文房具
2019/12/23 19:30

最速レビュー! キングジム「フリーノ」は筆圧検知付きで手書きを楽しめるデジタルノート

※2019年12月のクラウドファンディング発表時にレビュー。製品版で改良されたスペックなど変更点は、赤字で追記しています。

 

「デジタル文房具」というジャンルは難しい。なにが難しいかって、“文房具”というカテゴリでまとめられてしまう以上、新参者のデジタル機器が、長い歴史の中でチューンアップされてきたアナログ文房具と同じ基準で使い勝手を比較されてしまうわけだ。

 

そんな中でも特に難しいのが、デジタルノートではないだろうか。紙+ペンという、いわばアナログ文房具を代表する二大ツールを相手に、「あいつらより便利ですよ」とアピールする必要があるからだ。実際、これまでにも各社からいくつかデジタルノートが発売されてきたが、残念ながらどれも、メジャーな存在になるほどには成功していない、というのが正直なところだろう。

 

そんな、大変過ぎるぐらいに大変なジャンルに、果敢にも新たなチャレンジを仕掛けてきたのが、デジタル文房具メーカー、キングジム。クラウドファンディングサイト「Makuake」を使ったキングジムのプロジェクト第4弾として、2019年12月4日にスタートしたデジタルノート「フリーノ」は、果たして紙のノートから切り替える価値があるのか? ファンディング達成前のサンプル品を使う機会を得たので、試してみた。

キングジム
デジタルノート「フリーノ」

オープン価格(Makuakeにて3万8000円/12月22日時点)(実勢価格4万円前後)
※2020年5月頃発売予定2020年7月31日発売

構想9年!キングジムの筆圧検知する電子ペーパー端末「フリーノ」は紙の書き心地とデジタルの機能でストレスフリー
https://getnavi.jp/stationery/451188/

 

無限のノートが手元に集約されたようなストレージ

デジタルノート「フリーノ」の画面は、E Ink社(米国)の電子ペーパーディスプレイを採用。画面サイズは6.8インチで、紙のサイズに置き換えるとA6サイズよりちょっと小さめ。だいたい文庫本サイズぐらい、と言えば伝わりやすいか。

 

ノートとして使用する際は、まずトップメニューから「Note」の新規ノートボタン(縦・横を選択可)を押すと、まっさらなノート画面が現れる。

↑「フリーノ」のトップメニュー画面。ここから既存のノート追記や新規ノート作成を選択する
↑「フリーノ」のトップメニュー画面。ここから既存のノート追記や新規ノート作成を選択する

 

初期段階では無地が選択されているが、サイドメニューから「罫線」「方眼」「スケジューラー」など12種類のフォーマットが選べるので、ここで自分の使い方にマッチした紙面をチョイスする。また、オリジナルフォーマットも4種類まで追加可能。

 

ちなみに保存できるページ数は内蔵メモリで約1万3000ページ分。 本体メモリの容量は、開発時8GBから、製品版では32GBに変更。約8万7000ページ分のノートを保存可能となった。さらにSDカードもストレージとして使用できるので、ざっくりと、普通に使っている限りはほぼ無限のノートが手元に集約されていると考えて良さそうだ。

↑初期状態では罫線タイプは横罫・方眼・スケジューラーなど12種類。自作のオリジナルも4種まで追加できる
↑初期状態では罫線タイプは横罫・方眼・スケジューラーなど12種類。自作のオリジナルも4種まで追加できる

 

筆圧検知でアナログのような描線を表現

↑かなりツルツルした板面なので、どうしても走り書きになりがち。個人的にはちょっと苦手な書き味
↑かなりツルツルした板面なので、どうしても走り書きになりがち。個人的にはちょっと苦手な書き味

 

書き味に関しては、ツルツルの画面に樹脂チップを備えたデジタルペンの組み合わせなので、かなり滑るなー、という印象。他社製デジタルノートの中には、ペーパーライクな書き味を追求して表面に特殊なコーティングを施した製品もあるが、「フリーノ」は一般的なタブレットに手書きするのとほぼ同じ感覚だ。

 

その代わりと言ってはなんだが、デジタルノートとしては珍しく、入力には4096段階の筆圧検知を備えている。ペンのモードによっては筆圧次第で太~細まで線が書き分けられるので、描線はわりとアナログっぽい。イラストを手描きするにも使えそうである。

↑さすがワコムのデジタイザだけあって、筆圧検知はスムーズで使いやすい
↑さすがワコムのデジタイザだけあって、筆圧検知はスムーズで使いやすい

 

また、電子ペーパーは書き消しを繰り返すと画面上にうっすら焼き付きのような汚れが発生するものだが、「フリーノ」はそれが思ったよりも気にならない。ノートを書く度にいちいち画面リフレッシュを行うのは面倒なので、このあたりはなかなか優秀だ。

 

デジタルならではの検索性と拡張性

ノート画面は終了すれば自動で保存され、トップメニューで選択すれば、いつでも続きから書き始められる。ノート自体にはそれぞれ名前を設定できるため、ファイルが増えてトップメニューから探すのが大変……という場合でも、ファイルネームで検索すれば素早くたどり着けるだろう。

 

また、ノートのページごとにタグマーキングも可能なので、重要な書き込みのあるページにタグを打っておけば、後から見返すのも簡単だ。こういった検索性の高さは、やはりデジタルノートならではの便利さと言える。

↑ドキュメントビュワーとしては画面が小さいので、A4書類などをそのまま読むのはつらいかも
↑ドキュメントビュワーとしては画面が小さいので、A4書類などをそのまま読むのはつらいかも

 

↑もちろんドキュメントファイルへの直接の書き込みも可能
↑もちろんドキュメントファイルへの直接の書き込みも可能

 

もうひとつ、使い道が多くなりそうなのが、ドキュメントのビュワー機能だ。こちらはトップメニューのドキュメントをタップすると、保存されているPDFやJPEG形式のデータを画面で閲覧することができる。

 

また、書類自体にもノートモードと同様にペンで書き込みが可能なので、要点の追記や校正作業にも使えそうだ。

↑Dropboxなどクラウドとの連携は、今後のデジタルノートには必須の機能と言えるだろう
↑Dropboxなどクラウドとの連携は、今後のデジタルノートには必須の機能と言えるだろう

 

ちなみに、ドキュメントデータは内蔵メモリ・SDカードに加え、Wi-Fi接続によりクラウドストレージのDropboxを選択することも可能。これなら、PCで作成したPDFを紙でプリントアウトせずに「フリーノ」で読めるほか、ドキュメントスキャナで取り込んだ資料や書籍もダイレクトで持ち込める、というわけだ。

 

こういった使い方も、紙のノートでは対応できない=デジタルノートとしてのメリットとなっている。

卓上カレンダーとして常時表示させるのも便利

↑カバーをスタンドとして立てると、ほぼ違和感のない卓上カレンダーに
↑カバーをスタンドとして立てると、ほぼ違和感のない卓上カレンダーに

 

機能としてユニークなのは、「フリーノ」自体を据え置きのカレンダーとして使えるというもの。電子ペーパーは表示し続けるだけならほぼ電力を消費しないので、そういった使い方もできるのだ。

 

トップメニューからカレンダーを選んで、専用カバーの表紙を折り返して立てておけば、それでOK。ノートとしては小ぶりな「フリーノ」だが、このように卓上カレンダーとして使うとジャストなサイズ感である。

↑カレンダーの日付枠をタップすると、書き込み画面が展開。点線内がマンスリーカレンダーでの表示部分
↑カレンダーの日付枠をタップすると、書き込み画面が展開。点線内がマンスリーカレンダーでの表示部分

 

日付の枠をタップすれば、もちろん予定の書き込み・消去も可能。ここで表示される書き込み欄は「マンスリー枠」「枠外メモ」に分割されており、枠内に記入した内容はそのままカレンダーに反映される。

 

ただしかなり縮小表示となるので、カレンダー表示時だと、よく見ないと「あ、なんかチマチマっと書いてるな」ぐらいで、きちんと読み取るのは難しい。そのため、枠には予定の大見出しだけ書き込み、細かな内容は枠外メモに書いておく、という使い方が良さそうだ。

 

取り回しがよく便利なサイズ感

↑取り回しが良く、個人的にはかなり好感の持てるサイズ感だった
↑取り回しが良く、個人的にはかなり好感の持てるサイズ感だった

 

さて、10日間ほど「フリーノ」を使ってみての感想だが、この卓上カレンダーとしてジャストなサイズが、デジタルノートとしてはわりと便利かもしれないな、と感じた。筆者は普段、紙のノートとしてA5サイズのノートを使用しているが、持ち運べるページ数に上限がないなら、別に6.8インチ≒A6サイズでも問題ない。1案件につき1ノートファイルと決めてしまえば、検索性もさほど問題ではないわけだ。

 

それなら適度に読み書きできるスペースがありつつ、より可搬性の高いコンパクトサイズの方がありがたいのは当然だ。(本体+ペンの重量は約240g。ただし専用カバーがやや重いのが気にはなるが)

 

気になったのはWi-Fi接続下での消費電力

↑Wi-Fiをオンにした瞬間から、バッテリーがガンガン減っていく。これは完成版では改善されていて欲しい
↑Wi-Fiをオンにした瞬間から、バッテリーがガンガン減っていく。これは完成版では改善されていて欲しい

 

逆に気になったのが、Wi-FiをONにした際の消費電力の多さだ。ドキュメントを取りにDropboxにアクセスしていると、バッテリー残量がみるみる減っていくのである。消費電力の少なさがポイントの電子ペーパー搭載製品だけに、これはちょっと困る。いざ書きたいときにバッテリー切れで使えないノートでは、意味がないのだ。もちろん、今回試用しているのが完成前のサンプル機だから、ということもあるかもしれないが、少し気がかりである。

キングジムの「フリーノ」開発者に確認したところ、「現在、CPUやバッテリーなどの変更をしているので最終版とは仕様が異なります。ただしWi-Fi接続時に電力消費が高まるのはシステム面によるものなので、自動的にW-Fi関連無操作状態から5分後に自動的にオフとなる仕様にしています。また、Dropboxの連携とアップデートでしか使わないのでWi-Fiの想定使用時間は少ないです。ついては、提示する電池寿命はWi-Fiとフロントライトはオフでの試算を予定しています」との回答を得た。(編集部注)

 

「デジタルノート」の食わず嫌いはもったいない。まずは試してみるべし

筆者は個人的にデジタルノートというジャンル全体に大きな期待を持っている。スマホなどのデジタルデバイスがここまで普及している現状で、やはり紙のノートや手帳ではできないこと(書いたノートや書き込み自体の検索などは、その際たる部分)が多いな、と感じているからだ。

 

もちろん今の時点で、デジタルノートが万人にとって紙のノートに取って替われるツールか? と問われると、残念ながらまだ難しい気がする。それは、やはり多くの人が、長年慣れ親しんだ紙の感触や使い方から離れることができないだろうなと思うからだ。

↑日頃から液タブで漫画を描いている筆者の妻は、あっという間に慣れていた。「普通に書きやすいよ」とのこと
↑日頃から液タブで漫画を描いている筆者の妻は、あっという間に慣れていた。「普通に書きやすいよ」とのこと

 

ただ逆に言うと、あくまでも慣れの問題、とも考えられる。例えば、幼い頃からタブレットにデジタルペンで書き込むことに慣れてきた世代にとっては、もうデジタルノートの方が便利! ということだって、あるかもしれないのだ。

 

「フリーノ」を始め「クアデルノ」(富士通クラウドコンピューティング)など意欲的なデジタルノートがあれこれ出始めている今こそ、「とりあえずデジタルノートも使ってみるか」ぐらいの感覚で、手を出してみてはどうだろうか?

 

 

「きだてたく文房具レビュー」 バックナンバー
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