世の中には、意外と多くの“ラインマーカー下手クソ勢”が存在する。実のところ、筆者もその同志だ。どれほど下手かというと、線がまっすぐ引けず蛇行する、線幅が一定にならない、引き終わりが想定位置から常にズレる、使う度にインクが指につく……など、よくもそんなに失敗できるな? と我ながら驚くほどである。
しかし、線が不安定なのも指にインクがつくのも、基本的にはラインマーカーが抱えている構造的な欠陥と考えられないだろうか。(我ら下手クソ勢が極端に不器用とか、そういうのはひとまず置いておくとして。)
線幅が常に一定して曲がらず、引き終わり位置が分かりやすく、しかも手につくようなインクを使わない。そんなラインマーカーさえあれば、もうマーキングするのに困ることはないはずだ。
例えば、2020年に発売されたカンミ堂「フセンマーカー」は、その理想にかなり近づいた製品だと思う。インクではなく半透明のフィルム付箋テープを文字の上に貼ってマーキングするので、曲がらず線幅も変わらず、インクが手につくこともない。
ただ、細かな使い勝手の点で、やや不満を感じることもあったのだ。そこで試してみたいのが、同社から今年発売された新しい付箋タイプのマーカーである。
何が進化した? フィルム付箋テープのラインマーカー「はがせるマーカー」
2022年に発売されたカンミ堂「はがせるマーカー」は、「フセンマーカー」の不満点を解消するべく開発された、いわばフィルム付箋タイプマーカーのVer.2.0にあたるもの。実際に使ってみると、なるほど、確かにブラッシュアップが施されているのは感じられた。
カンミ堂
はがせるマーカー(全9色)
各360円(税別)
まず一目瞭然なのは、コンパクト化
まず、ひと目で分かるのがサイズの違い。「はがせるマーカー」はつまめば手にすっぽり隠れてしまうほどにコンパクトだ。
ラインマーカーは何色かを使い分けることが多いツールだが、これならペンケースに複数色をストックしていても、以前ほどかさばりを感じることはないだろう。
使い心地は? 紙を傷つけることなくプツッとカット
使用する際には、まず本体ケースをぐるりと後ろに120度ほど回転させる。最後まで回すと、カチッとクリックを感じるところでカバーが固定されて、携帯モードからライン引きモードへ変形完了だ。
あとはマーキングを始めたい場所にテープ端を指で押さえつけ、本体底面を紙に当てたまま水平に動かしてラインを引いていく。
マーキングしたい文末までラインが引けたら、テープカットだ。テープ出口付近を人差し指でふさぐようにして押さえたら、本体を軽く前転するように傾けてちょっと引く。すると、プツッと軽い手応えで内部の刃がテープを切ってくれる。
以前の「フセンマーカー」は、刃が下に降りてテープを切る構造だったため、うっかりすると刃で紙をガリッと削ってしまうことがあった。対して「はがせるマーカー」は、刃が紙に触れない位置で固定されているので、紙削りトラブルが発生しない。このカット方法の改良は、端的に「使いやすくなったな!」と感じる部分だ。
ラインマーカーらしいカラーが増えてバリエーション充実
テープ色に関しては、これまでの「ピンク」「グリーン」「グレー」「暗記用ブルー」「ストライプ柄」「スクエア柄」から、「イエロー」「オレンジ」「ライトピンク」「ライトブルー」「パープル」が追加。よりラインマーカーっぽい色が増えたことで、色を分けてのマーキングがやりやすくなった。
ちなみに、テープ自体は「フセンマーカー」と共通だが、ボディが全クリアになったことで、装備しているテープ色の視認性もアップしている。
完全にマーカーの置き換えアイテムとなれるのか?
また、本体価格が従来から100円以上安くなっているのも、大きな改良ポイントと言えそうだ。もちろん通常のインク式ラインマーカーが1本100円強で購入できることを考えれば、コスト的に優れているとは言い難いが……それでも「試しに2~3色使ってみるか」と考えやすくなったのは間違いないだろう。
しかし、総じて不満のないパーフェクトなマーカーになったか? と問われると……正直なところ、まだ使い勝手で微妙なところは残っていると感じた。なにより、ラインを引くのに必ず両手での作業が必要になるため、軽快さに欠けるのは間違いない。やはり修正テープのように片手で引けるようにならないと、根本的な解決にはならなそうだ。
とはいえ、現状ではこれが「もっとも線がまっすぐ美しく引けるマーカー」であることには、間違いないだろう。万が一に失敗しても、剥がして引き直せるし。少なくとも、ラインマーカー下手くそ勢の自覚がある人なら、導入する価値はあると思う。