この連載では、もう何度語ったか分からないほどよく紹介しているのが、高機能ペンケース。正直、ここ数年の文房具業界で、最も過熱したジャンルと言って間違いない。ブーム前と比較したら、文房具店のペンケース売り場は、面積比でおよそ倍ぐらいに広がったのでは? と思うほどのレベルで、製品も増えているはずだ。
単なる“文房具を持ち運ぶための容れ物”から、“机上で広げた際に文房具の出し入れなどが便利になるケース”として進化したのが高機能ペンケースだが、その進化にも“流れ”というモノがある。
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そもそものブームのきっかけは、自立してペンスタンドになるという、いわゆる“立つペンケース”だった。ところが、2018年頃から、じわじわと“寝かせるペンケース”(≒展開してペントレーに変形するもの)が増えてきたのだ。これは、先行して流行った“立つペンケース”が、①ひとまず機能的に出揃ったこと、②製品がたくさん出すぎて目新しさが減ったこと、が挙げられるだろう。
ちなみに、立つ/寝かせるのどちらにも、それぞれメリット・デメリットはあるので、どっちが優れているとは一概に言えない。もう完全に、好みの問題だ。とはいえ、未だに続々と面白い新製品が発売されている“寝かせるペンケース”は、まさに今が機能成熟期真っ盛り、といった感じ。まだまだ文具好きとしては、目が離せないジャンルなのである。
そこで今回は、この“寝かせるペンケース”の最新アイテム2点を紹介したい。
これは事件だ!? あのコクヨ「ネオクリッツ」がついに寝た!
……と言われても、知らない人にはなんのことやら? という感じだろう。コクヨの「ネオクリッツ」といえば、この高機能ペンケースブームの立役者にして、“立つペンケース”の元祖とも言える存在。以降、さまざまなタイプの“立つペンケース”を生み出してきたネオクリッツシリーズだが、このほどついに、寝かせるタイプが新登場したのだ。ネオクリッツじゃなくて、寝るクリッツ(そんなに上手く言えてない)。
コクヨ
ネオクリッツ ワークサス
1800円(税別)
見た目は、従来のネオクリッツを上から思いっきり押しつぶしたようなポーチスタイル。このあたりは、いかにも「ネオクリッツ」シリーズだな、というのが見て取れる。
ジッパーを開けると、まず目に留まるのは仕切り部の多さだろう。まず左側面にペンホルダーがあり、底部は全部で5分割に仕切られている。仕切りのうちひとつはジッパー付きメッシュポケットと兼用だ。
仕切りはそれぞれサイズが異なり、定規などの長物・修正テープやテープのり・付箋(75mm四方)・印鑑や消しゴムなどの小物・メインの筆記具スペース、といったように使い分けると良さそう。
ただ、メインのジッパーを開けただけの状態だと、やや中が深くなって文房具が取り出しにくい。そういう場合は、側面上部をめくって折り返すことによって、全体が浅くなってアクセス性が上がるように工夫されている。これは「ネオクリッツ」シリーズ伝統の使い方と言えるだろう。
もちろん、折り返しをしなくても側面のペンホルダーへは簡単に手が届くので、素早くメインの筆記具だけを取り出したい場合はそのまま、フルに中の文房具を使いたいときは折り返す、という使い分けができるよう作られている。
高機能ペンケースブームを牽引してきたコクヨだけに、そのあたりの心遣いはさすが! というところだ。
実際に使ってみると、寝かせて使うペンケースなのに、中の収納物は立てて使えるようになっているのが非常に興味深かった。つまり、適度なサイズに区切られた仕切りを駆使することで、ネーム印やテープのりなど、筆記具とごっちゃに混じると取り出しにくい小物が、自立した状態で整理収納できるのである。
オフィスデスクの引き出しでも、これらの小物は他と分けて、すぐ取り出せるように収納している人が多いと思う。ワークサスは、その感覚を持ち運べるペンケースにもそのまま引き継いでいるかのような設計なのだ。
逆に、収納物が少ないと仕切りがスカスカになって使いづらい、というデメリットはあるかもしれない。入れる文房具によっては使う人を選ぶかも……という点では万人向けとは言い難いが、ハマる人にはかなり便利なペンケースだと思う。購入前にはいったん内部の写真と、持ち運びたい文房具を照らし合わせて、ある程度イメトレをしておくと良さそうだ。
ドバッと入る大人のお道具箱ペンケース、レイメイ藤井「COHACO ペンケース」
対して、仕切りは少なめでドサドサと文房具を放り込みたい派におすすめなのが、レイメイ藤井の「COHACO」(コハコ)である。側面から見ると、上部がうっすらとアーチ状になった、カマボコ形のセミハードペンケースだ。
レイメイ藤井
COHACO(コハコ)ペンケース
1300円(税別)
前面のマグネットホックを外すと、フタが大きく90度開くようになっており、広めの収納スペースが全て見渡せる構造。底部には面ファスナー(いわゆる「マジックテープ」のようなもの)式の仕切り板が1枚、さらにフタ部裏側は大容量のメッシュポケットとなっている。
さらにフタは、フルオープンにした状態を維持できるので、ほぼペントレー感覚で使えて、中へのアクセス性は非常に高い。
メインの収納スペースには、フチの深さもあって、文房具がたっぷりと入る。筆記具だけなら20本程度は余裕だろう。横幅も200mm以上と余裕があるので、ペンケースとしてだけでなく、コスメポーチやガジェットケースとしても十分に使える。
個人的には、これだけ広々と見渡せるなら、仕切りは逆に邪魔かな? とすら思うほど。そういう場合はいっそ仕切り板を取っ払って使うのもアリかもしれない。
また、地味に収納量に貢献しているのが、先にも述べたフタ側の大型メッシュポケットだ。どれほど大型かというと、ここだけで小さめのペンケース1つ分ぐらいの容量がある感覚。
マチはないが、フチがゴムになっているので、多少は厚みのあるものでも放り込むことができるのはありがたい。付箋や替え芯などの小物から、ハサミ、カッターナイフ、マスキングテープ、定規、充電用ケーブル……と結構な物量が入ってしまう。
大容量のドバッと系ペンケースは分類収納をしづらいのがデメリットだが、このメッシュポケットがあればそれで十分、という人もいるはずだ。
対して、使ってみてひとつ気になったのは、フタを固定するマグネットホックの閉じづらさ。
開けるときは、簡単にパチンと外れて良いのだが、閉じる場合にホックの凹凸がうまく噛み合わないことが多いのだ。特に、たっぷりめにモノを入れると、それが顕著になる。このホックひとつでフタを固定しているため、うっかり“閉じミス”したままカバンに放り込むと、中で開いて大惨事、なんてこともあり得る。
もちろん固定力自体に不満はないので、せめて閉じるときはパチンと音がするのを常に確認したほうが良いと思う。
「きだてたく文房具レビュー」 バックナンバー
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