30回目という節目の開催となった国際文具・紙製品展、通称“ISOT”。文房具業界において日本最大規模の展示会であり、各メーカーのブースでは秋冬以降の新製品が数多く出展されるため、小売店・バイヤーなどの業界関係者だけでなく、文房具ファンからも注目を集めるイベントだ。
しかしここ数年は、大手メーカーがこのISOTから離脱して独自の展示会を開くというムーブメントがあり、イベントとしての規模は、ややスケールダウンした印象が否めない。一方で、中小メーカーが打ち出す「アイデアの効いた面白い製品」は年々増えているようにも感じられ、“目が離せない展示会”という意味では変わらないだろう。
そこで今回は、筆者が会期3日間ずっとISOTに入り浸って見つけた、要チェックな新製品をいくつか紹介したい。どれも夏以降に注目されること間違いなしの、イキのいいやつばかりだ。
【関連記事】
ISOTで発表!「日本文具大賞」のグランプリに“輝けなかった”傑作たち
https://getnavi.jp/stationery/398990/
1.かわいさ&高い技術がポイントの単語帳
まず会場内をザワつかせていたのが、製本会社が母体の新鋭文房具ブランドCRU-CIAL(クルーシャル)の「サンドイッチ/ハンバーガー単語帳」だ。
なにがどうザワついていたのかは、一目瞭然。単語帳なのに、かわいいのだ。
パン・レタス・ハム・トマト……とそれぞれの形にダイカット(型抜き)された単語シートが層になって、非常にキュートなサンドイッチになっている。
これまで、単語帳といえば四角いもの、と相場は決まっており、他にはファンシー系で動物の形やハートなどにダイカットされたものがせいぜい。ここまでハッキリとブロックの状態で図案化された製品は、ほとんど存在していなかった。
そういう意味で、まず見た瞬間に「欲しい!」と感じる人はかなり多いのではないか。
しかもこの単語帳、かわいさを演出するために、実はやたらと高い技術を使って作られているのである。
パンやバンズの部分を横から見ると、まっすぐ円筒形ではなく、ふっくらしたパンらしい丸みを帯びているのがお分かりだろうか。つまり、パンの色の紙をまとめてドン! とカットしたのではなく、1枚目、2枚目、3枚目とそれぞれ少しずつ違うサイズで抜いたものを、順番に束ねて作られているのだ。
当然、同じ大きさの紙を束ねるのとは桁違いの作業量と検品の手間がかかるわけで、これは従来の文房具メーカーではなかなかマネができない。製本会社ならではの技術がつぎ込まれた逸品と言えるだろう。
2.手間ヒマかけてレタスっぽさを追求したメモ
もうひとつ、食べ物モチーフの文房具として紹介したいのが、ジオデザインのメモ帳「東京書けるレタス」。こちらも一目で分かる、かなりピーキーな作りをした製品だ。
会場内で、「なんかレタスそっくりのメモ帳がすごいらしいよ」というウワサは聞こえてきていたが、実物をジオデザインのブースで見るまでは、まさかここまで“レタス”だとは想像もできなかった。まぁ、びっくりするほどレタスである。
ビニール包装の中身は40枚のメモ用紙を束ねたものだが、一枚ずつ剥いていくと用紙もどんどん小さくなっていく、リアルなレタス感。さらに途中には虫食い跡のあるレタスがあったり、テントウムシが潜んでいたりするから油断がならない。
ただ、メモを取るために一枚ちぎってみると、しわくちゃすぎて書き込みに躊躇するほど。もちろんこれはレタスっぽさを追求した結果だが、この紙に伝言を書いて他人に渡すには、ちょっと勇気が要りそうだ。
ちなみにこの「東京書けるレタス」、製造時にはひとつひとつ手作業で、メモの束を揉みつつ丸めてレタス型にしているとのこと。“レタス型のしわくちゃなメモ”という実用性皆無な製品を作る情熱はどこから来るのか! と驚きを隠せない。
たぶんそんなに数量作れないだろうから、店頭で見つけたら(この夏出荷予定)即買い推奨だ。
3.面倒な軽減税率計算がラクラク
この秋以降の経済界最大のトピックといえば、10月1日から施行される消費税増税と軽減税率制度だろう。特に飲食店などでは、店内のイートインは10%なのにテイクアウトにすると8%、と複数の税率が適用されるため、いちいち計算がややこしいことになること間違いなし。
しかし、そういう困りごとを便利に解決するのが、文房具の本分である。
カシオ計算機の「軽減税率電卓」は、その名の通り、いち早く軽減税率制度に対応して6月に発売となった電卓だ。
最大のポイントは、メモリーキーの上段に配置された税計算用ボタン。「税込1」「税抜1」「税込2」「税抜2」「税計算合計」と5つのボタンが並んでおり、それぞれ10%と8%、2つの税率が素早く計算できるようになっている。
しかも、例えば「200円(税10%)+450円(税8%)+550円(10%)」のような2つの税率が混在する計算も、それぞれの価格に税をプラスしつつ合算でき、さらには計算中の10%・8%の商品の税込金額・税抜金額・税額のみを、それぞれ表示するということも可能なのだ。
なにより、表示変更もそれぞれの税率ボタンを押すだけなので、操作が非常に直感的というのが素晴らしい。すでに複数の税率に対応した電卓は各メーカーから発表されているが、ここまでの多機能をシンプル操作で実現させるのは、さすがカシオ! といったところだろう。
4.ざっくり半裁も測ってカットもこなす多用途ペーパーカッター
2年前ぐらいから立て続けに新製品が出続けているのが、ディスク刃を使った卓上用のペーパーカッターだ。
特に人気なのが、半裁(A3用紙をA4用紙枚にカットするなど)に特化したもの。ただ、実際にペーパーカッターを導入してみると、半裁だけではなく●㎝だけ端を切り落としたい、というような作業も、意外と発生する。
さらに半裁ペーパーカッターは、ボード中央部にカッターのレールが付いているものが多く、結果的にボードが大きくなってしまいがち。それを解消するコンパクトな折り畳み式の製品もあるが、ヒンジ部で誤差が出るために、数値で測ってカットするような作業には向かないのだ。
そこでカール事務器が打ち出してきたのが、折り畳みではないけれどコンパクト、半裁も測ってカットもできるペーパーカッター「DC-600」(A4サイズ)と「DC-630」(A3サイズ)だ。
特徴的なのは、カッターレールの左右で幅の違うボード部分。幅の広い左側は半裁用のゲージがプリントされており、A4、B5など表記された線に紙を合わせて切るだけで、スパッと半裁が可能となっている。サイズ表記に「A5=A4→A5×2」といった視覚的なアイコンが入っているのも親切だ。
対して右側の狭幅なボードには1㎝刻みの線が引いてあり、こちらに紙を合わせると、用紙の端を測って裁ち落とすという作業ができる。実際に試してみると、やや誤差は出るようにも感じたが、そこそこ正しくは切れているようだ。特にイベントチケットや自作名刺などを、まとめてカットするには使いやすそうだ。
片側のボードを狭くしたことで、半裁機能は残しつつも全体的にコンパクト化を図ったアイデアは、実用的でなかなか面白いと思った。
5.情報の一覧性が高い、ソートできるノート
実用性の高そうなツールでほかに気になったのが、印鑑ケースや印章・記念品のメーカー、天野製作所が展示していた「ソーティングノート」だ。
こちらはA5リングノートとA4バインダーをセットで使う、ちょっと変わった情報整理システムである。
まずリングノートは、リングを天側にして横長のノートとして使う。書き込みの際は、上辺のインデックス欄に日付や分類・タイトルなどをしっかり記入するのがポイントだ。
書き終わったら、リング下のミシン目から切り離してバインダーに綴じるのだが、この時は左側にあるリング穴を使って綴じるのだ。さらに枚数を重ねて綴じるときには、リング穴を下に一段ずつずらして綴じていく。
こうすることで、バインダーにはインデックス欄だけがズラリと上から下へ並んだ状態で保管が可能となる。これならノートの内容を探すのに必要な情報が一目で見渡せるというわけだ。
例えば営業職なら、顧客シートをこれで管理すると良さそうだし、他にはアイデアメモや議事録なども楽に管理できるだろう。1ページを1つのデータファイルとして扱うやり方としては、なかなか秀逸だ。
とはいえ、情報の整理が苦手な人はそもそもインデックスを作るのが苦手なので、万人にとって便利! とは言えないかもしれないが。
【関連記事】文具見本市ISOTで見つけた素通りできないインディーズ文具6