米国ネバダ州ラスベガスで、毎年1月に開催されているIT家電見本市が「CES」です。今年も「CES 2025」として、ラスベガス市内にあるラスベガスコンベンションセンター(LVCC)を中心に、1月7日から4日間の日程で開催されました。
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本稿ではCES 2025で発見した、注目のモビリティを紹介! まずはホンダとソニー・ホンダモビリティ、トヨタの話題をお届けします。
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ホンダは次世代EV「ゼロシリーズ」の2つのモデルを2026年に発売すると発表!
さて、そのモビリティの中で注目度ナンバーワンだったのが、ホンダの次世代EV「ゼロシリーズ」の発表でした。
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発表されたのは「SALOON」と「SUV」の2台のプロトタイプです。このうちSALOONは1年前のCES2024で公開されており、ガルウイングドアが普通のヒンジドアに変更されていたものの、スーパーカーを彷彿させるデザインはそのまま踏襲されました。一方のSUVは今回初めて披露された新モデルです。未来感あふれるデザインの中に、SUVらしいスペースユーティリティを確保した新キャラクターとして登場しました。
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何よりもこの発表で驚かされたのは、この2台がこの斬新なデザインそのままに、2026年にも市販化されるということです。ホンダによれば、SUVがまずゼロシリーズの第一弾として発売され、続いてSALOONが2026年中に発売されるというスケジュール。こんなコンセプトカーのようなクルマが一般公道を走るなんて、その姿を想像するだけでワクワクしてきますよね。
このゼロシリーズで注目すべきはそれだけではありません。今後のモビリティの中核となっていく「SDV(Software Defined Vehicle) 」にもホンダ独自の技術を搭載していくと発表されたのです。SDVとは、通信によってユーザーの嗜好やニーズに合わせた進化を遂げていくことができる次世代のクルマのこと。つまり、ユーザーは車両を購入した後も、スマホのようにアップデートすることでどんどん機能アップしていけるのです。
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その役割を果たす中核に据えられたビークルOSが「ASIMO OS」です。GetNaviの読者ならASIMOと聞いてピンとくるはず。そう、ホンダがかつて開発したあの人型ロボットがASIMOです。
ホンダは、このASIMOの開発を通して外界認識技術や人の意図を汲み取って行動する自律行動制御技術を蓄積していました。さらに新開発した先進知能化技術を融合することで賢さを大幅にアップ。加えて車載ソフトウェアのアップデートを可能としました。つまり、ここにホンダが進めるSDV化構想が深く関わってくるというわけです。
そして、ホンダは2020年代後半にもこのE&Eアーキテクチャーを一括でコントロールできるセントラルECUに移行し、よりSDVに適した環境を構築していく考えです。
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ホンダが示したロードマップでは、2028年~2030年頃にゼロシリーズの3台の新型車(コンパクトSUV、スモールSUV、コンパクトセダン)が準備されています。つまり、このタイミングを見図れば、これは大衆車クラスでもSDV化が進むことを示しているのはほぼ確実でしょう。積極的にSDV化を進めるホンダの動向からは目が離せそうにありませんね。
ソニー・ホンダモビリティが放つ第一弾は、エンタメてんこ盛りの『AFEELA1』
もう一つの関心を呼んだ話題は、かねてよりその登場が注目されていたソニー・ホンダモビリティ(SHM)の「AFEELA(アフィーラ)」です。2026年にも北米からデリバリーが始まるとされる第一弾は、車名が「AFEELA 1(アフィーラ・ワン)」と名付けられました。
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販売価格も決定し、ベース車の「Origin」が8万9900ドル(1ドル=156円換算で1402万円)で、上級グレードの「Signature」が10万2900ドル(同1605万円)。
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AFEELA 1は大きく3つのポイントに分けられます。一つは運転負荷軽減などに役立つ先進運転支援システム(ADAS)と、二つめが車両側とのコミュニケーションを可能とする対話型パーソナルエージェントを搭載すること。もう一つは独自のサウンドシステム上で展開される充実したエンタテイメント性を備えていることです。
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まずADASに関してはSHM独自の「AFEELA Intelligent Drive」が機能します。ここではAFEELA 1に搭載されるSHM独自の40のセンサー(カメラ、LiDAR、レーダー、超音波センサー)が周囲をセンシングし、その収集されたデータをAIが認識、予測、行動計画を計算して運転を支援する仕組み。これにより、AFEELA 1 では自動運転レベル2+での運転支援を実現します。
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対話型パーソナルエージェント「AFEELA Personal Agent」について解説します。エージェントとの会話を楽しんだり、行動計画の提案を受けることも可能となり、それは様々なシチュエーションでリアルタイムの情報と共に最適化されて運用される機能です。もちろん、ナビゲーションの設定や、後述するエンタテイメント領域でもこの機能は活かされ、ドライバーは運転しながら最適なアドバイスが得られます。
最後にAFFELA 1の多彩なエンタテイメント機能について。ダッシュボードの左右いっぱいに広がるディスプレイ上には、ストリーミングサービスによる多彩なコンテンツが展開され、その中にはネットでつながるゲームも含まれます。しかも、ロングドライブに同乗者を飽きさせないよう、4席それぞれが別々のコンテンツを楽しめるシステムも組み込みました。それに合わせてソニーの立体音響技術(360 Spatial Sound Technologies)による没入感あふれるサウンド環境も用意されているのです。
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さらにユニークさで飛び抜けているのが、車両側でセンシングしたデータをUnreal Engineによりビジュアル化して様々なキャラクターを重ね合わせて楽しめること。こうした環境を車内で楽しめることこそ、AFEELA 1ならではの楽しみ方なのかもしれません。
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静岡県裾野市に建設中の実証都市「ウーブン・シティ」
トヨタは静岡県裾野市に建設中の近未来のモビリティ都市「Toyota Woven City」(ウーブン・シティ)について、プレスカンファレンスで発表しました。これは2020年1月のCESで同プロジェクトを発表したもので、2021年2月の地鎮祭以降、造成工事、建築工事を進めてきたところです。
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今回は特に展示を行わず、その進捗状況を報告するプレスカンファレンスだけでしたが、豊田章男会長が5年ぶりに自ら登壇し、ジョークを交えた和やかな雰囲気での発表を行いました。それによると、2024年10月末に第1期工事が完了し、いよいよ今年の秋以降にオフィシャルローンチされるということです。
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ウーブン・シティは未来のモビリティに関心を持つイノベーターが「モビリティの拡張」を目指し、自らプロダクトやサービスを生み出す実験場ともなる場所。豊田章男会長はCES2025において、ここを「モビリティのテストコース」と表現し、これまで抱えてきた課題解決に向けた様々な方法を開発する場としても紹介しました。
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シティ内のモビリティはもちろんゼロエミッション。これまでにENEOS、日本電信電話(NTT)、リンナイが参加していましたが、新たにダイキン工業、ダイドードリンコ、日清食品、UCCジャパン、増進会ホールディングスがイノベーターズとして参加を表明しています。シティの定住人口は第1期工事エリアで360名程度を想定し、最終的には全体で2000名程度を予定しているとのことです。
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豊田氏はプレスカンファレンスにおいて、「この街作りにかかっている費用は大きな問題ではない。なぜならトヨタはグローバル市民として社会全体に対する責任があり、我々の発明は“かけ算”によって(その結果が)生み出されると考えている。ウーブン・シティはそんなコラボレーションの核となる場所。未来は人によってだけでなく心によって動く。この話に共感を持つ人はぜひウーブン・シティに来てほしい」と呼びかけました。トヨタが進める未来都市「ウーブン・シティ」はどんな姿を見せてくれるのか、今後の展開が大いに楽しみです。
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