最近疲れがひどくなると、どうしても本が読めなくなる。疲労で集中力がガタ落ちするのか、文字を目で追えなくなってしまうのだ。だから誌面を眺めていても、ボーッと「なんか文字があるな」と感じるだけで、意味のある情報が脳に入ってこない。さらに、加齢による目のかすみがコンボで加わると、もうダメ。
実は先日も、新たに資料を何冊か読み込まないといけない仕事があったのだが、これが驚くほどに読み進められないのである。気が付くと惰性でページをめくっていて、ハッと慌てて戻っても、どこまで読んだかまったく記憶に残っていないのだ。
そうだ、こういうときに何か役に立つ文房具がどこかにあったような気がする! そこで自宅の文房具棚をゴソゴソとかき回して……ありましたよ、集中力が欠如した状態でも加齢で目がかすんでも、文字をきちんと意味を持って読み取れるようになる便利なツールが。
1.“色”で1行~1段落ずつ視線を集中させる
とは言っても、それほど大げさなものではない。一般的には“リーディングスリット”などと呼ばれている、色つきの樹脂板である。文房具店などで比較的見つけやすいのは、クロスボウジャパンの「魔法の定規」だろう。
クロスボウジャパン
魔法の定規 ワイド
650円(税別)
ポイントになるのは“視界の限定”効果である。この「魔法の定規」を誌面に載せると、ページの数行だけに色が付いた状態になる。すると、この色が付いた部分にだけ視点が集中するので、目が“上すべり”にしくく、ゆっくりと文字を追っていくことができるという仕掛け。
そもそもリーディングスリットは、「ディスレクシア(dyslexia)」(理解力などに問題がないのに、文字の読み書き学習に困難がある障がい。識字障がい)の人が読書をするのに役立つ補助器具として、イギリスなどでは図書館にも置かれているツールなのだという。もちろん、筆者のように集中力が欠如して読書しにくい、なんて人にも役に立つ。
だいたいにおいて、文字が追えない・目が上すべりするという状態は、自分がいまページのどこを読んでいるのか見失っていることが多い。結果、読み飛ばしなどが多発してしまう。だから、常に「いまココ!」とハイライト表示されていれば、その部分に集中することができるのだ。
使用時は、下線部分の1行を読んだら次へとスライドさせていく。1行ずつ動かすのが面倒であれば、数行から1段落をまとめてハイライトするタイプを使っても問題ない。なににせよ、自分の目がいま見ている場所を把握できるなら、それで充分なのだ。「魔法の定規」はガイドラインが印刷されているので、それを行に合わせて動かせば、さらに読みやすくなる。
また、色が付いていることで、白い紙よりも光の反射を抑えられるという効果もある。白地に黒の文字はコントラストが強いので、目が疲れやすいのだ。これもまた集中力を欠かす原因のひとつなので、そこをケアできるのはありがたい。
さらに色が付いていてもまだ眩しいようであれば、くるっと裏返して使うのもあり。裏面はマット加工されているので、より反射を抑えることができる。蛍光灯直下で本を読む場合は、こちらのほうが読みやすく感じた。
2. 加齢による読みづらさにはルーペが効く
次なる問題は、加齢で細かい文字が見づらい、という点。こちらはリーディングスリット機能付きの「カラーバールーペ」が便利だ。置いて使うタイプの棒形拡大鏡だが、その中央の1行分が色つきになっている、というもの。
共栄プラスチック
カラーバールーペ A5タイプ(150mm)
700円(税別)
全長は150mmで、四六判ハードカバーの1行がぴったり収まる。拡大倍率は2倍と控えめなので、周辺の行との違和感は少なく、かつ読んでいる行のハイライト感はしっかりと感じられる。なにより、文字が大きくなると圧倒的に目に優しく読みやすい。ぐっと気合いを入れて誌面に向かう必要がないので疲れにくいのだ。これは助かる。
ただし、カマボコ形のバールーペを1行ずつスライドさせていくのは、やや面倒くさい。ページをめくる際も、いちいち持ち上げてまた置いて、というのは少々手間だ。内容に集中できるようになるまでの助走用補助具として使うのが、ちょうどいいのかもしれない。
もうひとつ、1行だけのハイライトには“表組みが見やすい”という効果もある。
似たような数字が延々と続く表を見るのは、集中していても段を飛ばしてしまうなどミスが出やすい。そういった場合も「カラーバールーペ」を使えば、1行ずつ丁寧に読んでいくことができ、ミスの危険性は間違いなく減らせるだろう。
老眼だの、集中力欠如だの、無縁だと感じている若い人でも、1本持っておくと便利なのではないだろうか。
「きだてたく文房具レビュー」 バックナンバー
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