日産の小型商用車はLCV(ライト・コマーシャル・ヴィークル)と呼ばれ、日産自動車の総販売台数の20%を占める大きな稼ぎ頭。すなわち、日産車の5台に1台は小型商用車です。この比率は年を追うごとに増加傾向にあり、2013年度は16%、2014年度は18%、そして2015年度は20%とここ数年でシェアを大きく伸ばしています。日産全体の車種別販売を観察すると、ノート、デイズ、デイス ルークスがトップ3を占めますが、クリッパー、キャラバン、ADバンなどの小型商用車が6~8位に食い込む健闘を見せていることは、あまり知られていません。
↑日産のはたらくクルマの代表格、NV200タクシー。NY市で採用されるなどグローバルで活躍しています。
そこで今回は日産の“はたらくクルマ”に注目。小型商用車に加え、トラックやピックアップを集めた試乗会から、主に「はたらくEVモデル」を掘り下げます。
はたらくEVの普及で静かな街が広がる!?
会場では、商用EVとして話題のe-NV200やe-NT400に試乗。後者のe-NT400は市販前の電気トラックのため、試乗できる機会はかなり貴重です。実際に乗ってみると、両者とも実力の高さに愕然……。実力の高さに加え、最近ではコンビニやデパート、サービスエリアなどに充電用の電源が設置され、インフラの整備が順調に進んでいることも、EV車の普及に大きく貢献しています。
e-NV200に試乗してみるとモーター駆動の高い静粛性に驚かされました。スターターボタンを押し、モーター始動させても無音の世界が広がり、振動を感じることもありません。アクセルを踏み込むと「スッ」と加速してくれる感覚はEVならではのもの。トルクの立ち上がりが良く、ガソリン車に比べて扱いやすいのも大きな魅力だといえるでしょう。
アトラスをベースにしたEVトラック・e-NT400も同様で、トラックとは思えない静粛性の高さは快適そのもの。開発の方にお話をお伺いしたところ、「世田谷などの閑静な住宅街には騒音に敏感な方が多くお住まいです。EV車ならではの静粛性は資源回収車として大活躍。特に早朝や深夜の時間帯で大きなメリットを生かすことができると考えています」と語ってくれました。連続巡行距離に関しては、まだ化石燃料のクルマには及びませんが、決まったルート(距離)を回る資源回収車や配達に使用される商用車であれば、EV車の恩恵は大きなものになることは間違いなさそうです。
また最近、過疎地でガソリンスタンドが続々と廃業し、遠方まで給油をしに行かなければならない農家の方も少なくないと聞きます。今後、EV車が普及すれば、自宅で電気を充電することができるメリットを生かし、農村部や山間部、過疎地での利便性が大きく向上することが期待できます。e-NV200は「はたらくEV」ですが、一般ユーザーでも使えるグレードラインナップになっているので、過疎地の未来を「EV」が支えてくれるかもしれません。
残念ながらピックアップの日本導入予定はなし
今回会場では、NV350、キャラバン、エルグランドを使用した架装モデルも展示。救急車や福祉車両、送迎バスに加え、キャンピングカーやトランスポーターなど、特化したニーズを満たすクルマが数多く展示されていました。
個人的に注目したのが、特設試乗コースに用意された、北米向けに生産される「タイタン」と、東南アジアで人気の高い「NP300ナバラ」。両車とも日本では認知度の低いピックアップですが、はたらくクルマとしての実力とともに、アウトトドアや趣味を支える相棒としての魅力を実感しました。残念なことに、今回の2モデルは海外販売モデルであり、日本国内への導入は無いとのこと……残念。
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