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2020/4/3 19:00

120円で驚きの完成度!三菱鉛筆「ユニボールワン」は新開発のくっきりインクで記憶に残る字を書ける

文房具業界でも、実はなかなかハードな生存競争がある。ライバル社からいかにユーザーを奪い取るかというバトルが、日夜繰り広げられているのだ。例えば、最近の例で言えば、2018年末に発売されたゼブラ「ブレン」は、書き味なめらかなエマルジョンインクで先端がブレず、デザインも秀逸なのに、価格は150円とお買い得感が高い。

 

これは明らかに、同価格で、油性ボールペンの絶対王者として君臨する三菱鉛筆「ジェットストリーム」を食ってやろうという、ゼブラの意志が見てとれる。現時点では、いまだ王座揺るがず、という感じではあるが、実際のところ“ジェット派”から“ブレン派”へ鞍替えしたユーザーも少なくないようだ。

 

となれば無論、三菱鉛筆だって黙っちゃいない。今度は、ゼブラが圧倒的優位を誇る低価格帯ゲルボールペンのジャンルに対して、カウンターをブチかましてきたのである。2月に発売となった三菱鉛筆の新ゲルボールペン「ユニボール ワン」は、間違いなく、ゼブラの人気製品「サラサクリップ」の牙城を崩すべく開発されたのだ!(……と思う。)

 

三菱鉛筆が新ゲルボールペン「ユニボール ワン」を発売

三菱鉛筆
uni-ball one(ユニボール ワン)
0.38㎜(全20色)/0.5㎜(全10色)
各120円(税別)

 

そもそも「uni-ball one」という名前だけ見ても、気合い入りまくりって感じだ。三菱鉛筆のブランド名である「uni」はunique……つまり、「唯一」を意味する。そこに「one」ときた。製品名にブランドの意となる「1」を重ねてきているあたり、三菱鉛筆はかなり本気で来たな! というのが見て取れる。

 

価格は120円(税別)と、「サラサクリップ」の100円には惜しくも届かなかったが、それでも従来の三菱鉛筆のノック式ゲルボールは150円が基本だったわけで、この120円がかなり戦略的な価格設定なのは間違いない。

↑全体的に凹凸が少なくスッキリしたルックスは、昨今のボールペンデザインの流行ど真ん中という印象だ
↑全体的に凹凸が少なくスッキリしたルックスは、昨今のボールペンデザインの流行ど真ん中という印象だ

 

ルックスは低価格帯なりのシンプルなものだが、安っぽいというよりは、意図してスッキリと仕上げてきたな、という印象。軸は白一色に、刻印で製品名とボール径(0.5/0.38㎜)が入っているだけ。インクカラーは、クリップ基部の色替えだけで提示する形になっている。

 

特徴的なのは、トーションバー機構を使ったワイヤークリップ。バネを使わず、ワイヤーのねじれ弾性だけを使って、厚みのあるノートなどにも挟めるものだ。

↑金属ワイヤーのねじれ弾性だけで可動するクリップ。良くできているなぁと、思わず感心した部分だ
↑金属ワイヤーのねじれ弾性だけで可動するクリップ。良くできているなぁと、思わず感心した部分だ

 

これもスッキリとした見た目の構成要素であると同時に、単純な機構で部品コストを下げ、さらにライバル「サラサクリップ」のポイントのひとつである“可動クリップ”を実現しているわけである。

 

新開発の「ユニボール ワンインク」でくっきり鮮やかな発色

とはいえ、何より最も“売り”となるのが、新開発のゲルインク「uni-ball one-ink(ユニボール ワンインク)」だ。顔料を粒子に閉じ込めることで紙への浸透を防ぎ、くっきり鮮やかな発色を実現した、というものである。

 

実際にどれほどのものかというと、例えば他社の黒ゲルインクボールペンと書き比べてみても、一見してはっきりと黒さの違いが分かるレベルなのだ。

↑ライバルとなり得るゲルインク(「ジェットストリーム」のみ油性)ボールペンの、黒インクの発色を比較。こうして見ると、確かに「ユニボール ワン」の黒さが際立っている
↑ライバルとなり得るゲルインク(「ジェットストリーム」のみ油性)ボールペンの、黒インクの発色を比較。こうして見ると、確かに「ユニボール ワン」の黒さが際立っている

 

斜めから光を当てて見ると特に分かりやすく、他社の黒がテカるのに対して、「ユニボール ワンインク」は反射が少なく、どの角度から見ても黒のまま。文字の読みやすさとしては、まず確実に“ゲル最強”と言っていいはずだ。

↑光が当たる角度を変えても、「ユニボール ワン」は反射が少なく、くっきりと黒い
↑光が当たる角度を変えても、「ユニボール ワン」は反射が少なく、くっきりと黒い

 

では書き味の方は? というと、あくまでも感覚的な部分ではあるが、ゲルとしてはややオイリーというか、わずかにぬるっとした粘度を感じる。もちろん油性インクほどの粘りがあるわけではないが、三菱鉛筆の従来のゲルインクと比べても、サラサラ感には欠けるように思った。これはおそらく、「ユニボール ワンインク」の特性によるものなのだろう。

 

とはいえ、サラサラのゲルに慣れた人だと一瞬違和感があるかも? といった程度で、普通に文字を書く分には気になるレベルではまったくない。

↑顔料が紙に吸い込まれず、表面に残るのが「ユニボール ワンインク」の特性。なるほど、納得のくっきり具合だ
↑顔料が紙に吸い込まれず、表面に残るのが「ユニボール ワンインク」の特性。なるほど、納得のくっきり具合だ

 

インクカラーは、発売時点で20色(0.38㎜は20色、0.5㎜は10色)と、かなりボリューミーなラインナップ。現時点では「サラサクリップ」の56色には及ばないが、おそらく今後も、新色を立て続けに打ち出してくるのは予想に難くない。

 

また、初手から「ブラウンブラック」「ボルドーブラック」「グリーンブラック」など、筆記色として人気の高まりつつあるダークカラーが入っているのは、さすが、ユーザーニーズという大事なところを押さえているな、と感じる。

↑全体的にクッキリとしているので、黄色などの浅い色も意外と視認性が高い
↑全体的にクッキリとしているので、黄色などの浅い色も意外と視認性が高い

 

ただ、個人的には「オレンジ」と「マンダリンオレンジ」、「ピンク」と「ベビーピンク」と「ライトピンク」など、クリップ基部の色を見ただけでは一瞬区別が付かないような微妙色が重なっているのは、やり過ぎじゃないかとも思うのだけど。

 

おそらく、店頭什器(販売時の陳列ケース)では似たような色の混入待ったなしと思われるので、購入時には軸に貼られたシールで色名をよく確認するのをオススメする。

 

「きだてたく文房具レビュー」 バックナンバー
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