスリップアルミ定規」は、裏面の中央に帯状のゴムストッパーが配置されており、直線を引いたりカッターを使ったりする時にズレ動かず、安定して作業ができるというもの。
ところが、定規というのは「作業時にズレない」だけでは駄目なのだ。例えば平行線を何本も引くなどする場合は、線を引いた後に次の位置までスーッとズレ動いてくれないと使いにくい。機能的に矛盾するようだが、欲しいときだけピタッと固定できて、それ以外はスルスル動いてくれないと困るのである。
「ノンスリップアルミ定規」は、このズレ動く/動かないのオンオフが、とても簡単なのがポイントになっている。
まず普通に定規を紙面に置いた状態は、ストッパーオン。波状の板面に指を軽く乗せておくだけで、しっかり固定されてズレ動かない。動かしたいときは、波板の後ろ側(メモリが刻まれてない方)に指の重心を傾けてやることで、ストッパーオフ。スルスルと軽く動くようになるのだ。
これまでに市販されていたノンスリップ機能付きの定規は、指を乗せて定規を紙に押しつけることで、ストッパーオンになるものがほとんど。このタイプは、作業時に指への負担が大きく、意外と疲れるのである。特に長時間の作業をするときは、デザインフィル方式(基本は常時ストッパーオン、力を入れてオフ)の方が疲労が少なく、快適だと思う。
本体に磁石を内蔵しており、金属面に貼り付けておけるのも面白い。定規は意外とペン立ての容量を食うので、パーテーションなどに貼っておけば無駄なスペースを取られないのはうれしいところだ。
もしかしてスチールデスクで使う時は、定規が天板にくっついて動かせなくなるのではとも思ったが、メモリ側のエッジを浮かせると磁石も浮くようになっているため、何の問題もなく使用できた。このあたりはさすが、上手に作ってあるものだ。
メガネなしでもよく見える(?)“ピンホール定規”
線を引いたり長さを測ったりするのが便利、というのが定規の本道だろう。しかし、全く別の方面で便利な機能を搭載したのが、サンスター文具の「メガミエ」だ。
日常的には裸眼だけど、たまによく見たい場合だけメガネ使うかなー、という人、いるだろう。ところが、たまたま必要な時にメガネを忘れて大弱り。目を細めてなんとか見ようとするけど、よく見えない……。
そこで「メガミエ」を目に当てると、おお、よく見える!
「メガミエ」は板面に細かな穴がびっしり開いており、目に当てるとピンホール効果(狭い穴を通して光が入ることで、網膜のピントが合いやすくなる)によって、近視の人でもメガネなしでよく見えるようになるのである。
何を言っているのかよく分からないと思うが、紹介するこちらも「なんでそんな機能をつけた?」と言いたい。
悪ふざけでやってるのかとも思ったが、通常時用(大)と、明るい場所/プロジェクター・モニターなど発光画像を見る際に使う用(小)で、わざわざ口径の違う穴を2種類使い分けられるようになっているところをみると、どうも本気らしい。
実際、小さい方の穴を使うと、プロジェクターの画面を見るのにもピントが合わせやすく感じられた……うーん、やっぱり本気で作ってるのかな。