文房具
2020/12/25 18:30

“巻く楽しさ”を強調! コクヨのマステカッター「Bobbin(ボビン)」の男もハマる作り込みを検証

誰にはばかることもなく堂々と表明するが、可愛いものが大好きだ。

 

ひとくちに“可愛い”と言っても、犬とか猫とかヒョウモントカゲモドキのように万人向けオールマイティな“可愛い”もあれば、ファンシーキャラ萌えもあるだろう。場合によると、排水溝の中からジッと見つめてくる殺人ピエロの「無機質な目がキュート!」ってこともあるはず。なにが可愛いと感じるかは人それぞれで、つまり世界は70億人以上の“可愛い”で満たされていると考えて良い。ビューティフルワールドだ。

 

筆者がなかでも特に可愛いと思うのは、小さな機械だ。チマっとした歯車やテンプが噛み合ってチャカチャカ、コリコリと一生懸命に仕事をしているのを見ると、心の奥に潜む野生の乙女がキュンキュンと吠えるのである。

 

文房具で言うと、三菱鉛筆のシャープペンシル「クルトガ」が、軸の内部で芯を回転させる歯車が動いているのを見ると、「はー、がんばってるねー」と撫でてやりたくなるぐらいに好き。

 

なぜ冒頭から、こんな“可愛い”をダダ漏れ状態で語っているかといえば、今回紹介する新製品が、まさにそんな筆者の乙女心に刺さって捻って練り潰されるほどにツボだったから。これは、ほんっっっとうにかわいいのである。はー、尊い。

 

可愛すぎて無限にマステを巻きたくなるシステム

その“最きゃわ”に素敵な新製品というのが、コクヨが2021年1月に発売するマスキングテープ小巻き機と、その周辺ツールで構成された「Bobbin(ボビン)」シリーズだ。

 

マスキングテープ(以下マステ)は、すでにコレクションアイテムとして世間的にも完全に浸透した感があるが、紙芯そのままだと気軽に持ち歩きにくく、誰かとトレードするのにも不便。それなら「コンパクトな小巻き芯に巻き直すと使いやすいよ」という話で、その小巻きマステを作るアイテムや専用カッターをシステム化したものである。

 

まずはこれがないと始まらないのが、「ボビン芯」と「コマキキ」だ。

コクヨ
Bobbin
ボビン芯 300円(税別・6個セット)
コマキキ 600円(税別)

 

主軸となるのは、小巻きマステの芯である「ボビン芯」と、巻き直すための「コマキキ」。「Bobbin」という名前は、この芯がミシンで使う糸巻きのボビンそっくりなところに由来している。

 

そしてなにより「コマキキ」! チマっとしたハンドルとリールを見ただけで分かるとおり、このハンドルを回してマステを小巻きにするのである。ああ、もう巻く前から自分の“可愛い”のツボに刺さるのが分かるやつだ。

↑コマキキ本体を開けたら、マステとボビン芯をセットする

 

本体のロックを外すとパカリと裏側がフタのように開いて、内部にアクセスできるようになる。

 

大きなリール側に、巻き直したい15mm幅のマステ(芯の内径18~40mmに対応)を、ハンドル側の軸にボビン芯をセット。フタを戻してロックしたら、マステの端をボビン芯に貼れば準備OKだ。

 

あとは時計回りにハンドルを回すと、マステがきれいに巻き取られていくという仕組みである。

↑あまりの楽しさに、どこまでも無心にクルクルクル……と回したくなる。個人的には、カニを食べるときの無心っぷりに近いと思う

 

動きを見てみよう。


このハンドルを回す際に、チキチキチキ……といかにも「頑張って作動してます!」的な音(おそらく逆転防止ラッチの音)がするのだが、Bobbin開発チームはこのチキチキ音にもかなりこだわって作ったと聞いている。いいぞ、何が大事なことか分かってるね!

 

そして、単純な「ハンドルを回す」という作業により、マステを巻き取り成長していくボビン芯という、明確な“リターン”が得られる喜びも大きい。

 

チキチキ音とラッチの効いたハンドルの回し応えを味わいつつ巻いて、もう充分に満喫したかなと思ったら(もしくは必要な量だけ巻けたら)、ハサミでカット。再びロックを外してボビン芯を取り出せば、小巻きマステの完成である。

↑小巻きマステの完成。ボビン芯のフチいっぱいまで巻いて、3m余りの長さが巻き取れる

 

ちなみにボビン芯同士は、凹凸を組み合わせて簡単に連結させることも可能。まとめてコンパクトに収納できるし、1つだけどこかへ転がってなくなっちゃった! というような悲劇が起こりにくいのだ。

↑ボビン芯は、ブロック玩具のように凹凸を組み合わせて連結すると、収納や携帯に便利だ

 

ささやかな小ワザではあるが、実際に運用し始めると、この便利さを体感できると思う。コクヨ、こういうのはとても上手い。

 

Bobbinは専用カッターもお見事なクオリティ

さて、せっかく作った小巻きマステだから、並べて置いておくだけでなく、きちんと貼る用にも使ってみたいと思うはず。

 

そこでBobbinシリーズには、携帯しやすい「カッター付きケース」と、手軽に使える「プチカッター」という2タイプのマステカッターもラインナップされている。

 

もちろん、小巻きにしたボビン芯を装着して運用するように作られた専用ツールなんだけど、これがまたどちらも「お見事!」と言いたくなるレベルで、気が利いている秀品なのだ。

コクヨ
Bobbin
カッター付きケース 450円(税別)
プチカッター 320円(税別)

 

「カッター付きケース」は、ペンケースなどに入れてマステを持ち運べるケース。鉛筆削り程度のサイズ感なので、まぁ収納に不便はないだろう。使う前の準備では、まずカパッとカバーを外して内部にボビン芯をセットするのだが、このとき、ローラーとテープ押さえの間にテープを通すようにしておく。

↑ボビン芯は表裏で穴の口径が微妙に異なるので、逆向きでは軸に入らず装着できない。細かい点だが、ユーザーが間違えるのを防ぐ工夫として上手い

 

カバーを戻したら、これで準備完了。使う際は、背面のダイヤルを左回りに回転させると、ケースのシャッターがバシャッと連動してオープン。「おお!」と驚く間もなく、続いて開口部からマステがダイヤルに合わせてニョロ〜っと伸びて出てくるのだ。

 

必要なところまでマステが出たら、開口部の上部に据えられたカッター刃にテープを当ててカット。切る際に押さえる方向が逆なので(一般的なテープカッターは下部に押し付けるので、粘着面が刃に当たる)、最初はちょっと戸惑うが、すぐ慣れるだろう。むしろ粘着面が開口部に貼り付きにくいので、こちらの方が合理的なほどである。切れ味もサックリと軽い。

↑ダイヤルを回した分だけテープが出てくる様子は、なかなかユーモラス

 

では、動きを見てみよう。

切り終わったら、ダイヤルを少し逆転させてやれば、シャッターが閉じて作業完了。

 

実はこのときによく見ると、テープの送り出しローラーも逆転して、カッター刃に貼り付いたテープをツッと引き戻しているのが分かる。次に使う際に、ミスフィードなくテープを送り出せるようにする工夫なのだろう。

 

こういったシャッターの開閉やテープ送りなど、小さなボディの中でむしろ「コマキキ」よりも複雑な機構が動いている様子は、小さな機械萌えとしては、もうたまらない可愛さなのだ。

↑シンプルな構造だが、よく見ると軸と軸受けを噛み合わせるギミックがあったりと、作りが細かい

 

もうひとつの「プチカッター」は、ボビン芯を挟みこむように装着するだけの、非常にシンプルなもの。カッターも金属のカルカット刃ではなく、ギザギザの大きなプラ刃となっている。

 

一見、さすがにこちらは単純な外付けカッターか、と思ったのだが、さにあらず。テープを切るとき、刃の下にある白いスイッチを上に押し込むと、テープ端がカッター刃から剥がれてピロッと浮き上がるのだ。プラ製とはいえ、刃に触れずにテープをつまめるのは、やはり安心感がある。

↑スイッチを下から押すとテープ端がポップアップしてつまみやすくなる。スイッチはテープを切るときに押し込まれ、元の位置に戻る仕組み
↑ボビン芯とプチカッターの連結。「転がるものは紛失する」の原理に基づいて、芯の転がり止めストッパーとして活用したい

 

また、外装の両面にはボビン芯と同じ凹凸があるので、プチカッターとボビン芯を連結して置いておけるのも、いい工夫だ。こういう小物は紛失の可能性が常にあるので、保管時にスタックさせておくと安心できるのである。

 

結局、マステ小巻きシステムはいつ流行るのか? 問題

実のところ、「コレクションとして死蔵されがちなマステを小巻きにして運用させよう」という発想はさほど新しいものではなく、数年前からmtをはじめ、いくつかのメーカーで小巻きシステムが製品化されている。

 

ところが、なぜか普及しない。良いアイデアだし見た目も可愛いしで、筆者も「これは流行るだろ」と思っていたんだけど。いったい何が足りなかったのか? ということで後発のコクヨが考えたのが、他社のシステムに薄かった「小巻きに巻く作業の楽しさ」の部分じゃないかと思うのだ。

↑「文具女子博2020」で先行販売された数量限定のBobbinセット。豪華な紙箱も含めて、イベントでは大人気だった

 

「コマキキ」でマステを巻く楽しさは、果たして小巻きシステムを普及させるのか? 今後のマステ界の動向から目が離せない。

 

ちなみに「Bobbin」は2020年12月の文具女子博において、最もときめく製品に与えられる「文具女子アワード大賞」を獲得した。注目度はすでに充分。今度こそ流行るか!? マステ小巻きシステム!

 

 

「きだてたく文房具レビュー」 バックナンバー
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