文房具
2019/7/17 19:15

文具見本市ISOTで見つけた素通りできないインディーズ文具6

“見本市ビジネス”が見直される中、国際文具・紙製品展(ISOT)も年々、規模の縮小が指摘されてきた。だが一方で、文具ファンからの注目度は増し、中小の文具メーカーによる新しいアイデアや、ずっと作り続けてきた製品などの紹介の場として、面白いイベントに変貌してきている。そんな2019年のISOTで、筆者が面白い! と目を止めた製品を紹介していきたい。

 

1.台湾の注目万年筆ブランドから登場したプレミアムなシャープペンシル

長らく著名な筆記具ブランドのOEMを担ってきた台湾メーカーが立ち上げた、万年筆を中心にした筆記具ブランド「TWISBI(ツイスビー)」が、初めてISOTに出展。独自のインク吸入機構を持つ万年筆や、インク吸入機構内蔵式ながら5000円台で買えるモデルなどで、数年前から注目されているブランドだ。

↑TWISBI「ダイヤモンド」には新色が登場。小振りの握りやすい万年筆だ
↑TWISBI「ダイヤモンド」には新色が登場。小振りの握りやすい万年筆だ

 

ブースでもメインの展示は「エコ」「ダイヤモンド」「ゴー」といった定番万年筆が中心なのだが、ボールペンやシャープペンシルも展示されていた。そのシャープペンシルが、とても良い物だったのでここで紹介しておきたい。

↑TWISBI「Jr.パゴダ ペンシル」750円(税抜き)。ちょっとプレミアムな大人向けという趣き
↑TWISBI「Jr.パゴダ ペンシル」750円(税抜き)。ちょっとプレミアムな大人向けという趣き

 

シャープペンシルは樹脂軸のタイプと金属軸のタイプの2種類を展示。どちらも鉛筆のような六角形の軸が印象的な、大人向けの製品に仕上がっていた。中でも樹脂軸のシャープペンシルは、ラバーが貼られたグリップ部分がとても握りやすく、また筆記時のウエイトバランスが良好なため、書いていて疲れにくい。ステッドラーの製図用シャープペンシルをカジュアルにしたようなデザインも好印象。軸色はブルー、マーマレード、ホワイトの3色、芯は0.5mm、0.7mmの2種。

 

2.コンクリート製なのに侘び寂びを感じさせる茶器のようなペンスタンド

色鮮やかなシリコンを使った小物で知られるピージーデザインが2016年から始めたプロジェクト「蔵前コンクリート」は、コンクリートという素材の質感や触り心地に着目したブランド。

 

コンクリート製の小さなペンホルダーとコンクリート軸のボールペンをセットにした製品で、今年の日本文具大賞を受賞したのだが、筆者が注目したのは、まるで湯飲みのような形のペンスタンドの方だ。つるりとした外観と触感はコンクリートそのものなのに、武骨な印象が全くないデザインがとても面白い。

↑ピージーデザイン「蔵前コンクリート ペンスタンド」1600円(税抜き)このサイズ感がまた、ペンスタンドとしてちょうどいい
↑ピージーデザイン「蔵前コンクリート ペンスタンド」1600円(税抜き)このサイズ感がまた、ペンスタンドとしてちょうどいい

 

普段目にする事は多いもののあまり触ることのないコンクリートを、徹底して角をなくした丸みを帯びたデザインに仕上げ、外側と内側の色を変える程度の最小限のデザインを施して作られたペンスタンド。素材からくるクールさと形の柔らかさが、上手い具合にバランスを取っていて、良くできた茶器を思わせる。

↑磁器と陶器の中間のような、独特の“土感”がコンクリートの面白さだ
↑磁器と陶器の中間のような、独特の“土感”がコンクリートの面白さだ

 

良い湯呑みをペンスタンドとして使うような感覚で、こういう“侘び寂び”が良い方向に作用した製品というのは意外に少ないのではないだろうか。これに挿す筆記具は、トンボ鉛筆の「Zoom 砂紋」がぴったりだ。

3.小物をお手軽にカスタマイズできる転写シール

扶桑の「irodo」は、布に貼れるステッカー。アイロンプリントではなく、擦って貼れる転写シールなのがポイントだ。裏紙(というかシートだが)を剥がして貼りたい位置に載せ、上から擦ったら、シートを剥がして貼り付けた部分を指で押さえるだけと、簡単に貼ることができる。貼った後で押さえてやると、布目がシールに浮き出してくるくらいシール自体が薄く、上から触ってもほとんど異物感がない。

↑扶桑「irodo」360円~470円(税抜き)シールはテーマごとに、1シートに20種前後の柄が収録されている。写真はデニムの表紙のノートに貼ったところ
↑扶桑「irodo」360円~470円(税抜き)シールはテーマごとに、1シートに20種前後の柄が収録されている。写真はデニムの表紙のノートに貼ったところ

 

熱が必要ないから、布だけでなく革やナイロンなどにも貼れるのも魅力。手帳の表紙などに、箔押しほど大仰にならず、気軽にワンポイントを入れられる。ビニールカバーや合皮のカバーなどにも使えるから、ほぼどの手帳にも使え、カスタマイズできるだろう。スマホケースやキーケース、財布などにも使えるので、汎用性はかなり広い。柄も使いやすいシンプルなデザインのものが豊富に揃っていて、実用性も高そうだ。

↑トラベラーズノートの表紙にもキレイに貼りつけられる
↑タンニンなめしのレザーを使ったトラベラーズノートの表紙にも、きれいに貼りつけられる

 

4.眼鏡としても活用できる2枚のルーペ

罫線が斜めに引かれた、手首に負担を掛けないノートで有名になった伊葉の新作は、まさかのルーペ。IDカードホルダーなどに装着する小さな2枚のルーペからなる製品だ。

↑伊葉「伊葉ルーペ」価格未定。小さなルーペ2枚のセット
↑伊葉「伊葉ルーペ」価格未定。小さなルーペ2枚のセット

 

例えば、ちょっと小さい文字が見にくい時、このルーペを左右の手でそれぞれ一つずつ持って覗けば、簡易の老眼鏡として利用できるという仕掛け。近眼用のメガネを使っている人なども、いちいちメガネを外す事なく、メガネのレンズの前にこのルーペをかざすだけで、かなり小さな文字まで見える。

↑このように両手で持って使うと、老眼鏡代わりにもなる
↑このように両手で持って使うと、老眼鏡代わりにもなる

 

度数は、リーディンググラスで言うところの+1.5から、0.5度刻みで+4まで揃っているから、かなり老眼がひどい人にも対応する。また、ルーペを二枚重ねる事で、さらに高倍率のルーペとしての利用も可能だ。

 

これ、ちょっとしたアイデアではあるけれど、あれば本当に便利なもの。何よりメガネの上から使えるのが良いし、使ってみると実用性がとても高い事が分かる。かなり小さな文字までキレイに見えるのだ。実は、レンズ製造が本業だったとのことだが、それだけのことはある、明るくて見やすいレンズが使われているのだ。

↑参考出品されていた、ペットボトルに装着するルーペ。ペットボトルの高さに合わせてピント調整してあるので、とても使いやすい
↑参考出品されていた、ペットボトルに装着するルーペ。ペットボトルの高さに合わせてピント調整してあるので、とても使いやすい

5.厚めのガラスにも装着できるマグネットフック

マグエバーの「マグサンド」は、ガラスなどの磁石がくっつかないところでも、磁石でガラスを挟む形にすることで、マグネットフックを装着できるようにした製品。

↑マグエバー「マグサンド」1280円(税抜き)。フックの形は、ハンガーなどを掛けるiフックと、汎用性が高いJフックの2種類がある。写真はJフック
↑マグエバー「マグサンド」1280円(税抜き)。フックの形は、ハンガーなどを掛けるiフックと、汎用性が高いJフックの2種類がある。写真はJフック

 

ポイントは、厚さ5mmくらいあるガラスやアクリル板でも、十分固定できる強さの磁石が使われていることと、ガラス面などに貼っても傷がつきにくいように、マグネット全体にシリコンコーティングを施してある点。そのため、従来のネオジウム磁石に比べ、割れや錆、キズなどに強く、ガラス窓の外側やバスルームなどにも安心して使えるというわけだ。

↑こんな風に、ガラスを挟むようにして装着できる
↑こんな風に、ガラスを挟むようにして装着できる

 

5mm厚のガラスに挟んで、約500gの荷物が掛けられるというのは、実際、かなり実用的。元々、マグネットフックにそれほど重いものは掛けないわけで、例えばワイシャツ1枚で約200g、針金ハンガーが約40gくらいだから、耐荷重500gあれば普通に使える。金属に直接付けた時の耐荷重は約2Kgだから、本当に強力な磁石なのだが、これが貼ったり外したりする際に傷の心配をしなくて良いというのも、とても実用的だと思う。フックも、I型とJ型の両方が用意されていて、全体のデザインもなかなかキレイな仕上がりだ。

 

6.スマホとセットで使いたくなる電子メモパッド

製品化はもう少し先になりそうだが、ワコムのブースに展示されていた新世代の「Bamboo Slate」のプロトタイプも。手帳型のスマホケースの開いた右側に、キングジムの「ブギーボード」のようなメモパッドが装着されていて、そこに電子ペンで書くと、パッドに書かれた内容がそのままスマホの画面にリアルタイムで反映されるという製品だ。

↑ワコムのブースに展示されていた、新世代Bamboo Slateのプロトタイプ。右側のメモパッドに書いた内容が、Bluetoothで接続したスマホに送られる仕組み
↑ワコムのブースに展示されていた、新世代Bamboo Slateのプロトタイプ。右側のメモパッドに書いた内容が、Bluetoothで接続したスマホに送られる仕組み

 

ワコムでは、今回の展示でもラミー「サファリ」のローラーボール軸に入る程度の小さな電子ペンのデモを行っていて、遂に、2色ボールペンの片方に電子ペンを入れることに成功していた。

↑ラミー「サファリ ローラーボール」の軸の中に入れられる電子ペンも、参考出品されていた
↑ラミー「サファリ ローラーボール」の軸の中に入れられる電子ペンも、参考出品されていた

 

そういう、一般的な筆記具に近づいた電子ペンを広く使ってもらうためのソリューションとして、今回のデバイスもあるのだろう。メモとして普通に使え、それが自動的にデジタルで保存できるというのは、従来の電子メモツールに比べても、実用的だし、何より紙を使わないというのが新しい。

 

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