かねてより、文房具業界で最も注目を集めるアワードと言えば、今年で28回目となる「日本文具大賞」である(実は第17回までは「ステーショナリー オブ ザ イヤー」という名称だったが)。デザインディレクターの川崎和男氏を委員長とした、5人の審査委員によって機能部門5点、デザイン部門5点の計10点の文房具が優秀賞に選ばれ、さらにその中から各1点がグランプリとなる。
ちなみに今年の日本文具大賞の結果は、発表となった6月26日のうちに各メディアで取り上げられていることもあり、すでにご存知の方も多いだろう。念のため述べておくと、機能部門グランプリがプラチナ万年筆の「プロシオン」、デザイン部門グランプリはMARK’Sの「システム手帳」という結果となった。
GetNavi主催のアワード「文房具総選挙 2019」を復習しよう
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あくまでも個人的な所感だが、今年の日本文具大賞は両部門グランプリともに「なるほど、こうきたか」という感じ。実は、筆者が事前に予想していた内容からは、どちらも外れた(ので、あまり偉そうなことは言えない)のだが、それでも「なるほど」と納得できる結果だったと思う。
特に機能部門は、どれが獲っても文句ないだろう、というぐらいのポテンシャルを持った優れモノ揃いだったので、グランプリを逃した優秀賞の製品でも、もし気になるものがあったら「買ってたぶん間違いないよ」とはお伝えしておきたい。
ということで今回は、あえて逆張り気味に「グランプリは逃したものの、獲ってもおかしくなかった優秀賞の製品」の中から、特におすすめしたい3点を紹介しようと思う。
1.個人的に機能部門グランプリに予想していたメモ
まずは機能部門優秀賞から、デザインフィルの「パッとメモ」。以前、GetNavi webでも紹介したことのある、非常に革新的な“オートセーブ機能”を備えた持ち歩き用のリングメモだ。
手帳やメモを使う際によく遭遇するのが、とっさに空白ページが見つからない問題だ。メモらなきゃ! と焦っているときに限って、ペラペラめくってもなかなか新しいページにたどり着かず、さらに焦って軽くパニック、みたいな経験は誰でも一度はあるはず。
この「パッとメモ」は、紙の上辺を束ねるリングの他に左側面を糊づけしてあり、ページをめくるたびに一枚ずつそれが剥がれるようになっている。例えば全80ページ中の10ページまでめくったとしたら、後ろの70ページは糊づけされたまま一体化しているのだ。
なので、「パッとメモ」の側面を手で握ったまま軽く振ってやると、表紙から10ページがパラッとめくれて、前回の最後に書いたページ(=一体化した残ページの先頭)である11ページ目が自動的に現れる、という仕組み。これがRPGなどでお馴染みのオートセーブ機能と呼ばれる所である。
従来通り、普通にページをめくって書き続けるだけでセーブされていくので、ユーザーが何か手間をかけることなく便利機能を享受できる、というのがとても優れたポイントなのだ。
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2.金属面以外にもつけられるマグネットフック
機能部門でもうひとつ気になったのが、マグエバーの「マグサンド」。文具大賞のエントリー写真では透明なガラスに装着されているが、要するに金属面じゃなくても装着できるマグネット式の増設フックである。
「どういうこと?」と思ったが、仕組みを理解すれば簡単。フック側と別体の強力なネオジム磁石パーツで、板面を挟みこむように固定しているのである。なるほど、マグネットでサンドするから「マグサンド」か。
磁石の周囲をシリコンで完全に覆っているので、窓ガラスで屋外側に付けても錆びる心配がなく、板面に傷をつけることもなく、さらに滑り止めとなるから下にずり落ちにくい、という一挙三得のアイデアだ。
これまで、非金属面にフックを増設しようと思ったら両面テープか吸盤式ぐらいしか選択肢がなかったわけだが、テープだと貼り剥がしができないし、吸盤は信頼性が低く見た目もイマイチ。スッキリしたルックスで耐荷重も(挟みこむ板面の厚さで変わってくるが)充分、しかも貼り剥がしが可能ということで、これは普通に考えてもかなり便利じゃないか。
例えば店舗のガラス扉にメニューをぶら下げておいたり、木製のタンスにハンガーをかけたり。これまでフックをつけるのを躊躇していた場面でも安心して使えそうなので、これはかなり応用範囲の広いツールと言えるだろう。
3.手触りが心地よいコンクリートのペン
デザイン部門で惜しくもグランプリは逃したものの、注目を集めていたのがピージーデザインの「Kuramae Concrete Pen(クラマエ コンクリート ペン)」。なんとその名の通り、軸がコンクリートで作られた、かなり特殊なボールペンと専用ペンスタンドのセットである。
コンクリートとアルミのコンビ素材で、ペン重量が29g(一本差しのスタンドは50g)。スタンドから抜くと、指にかかるズッシリ感に最初はかなり面食らうだろう。一般的なボールペンが10g前後なので、約3倍。スリムなルックスにこの重量は、かなりの違和感だ。
ところが書こうとして握ってみると、あら不思議。確かに重いのは重いのだが、それが手に気持ちよく馴染む。これは重心がペン先に来るように上手くバランスが取られているからで、かなりしっかりと調整されているのではないだろうか。
ちなみに中には標準で三菱鉛筆の「ジェットストリーム」リフィルが入っているとのこと。互換性の高い芯径なので、この重量軸に合う書き味のリフィルを探して交換するのも楽しそうだ。
そしてなにより気に入ったのが、コンクリート製グリップの手触りだ。表面がかなりなめらかに仕上げられており、サラッと硬い感触が本当に気持ちいい。この手触りはちょっと他のペンでは得難いものだろう。コンクリート自体の持つひんやり感も相まって、夏場に握るのが楽しい一本だと思う。
残念ながらグランプリと優秀賞では、メディア露出の量がかなり違ってくる。正直、天と地の差と言ってもいいぐらい。とはいえ数多くのエントリーの中から優秀賞に選ばれるだけでもかなりすごいこと(すごい製品)なのは、本記事でもなんとなく分かっていただけたのではないだろうか。
今後もし店頭で「日本文具大賞 優秀賞」と書かれたPOPを見かけたら、ぜひ手にとってみてほしい。確実に、優秀なんだから。