ホッチキス(ステープラー)というのは、想像以上に紛失しやすい文房具である。消しゴムのように小さいわけでもなくある程度のサイズがあるのだから、そう簡単に紛失しないだろうと思いがち。実は、このサイズこそがクセモノなのだ。
机の引き出しに収めるには微妙に背が高いし、ペントレーに置いておくには邪魔な大きさ。かといって机の上に転がしておいて常に目に付くほどの存在感はない。つまり、決まった“住所”を作りづらいため、使ったあとに適当にポイと置いてしまう→次に使いたい時に見つからない→「あれ? ホッチキスどこ?」というコンボが頻発するわけだ。
ではどうすればいいか? 一つの提案として「ホッチキスをペン立てに立てちゃう」というのはどうだろう。
スティック型ホッチキスは紛失予防に効く!?
当然ながら、ペン立てのフチにホッチキスを引っかけておくだけでも充分に紛失対策にはなるが、見た目がどうもスマートさに欠ける。ならば、スティックタイプのホッチキス「モティック」がいいかもしれない。
マックス
スティックタイプホッチキス「MOTICK(モティック)」
HD-10SK
各750円(税別)
長さ約148mmで、「棒っぽい」としか言いようのないフォルム。これを外見だけでホッチキスだと見抜くのは、なかなか難しいだろう。
使用時は、丸いボタンをスライドさせると先端のカバーがガチャっと持ち上がり、中のマガジン(針を装填するボックス)がわずかにせり出す。これでホッチキスっぽい雰囲気に変形して、準備は完了だ。あとは通常どおり紙束を挟んでカバーを押し込むと、ガチャンと針で綴じることができる。
綴じた針を平らにするフラットクリンチや、二重テコで綴じ荷重を半分にする、といった近年お馴染みになっている機構は搭載していない。使用感は、まったくもって普通に「ホッチキスだな」って感じだ。
つまりポイントとなるのは“スティック型のフォルムだけ”なのだが、ここが重要なのである。
まず冒頭でも述べたとおり、住所不定になりがちなホッチキスに定住先を作りやすい、ということ。ペン立てに立てておけば、細長くはあるが筆記具とは全く違うシルエットなので、けっこう目立つ。使いたいときに素早く見つけてサッと取り出せるのは、それだけでとても便利な機能といえる。
携帯する場合も、スリムさを活かしてペンケースに入れておきやすいのがメリット。
これまでも携帯しやすいミニホッチキスはいくつか発売されているが、自立型ペンケースに入れると、底に沈んでしまって取り出しにくいというデメリットがあった。しかしスティック型なら、自立型ペンケースとの相性は抜群だ。
マガジンに収納できる針は、10号針100本までとなっている。補充する際は、後端のキャップを引き抜くと、プッシャーと呼ばれるパーツがズルズルと出てくる(長い!)ので、針を装填して、プッシャーで押し込んでキャップをはめる。
携帯性に優れたミニホッチキスならだいたいが50本装填なので、ゆとりのある100本装填はそれだけでも優位といえそうだ。
昭和末期の早すぎたホッチキスが、令和に能力をフル発揮!?
ちなみにこのスティック型ホッチキス、年季の入ったベテラン文具オタクの中には、見覚えのある人がいるかもしれない。実はこれ、1988年にマックスが発売していた「HD-10SL B&G」のリメイクなのである。(B&Gはボーイズ&ガールズの略)
カバーなど細部にはちょこちょこ違いがあるが、大まかな仕様はサイズも含めてほぼ同じ。筆者も、「モティック」を初めて展示会で見たときに「あっこれほぼHD-10SLじゃん。なつかしー」と驚いたほど。
残念ながら、「HD-10SL B&G」が発売当時にヒットしたとは聞かない。中古品は探せば見つかるので、それなりに出回っていたようではあるが。しかし、自立型ペンケースが普及した今なら、携帯用ホッチキスとしての価値はグッと高まっているはずだ。
なにより復刻の面白さやフォルムのユニークさもあって、文房具好きならマストで買っておくべきアイテムだと思う。もちろん、ホッチキスをすぐなくしちゃう人もマストバイだ。