軸を汚さずインクを吸いやすい新機構も搭載
万年筆のインク補充は、一般的に使い捨てのインクカートリッジを装着するか、コンバーターと呼ばれるインク吸入ポンプ兼タンクを装着してインク瓶からインクを吸い上げる、という2種類の方法がある。どちらか片方のみ対応という場合もあるが、ほとんどはカートリッジ/コンバーター両対応だ。
もちろん「TUZU アジャスト 万年筆」も両対応だが、本来なら別売りのはずのコンバーターが最初から付属されているのは嬉しいポイント。これはおそらく、新しいインク吸入機構をアピールしたいからなのだろう。
インクを吸入するには、「ペン先をインク瓶に浸して、コンバーター内のピストンを動かして吸い上げる」というのが一般的な流れ。ほとんどの万年筆はインクの吸入口がペン先の根元にあるため、ペン先をまるまるインクに浸けることになるが、すると必然、軸の先端(首軸)までインクで汚れてしまい、それが手にべったり付着するというのが、定番の“万年筆あるある”だ。
そこで真価を発揮するのが件の新しいインク吸入機構。なんと、ペン先中央のハート穴からインクを吸うことができるのだ。つまり首軸までドブンとインク瓶に挿し込む必要はなく、ひとまずハート穴(…に擬装したインク吸入口?)さえインクに浸っていれば吸入が可能、ということ。これなら首軸、ひいては手まで汚れる心配が無いのである。
他社ではあるが、プラチナ万年筆「プロシオン」にも同様の吸入機構が搭載されている。これもまた、万年筆の取り扱いになれていない初心者に助かるギミックと言えるだろう。
また、キャップ内部にはバネでギュッと圧をかけてペン先を密閉する内キャップ(スライド式キャップ)が備わっており、これによってインクの乾燥を抑制してくれるという。
これは同社の「プロムナード」にも搭載されていたもので、ひとまずキャップさえ閉めておけば、半年〜1年ぐらいはドライアップの心配はないはずだ。初心者はうっかり万年筆にインクをいれたまま放置→書けなくなるというコンボをキメがちなので、保険的にもこういう機構があるとありがたい。
セーラー万年筆
TUZU ボールペン ボール径0.5mm
2500円(税別)
ひとまず使ってみた印象としては、自分の握りにカスタムできるアジャスト機構と、手を汚さず吸わせやすいインク吸入機構は、端的に“万年筆を使いやすくする仕組み”としてとても優秀だと感じた。加えて、飾り気少なくサッパリとしたルックスも、万年筆を「高級だから…」などと気負わずに使うにはちょうどいい。
個人的には、ハート穴がペン先のクッションとして機能していない分だけ描線がやや硬い印象を受けたが、それも日常の筆記具としてサラサラと書くには使いやすいのかもしれない。普段使いの万年筆として、もうしばらく試してみたい。