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2017/5/2 16:00

ゴールデンウィークに使える鉄道撮影術【入門編】ーー理想の編成写真を撮るには「場所決め」が重要!

デジカメの普及で鉄道撮影を楽しむファンが増えている。ゴールデンウィークに突入していることもあり、連休中に鉄道を利用する機会も多いことだろう。そこで本稿では、これから趣味として鉄道写真を始めたいと考えている人や技術の向上を目指す人に向けた、「編成写真」の撮り方について紹介していこう。

 

編成写真をカッコ良く撮るためには、ずばり「場所決め」が大切。なかでも基本となる「直線」、あるいは「アウトカーブ」や「インカーブ」での編成写真の撮り方を中心に話を進めていく。なお、長年の間、筆者は雑誌編集者を勤め、一線級のプロカメラマンに同行して取材撮影を重ねてきた。当初、写真はカメラマンに任せっきりだったが、もともとカメラ好き、そして鉄道好きが高じて自分でも撮るようになった。技術的にわからないことがあると、同行のカメラマンに尋ねるようにしていた。そんな背景から得た撮影術を整理しつつ紹介していきたい。

↑カメラマンが写真を撮る際には、車両はどこならば絵になりカッコ良く撮れるのか、多くの情報に接しつつ理想の撮影場所を探す。立ち位置が少し違うだけでも写真の印象がガラッと変わってしまうため、撮影場所に到着しても、すぐにポイントを決めてカメラを構えるカメラマンは少ない
↑カメラマンが写真を撮る際には、車両はどこならば絵になりカッコ良く撮れるのか、多くの情報に接しつつ理想の撮影場所を探す。立ち位置が少し違うだけでも写真の印象がガラッと変わってしまうため、撮影場所に到着しても、すぐにポイントを決めてカメラを構えるカメラマンは少ない

 

まずは直線で編成写真にチャレンジ!

<直線で撮影する際のポイント>

●シャッター速度:1000分の1〜2000分の1を推奨。直線路は列車も加速しがちのため、速めのシャッター速度でシャッターを切る撮り方が基本となる

●レンズ:標準レンズから中望遠レンズぐらいが理想(フルサイズ換算で50mmから120mm程度)

 

まずは「直線」で整った編成写真を撮ってみよう。とはいえ、都市部では撮影できる直線が少なめ。侵入を防ぐ高いフェンスがあったり、線路沿いに家が建ち並んだりと、おのずと撮る場所が限られてくる。直線区間で撮ろうとすれば、まずは最低でもフェンスが低くなる郊外に足を伸ばした方が良いだろう。ここでは、直線区間で撮った3つの例を見ていこう。

 

直線では左から右に走る列車を撮るのが基本

↑室蘭本線・静狩〜長万部間を走行する貨物列車。北海道を走る貨物列車を直線で狙った。邪魔になるものが皆無な場所となると、北海道まで行かないとなかなかお目にかかれない

 

1枚目は北海道・室蘭本線の草原地帯、線路沿いの小さな道から撮影した例だ。直線での撮影は、複線区間の外側の線路を左から右側に走る列車を撮るのが基本となる。

 

この撮影地のように非電化区間で架線柱がなく、背後に建物も入らない。写るのは緑だけという直線区間は、撮影地として理想といっていいだろう。とはいえ、こうした光景が広がるのは、広大な北海道ならでは。本州以南の都市部では、こうした直線区間は貴重になりつつある。都市部の線路では、電車を走らせるため架線柱が立つ上に、線路沿いに住宅が並ぶ。こうした障害物が目立たない撮影場所となると、非常に少ない。

 

架線柱の立つ距離が離れている場所を狙う

↑西武新宿線・久米川〜小平間を走行する20000系。郊外に足を運べばフェンスなどの障害物が気にならない場所もある。公園などの緑を背景にした撮影場所があれば理想的だ

 

2枚目の写真は西武新宿線の作例。線路沿いの細い道からの撮影したもの。直線では架線柱同士の立つ距離が離れている。そのため架線柱の間から写したところ、10両編成の後ろまできれいな編成写真を納めることができた。背景に公園(この写真では小平霊園)などの緑が入る場所ならば、さらに理想的な編成写真を撮ることができるだろう。

 

直線区間は、編成写真をきれいに撮るのにはうってつけ。とはいえ、写真を納めるのには良いが、味わいや面白みという面では物足りないと感じることもある。そんなときは、橋梁などが写り込むポイントで撮るのも良いだろう。

 

ガーダー橋を絡めて直線写真に変化をつける

↑直線部の写真は単調になりがち。橋を絡めて撮っても面白い(高崎線・岡部〜本庄間)
↑JR高崎線・岡部〜本庄間を走行する貨物列車。直線部の写真は単調になりがちなため、橋を絡めて撮っても面白い

 

3枚目の作例は、高崎線の下り線路を走る貨物列車。身馴川(みなれがわ)の土手で構えれば橋梁にかけて上り坂をあがり、ガーダー橋を渡る姿が捉えられる。欄干(らんかん)、架線柱などの障害物が列車の手間に入らず、また直線区間としては貴重な左向きの編成写真が撮れる人気スポットだ。

 

長い編成の撮影に最適な「アウトカーブ」

<アウトカーブで撮影する際のポイント>

●シャッター速度:直線路にくらべて遅いシャッター速度で対応可能。「LEDの案内表示」をきれいに撮るとき(次回で紹介予定)は、アウトカーブがオススメ

●レンズ:中望遠〜望遠レンズぐらいが好ましい(フルサイズ換算で70mmから200mm程度)

 

鉄道写真では、カーブする線路の外側に立って撮った写真が多く見られる。それがアウトカーブでの写真だ。お立ち台と呼ばれる人気の撮影スポットには、こうしたアウトカーブで狙う場所が多い。

 

先頭車がカメラに向かって正面になった状態で撮影する

↑神戸電鉄・湊川公園〜長田間を走行する6000系。先頭車が撮影者と対峙する時の状態が「アウトカーブ0角度」とも呼ばれる“黄金の角度”でもある

 

アウトカーブで撮った写真のうち、先頭車がちょうどカメラを構えた人に向かって正面になった状態を「アウトカーブ0角度」と呼ぶ。アウトカーブで撮った写真のまさに“定番”ともいえる角度だ。とはいえ、アウトカーブで撮れば何でも良いのかというわけでもない。以下、作例をもとに紹介しよう。

 

【1枚目】アウトカーブ0角度で撮影した神戸電鉄6500系

↑上記の神戸電鉄6000系は4両ということもあり絵になったが、この写真の6500系は3両編成と1両短くどうも絵になりにくかった
↑神戸電鉄6000系は4両ということもあり絵になったが、この写真の6500系は3両編成と1両短く、どうも絵になりにくかった

 

【2枚目】アウトカーブ0角度になる前の神戸電鉄6500系

↑上の写真の6500系の数枚前のカット。アウトカーブ0角度の写真もありだが、短い編成の場合、カーブを曲がりかけた写真の方が面白いかも知れない
↑1枚目の写真の数枚前のカット。アウトカーブ0角度の写真もありだが、短い編成の場合はカーブを曲がりかけた写真の方が面白いかも知れない

 

上記はアウトカーブで撮った写真で、4両編成の神戸電鉄6000系と3両編成の神戸電鉄6500系を同じカーブで撮り比べたもの(立ち位置はほぼ同じ)。4両編成ならば絵になるアウトカーブも、3両編成となると後ろ1両のスペースが開いてしまい、それこそ「間の抜けた写真」になってしまった。短い編成の場合、カーブを曲がりかけた写真の方が面白く感じられた。アウトカーブは長い編成向きの撮影地といっていいだろう。

 

楽しく迫力あるシーンが撮影可能な「インカーブ」

<インカーブで撮影する際のポイント>

●シャッター速度:1250分の1〜2000分の1といった、速いシャッター速度でシャッターを切りたい。さらにインカーブは予想以上に列車のスピードが速く感じられ、シャッターの切るタイミングが難しい。列車本数が多い場所では、事前にタイミングを測りつつシャッターを切るテストしておいた方が良い

●レンズ:広角〜標準レンズぐらいが好ましい(フルサイズ換算で28mmから50mm程度)

 

一方で、曲がるカーブの内側に立って撮るのがインカーブの写真。このインカーブで編成の後ろまで撮ろうとすると、まずは田畑が広がる立地など、障害物のない開けた場所での撮影が必要となる。ここでも、作例をもとに撮影方法を紹介していこう。

 

地面にうつぶせになって見上げるように撮る

↑総武本線・佐倉〜物井間を走行するE259系。レンズの位置を地面近くにして見上げて撮影したもの。迫力と、スピード感が感じられるのがインカーブの写真の面白さだ

 

1枚目は総武本線の“モノサク”と呼ばれる人気のお立ち台、佐倉〜物井間のインカーブで撮った作例だ。インカーブの場合、立ったままのレンズ位置だけでなく、あえて草の上にうつぶせになって見上げるように撮るなどの工夫が楽しめる。撮った写真は、ダイナミック。広角気味のレンズで撮れば、架線柱もそれほど気にならない。

 

ただし、インカーブの撮影は線路端に生える草が目立ちがち。列車が通る前に、気になる雑草は刈っておくなどの配慮は必要だろう。線路端の草が伸び切った季節だと、この角度からの撮影が難しくなるので気をつけたい。

 

低いアングルから撮影して天気の良さを強調する

↑中央本線・落合川〜坂下間を走行する貨物列車。インカーブに加えて、低いアングルから撮影した写真では空スペースが強調される。青空が美しい時向けのアングルでもある

 

広角レンズを使って撮ったインカーブの写真では、車両が占めるスペースが先頭部分にくらべて、後ろの車両がかなり小さくなる。空のスペースが目立つアングルになりがちなのだ。よって、天気の良い日向けのアングルとい言えるだろう。空の青さが目立つときなど、ぜひ青空を強調したインカーブの写真を撮影したい。

 

ゴミ、駐車、地元の方への配慮……「撮影マナー」を考えよう

東海地方の有名撮影地でのこと。国道沿いにあるその撮影地はゴミが散乱し、まるでゴミ捨て場で撮影しているようで後味が悪かったという経験がある。もちろん、鉄道撮影で訪れた人たちだけの所為ではないのだが、撮影で訪れたときに生じたゴミは必ず持ち帰るようにしたい。

 

一方で、すがすがしい気持ちになったこともある。ある鉄道ファンがゴミ袋を持ってきて、ほかの人が捨てたと思われる撮影場所付近のゴミをすべて拾って持ち帰っていったのである。地元の人たちに目の敵にされることすらある“撮り鉄”だが、こうした小さな行為の積み重ねが“撮り鉄”のイメージアップにつがなるのではと感じた。

※写真はイメージです
※写真はイメージです

 

さらに車で行くときは、撮影地に横付けするようなことは避け、やや遠くとも駐車可能な場所に停めて歩くなどの余裕は持ちたい。もちろん、私有地に入っての撮影はご法度。道や踏切で撮影する場合は、地元の人たちや通行人、車への配慮も欠かさないようにしたい。もちろん、走る列車には十分に注意。鉄道敷地内にあたる犬走りと呼ばれる保線用の道や、線路のバラストには三脚の足などを入れないようにしたい。

 

次回の鉄道撮影術(応用編)ではピントの問題、オートフォーカスを生かした利用法、フレーミングや三脚利用などにも触れていく。本編とあわせて、ぜひ鉄道写真の撮影に役立ててほしい。