ロードバイクのメンテナンスの基礎知識を伝授するコーナー。今回は、「カセットスプロケットの交換(シマノ)」のやり方についてレクチャーしていきます。ギヤチェンジは、高速での長距離移動には欠かせません。そのスムーズな働きに大きく貢献しているのが、カセットスプロケットです。自分の走りに応じてギヤの歯数を変えることもできます。
【使用する工具】
モンキーレンチ
ロックリング回し
スプロケット回し
【クイックリリースを外す】
カセットスプロケットの取り外し、取り付けはメンテナンス時に限って行うことではない。走るコースによって別のスプロケットセットが必要となるシーンも少なくないのだ。この手順はロードライダーならぜひ覚えておきたい。
取り外しは後輪のクイックリリースを緩め、シャフトを抜き取るところから始まる。このときやってしまいがちな失敗が、シャフトに付いているタケノコバネの紛失だ。小さいものなので十分に注意しておこう。
1.まず、クイックリリースを緩め、シャフトを抜き取る。タケノコバネをなくさないように注意。
【ロックリング回しを装着】
次にロックリング回しをスプロケットのロックリングの溝に合わせて取り付ける。
2.シマノ専用のロックリング回しをカセットの溝に合わせて取り付ける。
【スプロケット回しを装着】
そして次にローギヤにスプロケット回しを取り付ける。
3.ローギヤにスプロケット回しを取り付けて固定。必ずローギヤに取り付けること。
【ロックリングを外す】
双方のセットが完了したらロックリング回しにモンキーレンチをかけ反時計回りに回し、ロックリングを緩める。このとき、フリーハブが回転しないよう、スプロケット回しで押さえておく。この作業はスプロケットを外側に向けた状態でホイールを両足の前に出し、身体を屈伸して抱え込むようにして行う。右手にロックリングを緩めるモンキーレンチ、左手にはフリーハブを固定するスプロケット回しを持つ。力を加えるのは双方とも下方向だ。
この作業を正面から時計に見立てると、モンキーレンチが時計の10時の方向を指し、 スプロケット回しの取っ手2時の方向を指している。つまり〝10時10分〞の格好だ。これをイメージして作業にかかってほしい。
スプロケットは丸ごと取り外すのだが、ちょっとした衝撃でバラバラになってしまうのでワッシャーやスペーサーなどの小さい部品を紛失しないよう気をつけよう。再使用する場合は油やグリスの汚れをディグリーザーなどできれいに洗浄する。
4.ロックリング回しにモンキーレンチをセットして、下方向に力を加える。このときモンキーレンチはレンチ幅を調整する可動部を下にすること。力が入りやすく、ネジ山に負担がかからない。
5.何度か緩めるだけで、ロックリングは簡単に外れる。
【カセットを外す】
6.ロックリングが緩んだら、カセットを丸ごと外す。
7.スプロケットを分解するとこのようになる。最後に付いているワッシャーをなくさないように注意。
【グリスアップする】
新しいカセットスプロケットの取り付け前には、フリーハブの古いグリスや汚れを取り除き、新しいグリスをたっぷりと塗り付ける。
8.フリーハブにグリスをしっかり塗る。少し多いと思うぐらいでちょうどいい。
【スペーサーを入れる】
9.最初に忘れないようにスペーサーを取り付ける。
【カセットを装着する】
フリーハブにスプロケットを取り付ける手順は、歯数の多いほうから。つまり直径の大きい順に入れていく。フリーハブに溝が付いているので、その溝にはめ込めば簡単に挿入できる。ただし、各メーカーによりスプロケットやフリーハブなどのパーツ規格が異なるので、事前にチェックしておくようにする。スプロケットはメーカーや品番などによって2段、3段のセットとなっていることもある。そのため、一枚一枚挿入するとは限らない。またギヤの歯と歯の間にスペーサーを入れる場合もある。それぞれの説明書に従って作業を行うようにしよう。
10.続けて、溝に合わせて一枚ずつスプロケットを取り付けていく。
11.順番を間違えないようにスプロケットをはめていく。
12.最後まで慎重に順番を間違えないように取り付ける。
【ロックリングをグリスアップ】
スプロケットをセットしたらロックリングにグリスを塗り込み、スプロケットに差し込んで手で仮留めする。
13.ロックリングにグリスを塗る。ここでは少なめでかまわない。
【ロックリングを装着する】
ロックリング回しでロックリングを押さえ、モンキーレンチを時計回りに回転させて締め付ける。スプロケットの締め付けの適正トルクは 40 Nm (ニュートンメートル)程度だ。
14.向きに注意をして、ロックリングをはめる。
15.適性トルクはロックリングに表示されている。この場合は、40 Nm、約4㎏が適正ということになる。
【固定する】
組み付けが終わったら、ホイールをはめ、車体をメンテナンススタンドに立ててホイールを回転。スプロケットにガタつきや異音などがないかをチェックする。さらにチェーンを装着し、ギヤチェンジの作動をチェックする。
16.最後まではめ込んだら、ロックリング回しを装着し、モンキーレンチで締める。このときスプロケット回しは必要ない。
【こちらもチェック】
10速と11速でホイールは互換しない
ロードバイクの上位機種では、すでにドライブトレインの11速が標準化している。では、従来の9速および10速から11速化を試みた場合、ホイールはそのまま使用できるのだろうか? 答えはノー。下の写真からもわかるように、フリーボディの幅自体が10速用と11速用では異っているため、ホイールの使い回しは不可能。ただし、11速用のホイールにスペーサーを積んで10速用として使用することは可能だ。また、メーカーによっては10速でも、フリーボディ11速に替えることにより互換する。