【文房具愛好家・古川耕の手書きをめぐる冒険】
文房具をこよなく愛す、放送作家の古川耕氏による連載。「手書き」をテーマとし、デジタル時代の今だからこそ見直される“手書きツール”を、1点ずつピックアップしている。第9回となる今回は?
第9話
コクヨ
鉛筆シャープ
198円(税込)
ペン先に鉛筆を削ったような細かな質感を施した、六角軸のシンプルなシャープペン。ノック部分の穴に直接芯を入れられる「スピードイン機構」を採用している。芯は0.3mm、0.5mm、0.7mm、0.9mm、1.3mmから選べる。
分類しがたい絶妙なデザインは、筆記具の新たな可能性
芯の太さはまるで鉛筆。けれど、ノック一発で書き出せる快適さはシャープペンそのもの。そんな鉛筆とシャープペンの良いとこどりをした筆記具が、各社から発売されています。ある製品は木軸で鉛筆らしさを表現、かたやある製品はシャープペン風の見た目ながら太い芯でガシガシ書ける……と、「鉛筆⇔シャープペン」間のどの座標に身を置いているかで、その製品のアイデンティティが透けて見えるのが面白いです。
さて、それでは2020年11月に発売されたコクヨの「鉛筆シャープ」はどうでしょうか。
ボディは六角軸で鉛筆風、しかし材質は光沢のある艶やかな質感で、これはかなり“非・鉛筆”的。特にブラックモデルはカドのエッジが際立ち、タイトでキリッと引き締まった凛々しい外見で、これは既存のシャープペンにはなかなかない凜々しさ。大人の普段使いにもイケるデザインだと思うのですが、皆さんどうでしょうか。
ふと思い出したのは、ユーザーインターフェースの世界で使われる「フラットデザイン」という考え方です。例えばスマホのアイコンなら、昔は見た目を既存のモチーフに寄せることで機能の説明をしていたのに対し、フラットデザインでは元イメージから距離を取り、抽象的でシンプルな見た目を指向しています。それに倣って言えば、本製品は、言わば「フラットデザイン的筆記具」。実は新しい座標に置くべき筆記具かもしれません。
【文房具愛好家・古川耕の手書きをめぐる冒険】バックナンバー
【第1話~第7話】https://getnavi.jp/tag/furukawakoh-handwriting/
【第8話】アウトドアでも働く現場でも! ライト付きボールペン「ライトライトα」の本気を感じる進化とは