前回の入門編では、編成写真をきれいに撮るための場所決めのポイントを上げた。今回の応用編では、鉄道写真ならではの独自の技術を加味しながら、撮って快感が残る、そして“成功率”を高める撮影術にチャレンジしていきたい。
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【導入】鉄道撮影に向いたカメラとレンズを考える
筆者はデジタル一眼レフとミラーレスカメラを1台ずつ所有しているが、鉄道撮影にはデジタル一眼レフのほうが向いている。ミラーレスも最近は技術が向上しているが、ミラーレス特有の“クセ”があり、クセを知った上で撮影しないと失敗に繋がってしまう。
いまのカメラはどの機材でもある程度の技術レベルをクリアしているので、カメラだけで写真の善し悪しは極端に出にくい。むしろ鉄道撮影の場合は車両速度が速いので、連写速度(連続撮影速度)に注目したい。経験上、やはり6コマ/秒は欲しいところ。高速で走る新幹線の撮影ならば10コマ/秒以上だと安心できる。
【撮影テク1】フレームいっぱいに列車を入れる
撮影現場では、カメラの性能、扱い方を知った上で、カメラを使いこなした“絵づくり”が大切になる。まずは、下記2枚の写真を見比べてもらいたい。2枚とも同じ場所から撮った写真で、1枚目は貨物列車が直線区間を走る状態を撮ったもの。2枚目は直線よりも手前の緩いカーブを曲がりかけたところだ。
<失敗例>
<成功例>
1枚目は橋の巨大な欄干がアクセントになっているものの、橋がなければ左右の余白がもっと目立ってしまっていただろう。むしろタテ位置にして撮った方が、迫力が出るだろう。一方の2枚目は、写真のフレームいっぱいに広げての絵づくりができている。貨物用機関車らしい力感とスピード感が生まれた。
【撮影テク2】S字カーブと直線左向きを使い分けよう
S字カーブは撮影場所としては特に「おいしい」。左に右に車体を傾けながら走る姿は、S字ならではの撮影が可能だ。やや上目から撮れる場所であれば、うねる列車の様子がさらにダイナミックさが伝わり、その面白さが加味される。
前回も紹介したが、編成写真を狙う際の基本となるのは直線区間だ。ただ、複線区間では2本ある線路の向こう側の列車を狙うことが多く、先頭が右を向く写真が中心になりがち。左向きの写真を撮るなら、同じ場所で逆側を向いて手前の路線を走る列車を狙えば良い。
だが、通常の複線区間では列車と撮影者との間に距離を取れないため、先頭車がフレームの真ん中にきてしまう。直線で左向きの理想的な写真を撮るためには、線路からやや離れて立てる撮影場所で狙いたい。手前に引込線があるスペースを利用するなど、離れて立つことができれば直線区間でもフレームいっぱいを使った左向き写真が撮れる。
【撮影テク3】「置きピン」と「AF追従機能」を使い分けよう
レンズのピント合せはどのような方法が良いのだろうか。これは10人のプロカメラマンがいれば10人の意見がわかれるところだ。だが実際のところ、プロカメラマンはピント合わせで「置きピン」か「AF追従機能」を使っていることが多い。
「置きピン」とは、撮影する前にピントを合わせておくこと。被写体となる車両が走る前方側の線路にピントを合わせておくのだ。この撮影の場合は、新幹線などの速い列車や風景写真、白い車体の列車を狙う場合に高い効果がある。三脚で固定すれば、さらに精度も高まる。
対する「AF追従機能」だが、最近のデジタル一眼カメラはAF(オートフォーカス)機能が向上している。なかでも、AF追従機能は動く被写体にピントを追従させることができる便利な機能だ(Canonのデジタル一眼カメラであれば、「AIサーボ」という機能にあたる)。
測距エリア選択モードにはいくつかあり、筆者の場合「領域拡大AF(任意選択)」という選択モードを選んでいる。ちょうど下記の写真のように、フレーム内の設定した場所に測距エリアを置くことができもので、鉄道撮影の場合は先頭車が通ると思われる位置を指示しておけば良い。
あるプロカメラマンは、測距エリア選択モードは「1点AF(任意選択)」を指定していると話す。この選択は、それこそ慣れと経験で選べば良いかと思う。「AF追従機能」は、非常に精度が高まってはいるが100%ではない。鉄道車両の前照灯や白部分が多い車体、またフロントガラスなどの部分の情報をカメラが拾ってしまうと、ピントが合わなくなることもある。自分の経験でいえば、車両の下部に測距エリアを置いておくほうがより安全のように思う。
次回は、さらに応用力が必要な撮影スキルをご紹介。1両単行列車の絵づくりや急増しているLED表示の撮影方法を解説していこう。